うちの会社にはね、ずば抜けて仕事が出来る男が一人だけいるの。その人は、私の先輩なんだけど、頭の回転がよすぎるのよね。数字に強い、社外の人間関係に強い、仕事が早い。でも、クライアントと飲んだ次の日は必ず休む。常に体調不良(笑)

 

私、最初はその人のこと、そういうだらしない点が目に行ってあまり好きになれなかったの。でも一緒に仕事をしていけばしていくほど、「あーーーーー。この人、やっぱデキるわ」って思う機会が増えたり助けられることもあったりして、今じゃ仕事においては尊敬の域。あ、恋愛感情は皆無ね、皆無。(上からでごめん)

 

そんな先輩と会社の代表と私とで、海外出張に行った時のこと。朝から夜までみっちり仕事で、束の間の時間といったら宿泊先でのcafeタイム。そこで、その先輩と話していたら、普段は絶対口にはしないであろうことを、その人がいきなり話し始めたの。海外の開放的な雰囲気が彼をそうしたのかはわからないけど、内心ウキウキしながら聞く私。

 

先輩「なぁ、お前ってさ、忘れられない人っている?」

 

りか「……。そんなことを聞くということは、先輩にはそういう人がいる、と」

 

先輩「鋭いね~。しかも俺の質問に答えてねーじゃん。まぁいいけど。なんか、思い出しちゃってさ。 俺いつもね、旅行や出張で遠出する時に一番最後に会いたいやつを想像する癖があるんだけど、ずっとずっと、変わらないんだよ、浮かんでくる顔が」

 

りか「なんですか!? そのきゅんきゅんしそうな話。聞かせてください(笑)」

 

普段仕事でキレッキレの男が、まさかそんな切ない恋愛をしていたとは、ね……。

彼は現在34歳。忘れられない相手というのは、10年前に付き合っていた女性なんだそう。その子は同じ地元で、彼の7つ年下。ってことは、24歳と17歳の頃に付き合ってたってことよね。

 

……あぁ若い。2人は3~4年付き合ったあと、本当にくだらない理由で別れを迎えてしまったんだそう。

 

別れ話の言いだしっぺは彼女の方。ケンカの売り言葉に買い言葉で、彼も「あぁいいよ別に、別れようぜ」となり、後戻りがきかなくなってしまったそうなの。でもその時、2人はある約束をしたんですって。それは、「お互いに、相手以上に本当に好きになる人を見つけられるまで一人でいよう」という約束。

 

彼はこの呪縛に縛られて、5年間を一人で過ごした。「家も近いし、またそのうちばったり出会った時にちゃんと話をしよう。その時はやり直そうって俺から言おう」そう思って、次の恋にはいかずにただ信じて待っていたの。

 

だけど、5年という月日はあまりに長すぎた。そしてその5年間、彼女とばったり会うことは一度もなかった。彼女との別れから6年後、「もう俺も、次に進むしかないか」とついに彼女を諦めたんですって。彼は、自分のことを好きと言ってくれる女性と付き合い始めたの。

 

「今更あいつだって俺のことなんか待ってるわけないか。つーかもう結婚してるんじゃね? 俺は、今付き合ってる人を大事にしよう」そう思った彼は、付き合い始めて間もなくして結婚を決めたそうなの。

 

でも、運命って残酷よね。結婚式の前夜、なんと元カノから着信が。思わず、出てしまった彼。そしたら彼女の口から出てきたのは、思いもよらない言葉だったの。

 

「すーーーーっごい久しぶりだね。元気してる? 私ね、あなたと別れてから、あなた以上に好きになる人が見つからなかった。だから、あれから誰とも付き合ってない。もう自分の気持ちに正直に生きていくことにしたんだよね。ねえ、今は、彼女とかいるの? 今もし彼女がいなかったら、今度私、あなたに会いたい」

 

一気に心が元カノへと戻ってしまった彼。でも結婚式はもう明日。もうなにもかもが、遅かった。

 

「別れ話になったとき俺が、意地を張っていなければ。今の彼女と付き合う前に、ちゃんと会いに行ってたら……」

 

でももう全てはあとの祭り。

 

そして、彼の結婚から数年経った今でも、その元カノは、一人でいるんですって。

 

まるでドラマみたいな恋愛模様に、うっかり切なくなってしまったの。なんでこんなに思い合ってる2人なのに、歯車はうまく噛みあわなかったんだろうって。人生ってほんとに、思い通りにはなかなかいかないわよね。

 

でもね、私。思うのよね。

 

「別れ話になったとき俺が、意地を張っていなければ。今の彼女と付き合う前に、ちゃんと会いに行ってたら……」

それは、あなたが言ったらダメなこと。あなたが言っちゃったら、今の奥さんはどうなるのかしら。

 

更にいえば、前の彼女だっていたたまれない。もちろん、今の奥さんが現実で、前の彼女はもはや妄想の域。手に入れられなかったからこそ、"たられば" はどうしても出てくるのが人間の性よね。

 

でも。それもこれも全部ひっくるめて、これは言ったらアウトよね。だってあなたは、他の女性と生きる道をあなた自身が決めたんだから。彼女は、他の男性と生きる道は選ばなかった。それを、結婚した方のあなたが、めそめそ言って、どうするわけ?

 

さすがに彼もそれは分かってた。私がその気持ちを言わずに黙っていると、彼は苦笑いを浮かべた。「お前の考えていることは分かるよ。俺がこんなこと言っちゃだめだよな。でも、海外にくるとなんかどうしても思い出しちゃってな、あいつのこと」

 

そんな風に言いながら、ブラックコーヒーをすする女々しい男。気持ち、分からなくはないけど、同情はもうしてあげない。

 

日本に帰ったら、奥さんを目いっぱい大切にすることね。どっちの女性の為にも、ね。

 

 

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