6月から連載というかたちで行わせていただいたコラム企画も今回で最終回となりました。

 

普段なかなかお伝えしきれないことを書かせていただいたことと共に、これまでお付き合いくださった方々には改めて感謝を申し上げます。

 

今回はコーヒーの未来と私たちScrop COFFEE ROASTERSが目指す姿についてお伝えしてみたいと思います。

日本のコーヒー文化の変遷

2でもお話しさせていただきましたが、日本のコーヒー文化もこの半世紀で大きく変わりました。1st WAVEで誕生した缶コーヒーやインスタントコーヒーは、コーヒーが広く一般的に楽しまれるうえで画期的な商品だったと改めて感じます。

 

私も初めて飲んだコーヒーは、母から1口もらった砂糖、ミルクがたっぷり入ったインスタントコーヒーでした。それでも「苦い」という印象だったのですが、初めての体験として今でも記憶に残っています。

 

2nd WAVEは私のコーヒー人生でも特に印象的な時期で、海外からやって来たコーヒー文化にとてもワクワクしたのを覚えています。初めて見たラテアートに興奮したのを皆さんも共感いただけるのではないでしょうか?

 

2nd WAVE 後半から3rd WAVEにかけては、より本質的にコーヒーの価値が語られるようになりました。生産者や精製方法にスポットが当たり、同じコーヒーでも作り手や作り方によってこんなにも違いが出るのかと、コーヒーのさらなる可能性を感じさせてくれています。一方で、少し難しく感じる方もいらっしゃるかもしれません。

 

私たちコーヒー関係者の一番の仕事は、玄人の方々によりトレンドな情報や、新しい取組みから生まれるコーヒーの可能性をお伝えするとともに、これからコーヒーのファンになってくださる方々へ、コーヒーの魅力を伝えていくことだと感じています。

様々な抽出方法

国内のコーヒー文化の変遷とともに、現在多くの抽出方法も楽しむことが出来るようになりました。古き良き時代の喫茶店では、ネルドリップやサイフォンコーヒーが楽しまれ、私も昭和初期のノスタルジックな世界観はとても好きです。

 

現在最も一般的な飲まれ方は、ペーパーフィルターでのドリップコーヒーでしょうか? 私がシアトルの焙煎研修に行っていた2011年頃はちょうど日本のハンドドリップ文化がアメリカで大流行していました。ロースターたちが、HARIOChemexなどを使って、様々なメソッドで淹れてくれたのを覚えています。それまで殆ど飲まれていなかったアイスコーヒーをアメリカのカフェで見た時はとてもびっくりしました。

 

その他にも、フレンチプレスやエアロプレス、水出しコーヒーなども普及してきています。同じコーヒー豆でも、ペーパードリップとフレンチプレスでは感じられる味覚特性や質感が変わってきます。水出しコーヒーでは、浅煎りのコーヒーをゆっくりと抽出することで今までアイスコーヒーで感じたことのないフルーティーなフレーバーを楽しめます。

 

私たちも、お店や動画配信などを通して、コーヒーの楽しみ方の多様性をお伝えしていきたいと思います。

ロースターとしての仕事

20年前と比べて、国内の自家焙煎店は急激に増加したのではないでしょうか? それまでは国内の焙煎メーカーから仕入れるか、海外ブランドのコーヒーを輸入して使用するのが一般的でした。しかし、コーヒーに対して求められる需要がより品質重視になっていく中で、生豆を仕入れて自分達で焙煎をするのが今ではスタンダードになりつつあります。

 

そんなロースターの方々と同じく、私たちも日々焙煎の品質向上を目指し取り組んでいます。製造する製品すべてにおいて、ローストLOGのほかにも様々な数値管理を行っています。それはお客様に届いた商品のトレサビリティを明確にするためです。それと併せて行っているのが下記のルーティーンです。

 

焙煎レシピのプラン ⇒ 焙煎実施 ⇒ カッピングによる検証 ⇒ 修正

 

とても当たり前のことで、シンプルなことですが、これこそがより良いコーヒーを届けるうえで一番大事な項目です。というのも、焙煎は本当に奥が深く、年間を通じて同じ味を再現するのがとても難しいのです。外気温、天候、湿度、豆のロット、水分含有量など多くの要素が絡み、少しのずれでコーヒーの表情はガラリと変わることもあります。

 

もちろんデータ上の数値で判断できることもありますが、微弱な数値変化の際はカッピングで検証することが唯一の方法なんです。これは、農園であれば生産者が収穫時に、バリスタであれば提供前の味調整として行うのと通じることです。

コーヒー生産業の危機

ニュースなどでも度々取り上げられていますが、コーヒー生産は今危機的状況にあると言われています。「2050年問題」というワードを聞いたことがありますでしょうか? 気候変動の影響でコーヒー豆の生産に適した土地が2050年ごろまでに激減するという問題が注目されているのです。

 

3で述べた通り、コーヒーの生産地は、赤道を挟んで北緯25度~南緯25度の「コーヒーベルト」と呼ばれる地域に集中しています。温暖で、雨期と乾期がはっきりしている気候が栽培に適しているためです。昼夜の寒暖差が大きいほどおいしく育つとされ、農園は標高が高い場所に多いのもその理由からです。

 

しかし気候変動による気温上昇や、雨期と乾期のバランスが崩れて長期の干ばつに襲われたりする生産地が増え、栽培が困難になると言われているのです。

 

また、コーヒーの需給バランスも非常に重要です。豊作になれば消費者である私たちは恩恵を受ける一方、農園側は取引額が安値となり生活に負荷がかかります。こうした需給バランスの崩れにより、生産者が果物や酪農のほか、麻薬栽培に至るケースもあります。

日常の中の上質

私たちScrop COFFEE ROASTERSが掲げるコンセプトとして、「日常の中の上質」というワードがあります。ここには、日々の仕事や生活に追われてつい忘れてしまう心のゆとりや安らぎを、コーヒーを通して感じていただきたいという願いが込められています。

 

私が考えるコーヒーは品質だけではないんです。特に日本では、飲むシチュエーションや機能性も大事だと思っています。平日の朝から、豆を挽いてハンドドリップをするのってなかなか難しいですよね?? もちろんそれが出来るゆとりがある方は羨ましいのですが……

 

最近ドリップバッグの需要が再認識され伸びていると聞きます。要因として、外側フィルムの品質向上により酸化劣化の軽減もある一方、手軽にどこでも飲めるといった機能性もあるからではないでしょうか? 私たちも、ドリップバッグのほかに、カプセル式コーヒーでゲイシャのシングルオリジンが飲める商品を開発しております。1st WAVEで起きた缶コーヒーやインスタントコーヒーが今も存在しているのは、顧客のニーズを確かに捉えていたからだと思います。

 

Scrop COFFEE ROASTERSが目指す姿、それは・・・

 

・コーヒーの楽しみ方や無限の可能性を発信し、コーヒーファンを増やすこと

・コーヒーの価値を高めるための取組み、情報発信をし続けること

・「2050年問題」を含めた危機的問題をコーヒーの価値向上で生産者に正しく還元すること

まとめ:コラム連載の経緯

私はこの連載コラムのお話をいただい時、お断りしようと思っていました。業界には素晴らしい先人や、業界をリードする方々が多くいらっしゃる中で、恐縮でした。しかし、コーヒーが飲めなかった私が、自身の体験談を通してお話しさせていただくことで、コーヒーファンを増やすことが出来れば、コーヒー業界の未来に少しでも貢献できると思い引き受けさせていただきました。

 

自分の体験を振り返ることで懐かしくもあり当時の想いも蘇りながら、お伝えしたいことも自分なりに整理が出来ました。全ての方のご希望に添えなかったとは思いますが、最後まで読んでくださった方々へ改めて感謝を申し上げます。

 

またどこかでコーヒーの魅力をお伝え出来たら幸いです。

 

過去の記事はこちらから

 

Scrop COFFEE ROASTERSについて
Scrop COFFEE ROASTERSは、自社焙煎工場をもつスペシャルティコーヒー専門店です。
毎日楽しめるブレンドから、世界で注目を集める幻のコーヒー「ゲイシャ」、国際品評会(カップオブエクセレンス)の入賞豆や農園のプライベートオークションロットなど、他では手に入らない希少なコーヒーをご提供しています。
コーヒーのある豊かな生活と安らぎのひと時を大切に、「日常の中の上質」をお届けします。
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