『ないものねだり』とはよく言ったもの。
特に日本人は、今いる状態に「幸せ」を感じるのが苦手なのかもしれない。だからこそうまれた言葉が「ないものねだり」。まぁその気持ちは、よくわかるけどね。
自分が持っていない物や環境を羨ましく思う事は、持っていない故よね。でも、あまりにも「ないものねだりの羨ましい」を毎日繰り返していると、今自分が持っている物さえも失っちゃうかもよ?
今回は、そんな話。
私が以前働いていた職場には「いーなー」が口癖の女の先輩がいたの。
見た目は華奢で色が白い。そして男が放っておけなさそうな雰囲気を自然と出す女性。昼食後は、職場が入っているビル内のカフェでみんなでコーヒーを飲むのが日課だったの。コーヒーが大好きな私にとっては至福の時とも言えるはずのその時間は、彼女の「いーなー」が決まって飛び出す時間でもあったのよね。
彼女を一言で言うなら「自分が一番、可哀想じゃないと気が済まない女」って所かしら。
例えば、事実とは全く関係なく、誰がみても彼女より、ふくよかな後輩に対して「いーなー○○ちゃん、足細くって」と言いのける。
実家暮らしで水熱光費、携帯費用さえも親に払ってもらっている、その彼女が一人暮らしの私たちに対して「いーなー。りかたち、お金そんなに使って。しかもそんなに自由で」となぜか悲観……。
彼女に彼氏が出来た時も「うちの彼氏なんて薄給すぎて。ほんと、私かわいそう」と言いはなっていた。
-------ここまでくると、やばい奴よね。
・他の誰が見ても彼女の環境は恵まれているのに、自分が一番可哀想だと信じて疑わない彼女。
・少しでも自分よりも可哀想な人がいると、その可哀想を必死で奪いにいく彼女。
言葉にすると様子がかなりおかしいけど、意外や意外、世の中にはこういう女が結構いるのよね。しかもあろうことか、そういう女は男にモテる。
大抵の男は、不幸オーラに弱い。(マジ)
でもね、そんな彼女に鉄槌が下る時がやってきたの。
2年前のある日、いつも通りに出勤した私たちが聞いたのは「3ヶ月後に、会社はなくなります」という言葉。小さな会社だったんだけど、会社の存続をかけた大きなコンペで負けてしまったの。
そこから私たちは、想定外の転職活動をスタート。みんな同じスタートラインで、中には彼女よりも年上の40代の先輩もいた。でもね、彼女をのぞく他全員は希望の会社に内定をもらえたの。
例の彼女は仕事も一番できなかったんだけど、よく聞くと、なぜか年収を今よりも100万ほどアップした所ばかりを狙っていたそうよ。もちろん全落ち。その後、希望条件をかなり下げても全落ち。
結局、彼女だけ会社がなくなるその日まで内定をもらえることができなかったの。その上、薄給薄給とバカにしていた彼氏からは見放され、実家も家の都合でどうやら出なくちゃいけなくなったみたいなの。まさに泣きっ面に蜂。
自分がいかに幸せだったかを、失くして初めて気づいたんじゃないかしら。会社がなくなるその日「なんで私だけこんな目に遭うのよ」って、ひとり言のように言ってたけどね。
全てを誰かのせいにして「いーないーなー」っていうのは楽。すごく楽よね。彼女の場合はちょっとよくわかんないけど、自分が持っていないものを持っている人は、どうしても輝いて見えるからね。
でも私、思うのよね。
あなたの日々も、きっと誰かの「羨ましい」日々だと思うの。
私は、結婚して離婚もせずに夫婦が仲良くて、子供がいる友達を見ると「あぁ〜〜いいな、素敵だな」って憧れる。今自分には「ないもの」だってわかっているからね。
でも相手は相手で、私のように好きな仕事をして、休日は好きな時間に寝て起きて。自分で稼いだお金を自分の為に使うっていう暮らしに死ぬほど憧れると言うの。
自分の暮らしの「幸せ」を理解した上での「羨ましい」なら闇はない。でも、自分が持っている「幸せ」を見ようとせずに「羨ましい」ばかり言っていたら、いつか全てをなくすわよ。
彼女の場合はちょっと特例だけど、彼女みたいになる前に、自分が持ってる「幸せ」を、もう少しだけ受け入れてみてもいいんじゃない?





