駅中にある、wifiと電源完備のカフェに行った時のこと。隣りの女子が、今年の夏に出会ったという一人の男子について女友達に相談していたの。最初はひそひそと小声だったんだけど、ヒートアップしたのか店内誰にでも響き渡る声で話し始めた。どうやら、その男子と、付き合うか付き合わないかの瀬戸際みたいね。でも、話の雲行きがなにやら怪しいの。
え、それって……付き合わない方いいんじゃない?
私だったら、彼女にそう言っちゃいそうな男子なわけ。彼女の話によるとね(私に話してくれてるわけじゃなけど笑)、彼との出会いは今から約1ヵ月前の、お祭りだったそう。女子4人で浴衣を着て楽しんでいたら、声をかけてきた男子グループの中にいたのが彼。
特にチャラそうでもなく、物静かににこにこ笑っているその姿になんと彼女は一目惚れ。そもそも、ものすごく顔がタイプだったそう。他の男子にはない落ち着いた空気感も相まって、彼女の方から連絡先を聞いたんですって。
彼の方もたいして嫌な素振りは見せずに、それから毎日LINEのやりとりが始まったそうなの。住んでいる互いの家がたまたま近かったこともあって、自然と夜一緒にご飯を食べに行ったり電話をするようになって、2人の距離が確実に近づいてきていた時……道でばったり、女の子と手を繋いであるく彼と鉢合わせてしまったんですって。
2人は「あ……」ってなったあと、彼女は平静を装って普通に挨拶したそうなの。で、彼も普通に「おぉ~偶然」なんか言っちゃったりして。彼女は、どぎまぎしながらその場を去ったらいしいんだけど、その時自分が犯していたものすごいミスに気づいてしまったの。
彼との毎日が楽しすぎて、最初の時に彼女がいるかどうかを聞いてなかったんですって。毎日LINEも電話もしていたから、てっきりいないと思い込んでいたけど……明らかにあれは……彼女だ。そう確信した彼女は、彼に「さっき手繋いでいた女の子って、彼女ですか?」って聞いたそうなの。でもね、帰ってきた答えは
「え? 彼女じゃないよ。普通の友達。手なんて繋いでないけど……」という目を疑うような返信。だけど、ここが女の悪い癖。いいところにばかり目を向けようとしちゃうのよね、こういう時って。彼の返信を疑いながらも、私の見間違いかな? とその場は終わらせたんですって。
でもまさかの、ここからが修羅場。彼とLINEしたあとに、知らない番号から着信が。何気なく彼女が出てみると、金切声の女の声が。よくよく聞いてみると「あんた、彼のなんなの? 私と付き合ってるんだけど、あなた浮気相手なんですか?」と言っている様子。
どうやら彼は嘘をついていたみたいね。電話越しで、彼は「違うって! 浮気未遂!!! なんもしてない! まじで!」って言っているのがまる聞こえ(苦笑)
なんとなく冷めた彼女は、事情を説明して電話越しの女性に謝って電話を切ったそうなの。いきなり現実に引き戻された彼女は「あ~~……タイプだったなぁ(笑)でも、私嘘つかれちゃってたか~。まぁ、なにもまだ始まってないし、これこそひと夏の恋、か。よし、忘れよう」と気持ちを切り替えようとした矢先。
今度は彼から電話がかかってきた。
「さっきはごめん。でも、俺、別れてきたから。○○ちゃんと付き合いたい」といきなりの告白。
いやいや、そもそも別れたもなにも、「彼女じゃない、手繋いでない」って言わなかったっけ? と思いつつ、それ以上に疑問に感じたことをそのまま彼に聞いてみたんですって。
「え。ていうか、失礼で申し訳ないんだけどさ、別れてきた……っていうより、フラれていません?」
彼「……ごめん。今さっきフラれた」
えええええええええええええ。
全然他人事だけど、もう話聞いてるだけで、やめた方いいでしょうその男。嘘つきまくりじゃないの。すぐ謝るからまだいい方だけど、最初からそんなんで信用できる? いくらタイプでもそれはちょっと……と勝手に隣りの席で思っていたら。話を聞いていた彼女の友達が一言。
彼女の友達「わかるそれ~!!!!!! え~でも、タイプなんでしょう? 彼フラれたんでしょう? ちょっと嘘つかれていたのはショックだけど、揺れてるんでしょう? だから今私に話してくれてるんだよね? 私に背中押して欲しかったんじゃないの~? ○○の気持ち、わかるよ~。それ、もう付き合っちゃえ~♪」
えええええええええええええ。
思わずその子の顔を見ると、もうめちゃくちゃ楽しそう。疑った見方をしてしまえば、「他人の不幸は蜜の味」な顔しまくり。共感するのも大事だけど、このまま共感しまくってると、彼女、とんでもない男と付き合うはめになるわよ。
でも私、思うのよね。
相談をしてきた子は、相談相手になにを求めていたのかしら。もしかしたら、相談相手の子が言うとおり「付き合っちゃえ」っていう後押しが欲しいから、それを言ってくれるであろう人にこのことを話したのかも。
人って大体、言って欲しいことを言ってもらえるように話をするし、求めた答えを言ってくれそうな人に相談をする。無意識にね。別にこれって間違ってないし、自分を守るための本能のようなものだと思う。
ただそれって。結局は、自分だけで決めたことにしたくないからなのよね。いざという時「あの時○○ちゃんも賛成してくれたし」っていう逃げ道を作っておきたいから。何度も言うけど、悪くはない。でも、それは自分の弱さだって分かっていた方がいいような気がする。
そして、どうにか逃げ道を作ったところで、最後の最後は自分自身の問題になるってことをお忘れなく。
彼女、どうするのかしら。
付き合っても付き合わなくても関係ないけど、この先のことを誰かのせいにしなければいいわね。それにしても、相談相手のこの子って……。と、苦笑いしながら店を出た昼下がりの午後だったの。

