最近の私のコラムを見返すと、ちょっとマニアックなテーマが続いているなぁと感じたので、今回は気楽に読める内容にしたいと思います。
何かと難しく考えられがちなコーヒーですが、少し見方を変えて、身近なものに置き換えてみると、意外とシンプルでわかりやすいんです。
そこで今回は、コーヒー初心者にもわかりやすい例に置き換えながら、「コーヒーの基本」をおさらいしてみたいと思います。
コーヒーの種類は「お米」に置き換えてみよう!
コーヒーが小難しくなる話題のひとつに「銘柄」があります。
ブラジルやコロンビアのコーヒーは有名ですが、ホンジュラスやタンザニアなど、あまり馴染みのない名前が出てくると「あー、もうわかんない!」と拒否反応を示してしまう方、多いのではないでしょうか?
銘柄は結局のところ、「どこで作られたコーヒーか」を示しているだけです。たとえば「グアテマラ」と書いてあれば、「グアテマラ産のコーヒー豆」ということ以外の意味はありません。
しかし、これがスペシャルティコーヒーになると、もっと表記が細かくなって、
「グアテマラ ラ・クプラ農園 ブルボン」
といった具合になります。
一見難しそうですが、書いてあることはただの産地情報で、
「“グアテマラ”の“ラ・クプラ農園”で収穫された“ブルボン”という品種のコーヒー」
という意味になります。
ちょっと難しくなってきましたので、身近なものに置き換えて考えてみましょう。
コーヒーの銘柄を理解するのに適した身近な存在は「お米」です。
日本では今や、いろいろな地域でお米が収穫されています。
皆さんも好みのお米があったり、それぞれの特徴をどこかで聞いたりしたことがあるでしょう。
先ほどの「グアテマラ」とだけ書かれたコーヒーは、お米に置き換えると「日本米」という意味になります。日本の何県で作られたものかはわかりません。
一方、スペシャルティコーヒーの方は、内容的には「新潟県魚沼産コシヒカリ」とほぼ同じ。
「日本の“新潟県魚沼”という地域で収穫された、“コシヒカリ”という品種のお米」という意味です。
スペシャルティコーヒーの場合、この地域に該当する部分が農家単位となるため、農園の名前がそのまま使われます。
お米の味が収穫した場所や品種で違うように、コーヒーも収穫した国が同じでも農園が違えば味も変わってきます。
「コーヒーはいろいろ種類があるけど、要はお米と同じ」と覚えておきましょう。
保存についてもお米で覚えられる!
コーヒー豆の保存についても、お米に置き換えることができます。
焙煎する前のコーヒー豆は「生豆」と呼びますが、これはそのまま「生米」です。冷暗所に保管しておけば1年かけて使えます。
もちろん、途中でカビが生えたり虫が湧いたりした豆は使ってはいけません。
一方、焙煎後のコーヒー豆は、いわば炊いた「ご飯」です。
炊いたご飯を長持ちさせる保存方法といえば……もちろん「冷凍」ですよね。
焙煎したコーヒー豆も同様、豆のままでも挽いた粉の状態でも、冷凍して保存するのが一番なんです。
また、常温で足が早いのもご飯と同じ。
すぐに食べ切れる量のご飯をわざわざ冷凍しないように、コーヒー豆もすぐに使り切れる量なら冷凍は不要です。焙煎後2週間以内での消費を目安にするといいでしょう。
挽いたコーヒー豆は「千切りキャベツ」
コーヒー豆の保存の話が出たついでに、「豆のまま」と「挽いた粉」の話もしましょう。ここでの置き換えは「キャベツ」です。
「豆のまま」の状態は、包丁で切る前の丸いキャベツ。「挽いた粉」は、千切りキャベツだと思ってください。
こう考えるとコーヒーを粉に挽いてしまうことで、いかに早く劣化してしまうかが想像できると思います。刻んでから1週間が経った千切りキャベツなんて食べる気はしませんよね?
コーヒー豆も同じで、粉に挽くと一気に劣化が進み、味も悪くなってしまうんです。
食べる直前に必要な量だけキャベツを刻むように、コーヒー豆も豆のまま保存し、淹れる直前に必要な量だけ粉に挽くほうがおいしく淹れられるのです。
コーヒー豆は見た目では劣化がわかりづらく、多少古くなっていてもなんとなく飲めてしまうのですが、飲み比べてみるとその差は歴然です。ぜひ覚えておいてください。
コーヒーの抽出は、お茶を淹れるように。
最後はよく難しいといわれるコーヒーの抽出です。
たしかにペーパードリップは、慣れるまでは難しく感じるかもしれません。しかし、やっていることは「お茶」を淹れるのと同じなんです。
濃すぎず、薄すぎず、ちょうどいい加減で淹れられたお茶がおいしく感じるのと同じで、コーヒーも「味の濃さ」が大切。
淹れ方や器具の違いはありますが、コーヒー豆は茶葉と同じ。豆(粉)に対して、出来上がりの量をどれだけにするかで濃さを調整します。さらに抽出の時間が短ければ薄めに、長ければ濃くすることが可能です。
コーヒーはゆっくり丁寧に淹れるとおいしくなる、というイメージがありますが、これは余計に時間をかければいいということではありません。抽出が長過ぎるとエグ味が出ます。
書籍やインターネットでいろいろな淹れ方やレシピが紹介されていますが、究極的には自分が飲んで「ちょうどいい」と思える濃さに淹れられれば、それが正解なのです。
今回は、「コーヒーの基本」をわかりやすく、他のものに置き換えておさらいしてみました。
とっつきづらいのはコーヒーだけじゃありません。他の素材や料理も同様に、他のものに置き換えることでスッと頭に入ってくることもあるんです。
何かにチャレンジする時、「ちょっとわかりづらいな」と感じたら、この「置き換え」をぜひ試してみてください。意外と面白い「置き換え」はみつかるものですよ。