今年はなかなか梅雨らしい日々が続いているわね。
思えばここ最近って、四季がない感じになっていたから、これはこれでいいのかも。
せっかくだから雨を楽しもうと思って、この前は鎌倉にある紫陽花がとてもキレイなカフェに高校時代からの女友達と行ってきたの。
その日は案の定雨。でも、雨に濡れながら咲く紫陽花はめちゃくちゃキレイだった。静かな雨の中、コーヒーの香りに包まれながら過ごす時間は本当に幸せだったわ。いつもは騒がしい私も、少し大人の気分になってその時間に浸っていたの。
そしたら。一緒にいた彼女がぽつり。
彼女「ねえりか。私まじで、ひっさしぶりに好きな人ができたんだけど……」
りか「え。すごくない? 何年ぶり?」
彼女「……5年(笑)」
りか「いやあ、どんな人よ。すごいじゃない、5年恋愛ご無沙汰な女を恋させるなんて」
彼女「私も、もうこのまま干からびるかと思ってたんだけど。まぁ出会いはもう普通に、仕事関係。取引先の人でね、顔を合わせたりプロジェクトを一緒にしていくうちにだんだんとって感じで。でさ、相手もなんか私のこといいって言ってくれてるの。でも今、付き合うかどうか、めっちゃ!! 悩んでるんだよね」
りか「なぜ? お互いに好きなんてなかなかないことだってもう分かってるでしょう? 彼、なにかあるの? ……ねぇ、まさか不倫?」
彼女「いや、違う違う。普通にシングル。人としても尊敬できるし笑いのツボも似てる。しかも彼さ、プロジェクトの打ち上げ後とか、みんな男どもがキャバクラ行く中 “俺そういうの苦手なんで”って普通に帰るの。あ、それは全然私たちがこんな風になる前ね? そんな人初めてみてさ。なんかちょっと潔癖っぽいところも好きなんだよね~」
りか「ねぇ。じゃあなんで迷ってるの?」
彼女「うーーーん。実はね、彼、1ヵ月後から2年ほど台湾に赴任しちゃうのよ。ということは、もし彼と付き合うことになったらいきなり2年間の遠距離が確定するわけ。私、今年で36歳なんだけどさ、いろいろ考えちゃって。
もし彼と結婚するとしても一番早くて2年後。でも遠距離恋愛だと彼の全てが見えるわけじゃないから、帰国してから更に数年付き合うかもしれない。……そしたら私、あっという間に40歳だよ!?」
りか「なるほど、40歳目前には、できたら結婚したいってことね」
彼女「そりゃそうよ。まぁ、もしできるならだけど(笑)りか以外にもこのこと相談したらさ、みんなは彼と遠距離で付き合いながら他の出会いも探せばいいじゃん、って言うんだけど、私それ、できないんだよなぁぁぁぁ」
りか「だよねぇ……。確かにこの年齢だと子供産むことも考えなきゃいけないしね。時間を有効に使うには、相談した人の言っていることも理解できるけどね。でも、そんな恋愛なら私も、そもそも付き合わなきゃいいじゃないって思うタイプだから、あなたの気持ちはよくわかる」
彼女「そうなの。だから、りかに聞いてみようと思って。どう思う?? 付き合ってみていいと思う?」
りか「結局のところ、好きなら付き合うことになるわよ」
彼女「え!?」
私、思うのよね。
恋愛の始まりって、頭では、いろいろと考えるわよね。
相手が、今の自分が求める理想と違った場合は特に。
利己的に、現実的に頭の中でいろいろと想定して考える。でもね、やっぱり最終的には全部取っ払って、「その人が好きかどうか」に戻ってくると思うの。
もちろん、そうじゃない女性もいる。
どっちがいいとかではないからなんとも言えないけど、まぁ物事は結局のところ、あーだこーだ言いながらシンプルにできているものだと思う。
今の彼女が求める相手の理想は、台湾赴任がなくて日本で付き合えて、あわよくばすぐにでも婚約できそうな、お互いのことを好きな相手。
でも現実はそうもいかない。でも……、彼女はもう、彼のことが好きみたい。そして彼もね。
あーだのこーだの言う前に、相手を素敵だと思って尊敬できているなら、まずは付き合ってみたらいいんじゃない? 付き合ってみないと、いいこともそうじゃないこともわからないわよ。
その時にその時で、2人でやっていけばいいのよ。
付き合ってみなくちゃ始まらない。例えそれがいきなり国と国を挟んだ遠距恋愛だとしてもね。
でもね、それ以上に素敵なのは。今、お互いが互いのことを好きだと思っているという奇跡。その奇跡を自ら手放してどうすんだって話よ。
たぶんだけど、次会った時は「りか、付き合うことにした。私頑張ってみる」って言うわよ、彼女。
そう。きっとそれでいいと思うの。