日本でも「バリスタ」というワードを聞くことも少しづつ増えてきているように感じていますが、そもそもどのような職業なのでしょうか?
また、バリスタの「競技会」が存在していることをご存じでしょうか? 今回は私の体験談も踏まえてお伝えできればと思いますので、最後までお付き合いいただければと思います。
バリスタの語源
バリスタという言葉の語源は、イタリア語で「BAR/バール」と「ISTA/イスタ」から来ています。「BAR/バール」は日本でいうコーヒー屋さんです。綴り(つづり)から推測すると、日本のバーを連想しがちですが、エスプレッソマシンに加え、クロワッサンや焼き菓子などを置いているお店を思い浮かべてみてください。
「ISTA/イスタ」はイタリア語で「人」という意味。つまりコーヒーを淹れてサーブする方の呼称というわけです。といっても、「BAR/バール」ではアルコールを扱っている店も多く、その知識やフードとの相性なんかも理解している必要があります。
そして何といってもバリスタの存在意義は、「この人がいるからついお店に通っちゃう」といったパーソナルの部分もとても大事な要素です。でもこれってほかの業態や仕事でも全部共通していますよね。
私がバリスタという職業に夢中になったきっかけ
自己紹介になってしまいますが、少しだけ私の体験をお話しさせてください。私もバリスタという職業からコーヒーの仕事をスタートしました。ですが、もともとはコーヒーが飲めなかったんです。学生の頃、家から近い、時間帯が合うといった理由だけで始めました。
私が勤務していたお店は都内の駅直近にあり、周辺はオフィスとホテルが立ち並ぶ環境でした。なので、毎日通ってくださるご常連様や海外からのお客様も多く来店されていました。
そんな方たちと毎日会って、時には店内で一緒にお酒も飲んで(笑)行く中で、自分がつくったものを自分で提供してお客様に楽しんでもらえる「バリスタ」という職業に一気に惹かれていきました。いまでもこの想いはベースになっていたりします。
選手としてバリスタチャンピオンシップにチャレンジ!
私が初めてバリスタの仕事を始めたお店は、某企業が手掛けるイタリア系のカフェでした。イタリアは世界最古のカフェとしてしられるベネチアの「Caffè Florian(カフェ・フローリアン」が有名ですが、どの町にも大小さまざまなBARがあり、まさににコーヒー文化が生活に根付いています。
私も当時バリスタという職業にのめり込んでから、どうしても本場の文化に触れてみたくて1か月間BAR巡りをしていました(笑)
そんな中、バリスタの競技会があることを知るのですが、日本の競技会の歴史については2002年の世界大会参加後、毎年1回開催されています。詳しくは下記をご覧になってみてください。
http://scaj.org/activity/competitions/jbc/jbc-overview
初めて大会を生で観戦したのが2004年だったかと思います。その時に活躍されていたバリスタの方たちが純粋にかっこ良くて、自分も同じステージに立ちたい!と思ったのを覚えています。
私が大会にチャレンジしたのは、2007年と2011年大会だったと思います。イタリア以外のコーヒー文化も勉強したいと、コーヒーの聖地と言われるシアトル系のカフェに職場を変えて出場!(記憶がただしければ・・・)結果は…16位、19位と惨敗でした(笑)。
結果はともあれ、出場できた経験はいまでも良い思い出です。
バリスタチャンピオンシップの変遷
日本国内で毎年行われているジャパンバリスタチャンピオンシップ。優勝すると日本代表として世界大会に出場し、世界85か国以上のそれぞれの国内チャンピオンが世界一の座をかけて競い合います。
初開催から20年ほどの歳月がたつ中で、大会自体の傾向や世界から見た日本のコーヒー業界としての立ち位置も大きく変わっていきました。私が初めて参加した2007年頃で言うと、ここ近年主流となっているシングルオリジンコーヒーではなく、ほぼ競技者全員がブレンドコーヒーを使い、焙煎度合も比較的深煎り傾向のエスプレッソを使用していました。
そこから4年後の2011年大会では、シングルオリジンコーヒーを使用するバリスタも増えはじめ、よりスペシャルティコーヒーの個性を表現し、伝える形へとなっていったのを覚えています。
また、世界における日本のスペシャルティコーヒー業界の立ち位置も大きく変わっていくこととなります。2000年代前半はアメリカや欧州が業界をリードする中、2010年代ごろより世界大会でも日本勢は優秀な成績を収め、世界でも非常に注目される国となりました。
今日に至るまでには先人たちの多大なる功績があり、一歩づつ着実にコーヒー業界が成長してきた証ではないでしょうか。
まとめ:バリスタとしての新たな歩み
私は、2011年の選手としての参加を最後に、しばらく競技会への関りからは遠ざかっていました。そんな中、我々が展開するブランド「Scrop Coffee Roasters」で、もう一度チャレンジしてみたいと強く思うようになりました。理由は単純で、実体験を通して得られたかけがえのない経験と、人として成長できるチャンスを仲間にも与えたいと思ったからです。
現在、私自身は選手ではなく2018年、2019年と審査員(センサリージャッジ)として大会に参加させていただいています。その中で感じること、それはぜひ大会にチャレンジしてみて欲しいということです。一定期間、一つのコーヒーと向き合うことは、コーヒーについての深掘りを進めていける最高の機会です。
決して楽な作業ではないですが、普段の店舗勤務だけでは得られない「気づき」の発見につながります。そうした体験を通してお客様に「もっとコーヒーを美味しく、楽しく飲んでもらう」ことを伝えること、それこそがバリスタの一番の存在意義だと思うんです。