政府は、新型コロナウイルスの急速な感染拡大をうけ、4月7日に7都府県を対象とした緊急事態宣言を発令しました。国民の行動が制限される中で、企業や店舗経営においては今後さらに厳しい状況が長期的に続くと考えられます。
特に飲食業界のダメージは大きく、素敵なカフェやレストランも危機的状況にあるという話を耳にしています。そこで、本記事ではダメージの大きい飲食業界において、行政や公共団体が実施する補助金や助成金、融資などの支援制度を紹介します。
企業や店舗の経営状況に応じて、どのような支援が受けられるかを理解し、新型コロナウイルス対策として活用していきましょう。
企業・事業者向けの支援制度まとめ
まずは、企業または事業者向けの支援制度からご紹介していきます!緊急事態宣言が出され、支援制度の内容は今後変更になる可能性もあるのでご注意ください。
小規模店舗も対象!借入債務100%保証【セーフティネット保証】
「セーフティネット保証」とは
安定した経営が困難になった中小企業や小規模事業者に向けて信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠(最大2.8億円)で、借入債務の100%を保証する資金繰りの支援制度です。
全8号からなるセーフティネット保証制度の内、今回の新型コロナウイルス対策に関連する保証は、4号「突発的災害(自然災害等)」と5号「業況の悪化している業種」が該当。
セーフティネット保証制度4号「突発的災害(自然災害等)」の保証対象
(1)「指定地域において1年間以上継続して事業を行っていること」
(2)「売上高が前年同月比20%以上減少、かつ当月を含む3か月間の売上高が前年同期比20%以上減少すると見込まれること」
この2項目に当てはまる場合は、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で借入債務の100%が保証されます。
セーフティネット保証制度5号「業況の悪化している業種」の保証対象
「直近3ヵ月間の売上高が前年同期比5%以上減少していること」に該当する場合は、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で借入債務の80%が保証されます。
4号、5号共に、まずは取引先の金融機関、もしくは近隣の信用保証協会に連絡し、対象となるかどうかを確認してみましょう。
引用:中小企業庁「セーフティネット保証制度 中小企業信用保険法第2条第5項及び第6項 」
売上15%減で1年以内の別枠保証【危機関連保証制度】
「危機関連保証制度」とは
リーマンショックや東日本大震災のように、資金繰りの状況を示す指標が短期間で急速に低下した際に、全国の中小企業を支援するための措置として原則1年以内の別枠保証(最大2.8億円)を行う制度です。
危機関連保証(100%保証)の対象となる中小企業に必要な条件
(1)「金融取引が支障をきたしており、正常化を図るための資金調達が必要であること」
(2)「直近1ヶ月間の売上高が前年同月比で15%以上減少、または当月から2ヵ月後を含む3ヵ月間の売上高が前年同期比15%以上減少すると見込まれること」
上記に該当する場合、セーフティネット保証制度と併用することもでき、最大で5.6億円の信用保証別枠が確保されています。申請手続きの流れはセーフティネット保証制度と同様とのことなので、併せて信用保証協会に問い合わせることをおすすめします。
無利子・無担保で融資【新型コロナウイルス感染症特別貸付】
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」とは
日本政策金融公庫が中小企業や小規模事業者に対して開始した特別貸付です。融資から3年間まで金利の引き下げ(0.9%)を実施し、据置期間は最長5年としています。
無利子・無担保で融資を受けられる対象
(1)直近1ヶ月の売上高が前年比または前々年比で5%以上減少していること
(2)事業開始から3ヶ月以上1年1ヶ月未満、または店舗増加や合併、業種転換により、前年(前々年)同期と比較できない場合は、直近1ヶ月の売上高が、次のA~Cのいずれかと比較して5%以上減少していること
A.過去3ヶ月または直近1ヶ月の平均売上高
B.令和元年12月の売上高
C.令和元年10月~12月の売上高平均額
※個人事業主(フリーランス含む)は影響に対する定性的な説明でも柔軟に対応
上記のいずれかに該当することが無利子・無担保で融資を受けられる条件となります。融資の限度額は、中小企業が3億円で国民事業(個人事業主など)が6,000万円まで。ただし、資金の使い道はあくまで「運転資金」と「設備資金」になるので注意が必要です。
この他にも、商工組合中央金庫による危機対応融資や小規模事業者経営改善資金融資(マル経)、セーフティネット貸付などがあります。
引用:商工組合中央金庫「新型コロナウイルス感染症に関する特別相談窓口」
飲食・販サ業界に特化【生活衛生関係の事業者向け融資制度】
「生活衛生関係の事業」とは
飲食店営業やカフェ(喫茶店)営業、その他食品などの販売業、サービス業のことを指します。先に挙げた一般の中小企業・小規模事業者を対象にした融資に加えて、生活衛生関係の事業者向けに融資制度が設けられています。
生活衛生関係の事業者向け融資の内容
大きく分けて3つの段階に分けられています。
(1)「衛生環境激変対策特別貸付」
新型コロナの影響で、直近1ヵ月間の売上高が前年(または前々年)同期比で10%以上減少しており今後も減少が見込まれること。さらに中長期的に回復が見込まれる生活衛生関係の事業者であることが条件。振興計画に認定されている生活衛生同業組合員は基準金利を-0.9%、飲食店やカフェは別枠で1,000万円の融資が受けられます。
(2)「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」
直近1ヵ月の売上高が前年(または前々年)同期比で5%以上減少。もしくは、事業を始めて3ヶ月以上1年1ヵ月未満の場合は直近の売上高が、次のA~Cのいずれかと比較して5%以上減少している場合に、3,000万円を限度として3年間金利-0.9%が適用。
A.過去3ヶ月または直近1ヶ月の平均売上高
B.令和元年12月の売上高
C.令和元年10月~12月の売上高平均額
(3)「特別利子補給制度」
(2)の特別貸付の融資を受けた事業者を対象に、実質無利子となります。
引用:日本政策金融公庫「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」
従業員の雇用を守る【雇用調整助成金・小学校休業等対応助成金】
「雇用調整助成金」とは
さまざまな影響で経済全体に悪影響が出た際、事業活動を縮小せざるを得なくなった企業や店舗が、労働者に対して一時的に休業や教育訓練、出向などを行って雇用を維持する場合に、休業手当や給与の一部を助成する制度のこと。
この既存としてある雇用調整助成金も、新型コロナウイルス対策として特例措置が発表されました。対象となるのは、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける全業種の事業主とし、雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成金の対象に含まれる特例となっています。
雇用調整助成金の対象条件
直近1か月の販売量や売上高などの事業活動を示す指標(生産指標)が、前年同期比で5%以上減少していること。中小企業の助成率は80%で、解雇などを行わない中小企業は90%まで拡大されます。特例措置の実施期間は、令和2年4月1日から令和2年6月30日まで。
雇用調整助成金の特例措置については、今後も状況により変わる可能性もあるため詳細は随時厚生労働省のホームページをチェックしましょう。
引用:厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症について)」
「小学校休業等対応助成金」とは
新型コロナウイルス対策の影響により、幼稚園や保育所、小学校などが臨時休業するなどにより、共働き世帯などの保護者が休職するケースがあります。
それらに伴う所得の減少に対して、正規・非正規雇用に関わらず有給休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業者、また同じように業務委託を受けて個人で仕事をする方が、契約済みの仕事ができなくなってしまう場合にも支援されます。
小学校休業等対応助成金の支給額
企業や店舗などの事業者が休暇中に支払った賃金相当額×100%
※ただし支給額の日額上限は8,330円
これまで、適用期間は令和2年2月27日~3月31日までの休暇取得に対して助成していましたが、緊急事態宣言を受け、対象となる期間を令和2年4月1日~6月30日までに取得した休暇に対しても支援を行うことが予定されています。
引用:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金・支援金の延長について」
法人は最大200万円が支給される【持続化給付金】
持続化給付金とは
2020年4月8日に、経済産業省が発表したニュースリリースによると、「新型コロナウイルス感染症の拡大により、特に大きな影響を受けている法人(事業者)に対して、 事業の継続を支えると共に、再起の糧として事業全般に広く使える給付金」という説明がなされました。給付金には上限が設けられており、法人は「200万円以内」、個人事業者などは「100万円以内」となっています。
給付の対象
中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者(フリーランスを含む)、その他各種法人などで、新型コロナウイルスの影響により、売上が前年同月比で50%以上減少していること。
給付額の算出方法(法人)は下図の例を参照ください
この図のように前年4月(売上高40万円)と比べて、本年度4月の売上高が-50%(20万円)の場合、給付額は160万円となります。ちなみに前年同月比が-50%以上減少している月であれば、1月から12月の中から自由に選択できるので、よりマイナスが多い月であれば上限に近い給付が受けられるということです。
(注意)持続化給付金は令和2年度の補正予算の成立が前提であるため、今後内容が変更される可能性もあります。
引用:経済産業省「新型コロナウイルス感染症で 影響を受ける事業者の皆様へ」
企業や店舗で働く方たち向けの支援制度まとめ
続いて、働く側の方たちが受けられる支援をご紹介します。営業時間の短縮や客足の低迷に伴って、経営はもちろん雇用にも大きな影響が出ている状況です。飲食業界で働く人たちの中にも、今後の生活に不安を抱えている方は沢山いらっしゃるので、少しでも知識のプラスにしていただければと思います。
感染の疑いなどで仕事を休む際の支援【傷病手当金】
傷病手当金とは
健康保険被保険者などが、業務上の災害以外で病気やケガの療養のため仕事を休む場合に、所得保障を行う制度で、今回の新型コロナウイルスに感染したことにより、働くことができない方も対象となります。
また、新型コロナウイルス感染が陽性で自覚症状がない方、自覚症状があるため仕事を休んでいる方なども手当金の支給対象となりえるとのことです。
支給要件は次の条件を全て満たす方に支給されます。
(1)「業務災害以外の病気やケガの療養のために働くことができないこと」
(2)「4日以上仕事を休んでいること」
※療養のため連続3日間仕事を休み(待期期間)、4日目以降の休んだ日について支給
※待期期間は有給休暇、土日祝等の公休日を含む
支給額/日
まず、手当金の支給開始月を除く、直近12月間における月収(標準報酬月額)平均額の1/30相当の額を算出します。そこで求められた額の2/3に相当する額が支給されます。
少しややこしいので、計算式に当てはめてみましょう。
(直近12ヵ月の平均月収×1/30)×2/3×支給日数=傷病手当金
支給期間は支給開始日から最長1年6か月の間※傷病手当金の支給要件を満たす日のみ。
引用:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の影響を受ける働く皆さまへ 」
休業や失業による生活費支援 【緊急小口資金・総合支援資金】
新型コロナウイルス対策の影響で休業や失業を余儀なくされ、生活資金に困っている方に向けた特例貸付が「緊急小口資金」と「総合支援資金」になります。ちなみに、休業とは企業と従業員間の労働契約が継続している中で、事情により連続した休暇をとっている状態をいいます。
緊急小口資金とは
生計の維持が困難となった方に対して、緊急かつ一時的に少額の費用貸付を無利息・保証人不要で支援する制度。主に、新型コロナウイルスの影響による休業などで収入が減少した世帯が対象です。
貸付上限額は、学校などの休業や個人事業主の場合は20万円以内、その他の場合は10万円以内。措置期間1年以内で償還期限2年以内となっています。
総合支援資金とは
生計の立て直しが必要になった方に対して、必要な生活費を無利息・保証人不要で貸付する制度。ただし要件として、自立相談支援事業等による継続的な支援を受ける必要があります。主に、新型コロナウイルスの影響による収入の減少や失業で生活に困っている世帯が対象です。
貸付上限額は、2人以上のご家庭が月20万円以内、単身の方は月15万円以内で、共に貸付期間は原則3月以内。また、措置期間は1年以内、償還期限は10年以内となっています。
引用:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の影響を受ける働く皆さまへ 」
今できることに目を向けて、この危機を乗り越えましょう!
連日、感染者数が増加していくニュースに不安を抱いたり、現実を受け入れられないという方は大勢いらっしゃると思います。たった数ヶ月で世界が一変してしまったのですから無理もありません。
そんな中で、4月7日に緊急事態宣言が発令され、行政や各市区町村からの支援策も急ピッチで進められており、今後さらなる経済支援も明確になってくると思われます。生活費が困窮した世帯を対象 に30万円を給付するという緊急経済対策も閣議決定されました。
どうにもならないことは沢山ありますが、どうにかできることや今できることは少なからずあります。ぜひ、みんなで知恵とアイデアを出し合いながら、この世界的危機を乗り越えていきましょう。
出典:経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」(最終アクセス2020年4月9日)