最高級品種としてコーヒー通からも広く愛されるゲイシャ種だけを扱うスペシャルティコーヒー専門店『GESHARY COFFEE 日比谷店』が令和1年11月1日11時11分(金)にオープンし、盛大にオープニングセレモニーが行われました。
その様子を、カフェンドでは、グランドオープンに駆けつけた世界的バリスタ達や、「FURUMAI」の開発から関わるコーヒーのプロを取材し、『GESHARY COFFEE』やゲイシャ豆の魅力、今後の展望などを伺いました。
目次
日本のコーヒー業界を牽引する「FURUMAI」アンバサダーに独占インタビュー
Vol.1では、豪華な海外ゲストバリスタのインタビュー内容をご紹介しました。
Vol.2では、日本国内のコーヒー業界を牽引する、ふたりの「FURUMAI」アンバサダーにインタビュー。『GESHARY COFFEE』の魅力をたっぷりお届けします。
岩瀬 由和氏(World Barista Championship 2016 準優勝 Japan Barista Championship 2014-2015 優勝)
—『GESHARY COFFEE』のゲイシャだけを取り扱うお店というコンセプトはどう感じていますか?
世界初の試みなので、きっと新しい風をこの業界に吹かせてくれるだろうという期待と価格も安くはないので、これからどうなるんだろうという不安が正直交錯しています。ただ、このクオリティのコーヒーを800円で提供できて、楽しんでいただくっていうのは凄いと思います。
—「FURUMAI」には、岩瀬さんのレシピが入っていますが、この機械にはどういう感想をお持ちですか?
「FURUMAI」は、ひとことでいうと全自動コーヒーマシンなんですけど、それってコンビニとかでも使っている言葉じゃないですか。だから全自動コーヒーマシンっていうと、「ただ挽いて抽出して出てくるんでしょ」って思うかもしれないんですけど、実はそれは非常にコモディティ的な考え方で、スペシャルティコーヒー的な考え方ではないんですね。
—つまり「FURUMAI」は、今までの全自動コーヒーマシンとは全く違うのですね。
格安のコーヒーで人件費を削ったり一貫性を保つためにちょっと深めで淹れたりするための従来の全自動コーヒーマシンの提供方法ではなくて、スペシャルティコーヒーをバリスタがしっかり提供するという考え方がベースになっています。
—とても興味深いですね。
バリスタの抽出技術を再現できなかった従来の機械に比べて、「FURUMAI」は、最高の味わいみたいなものをマシンが引き出せるところが本当に凄いんです。
バリスタが本来操作できるポイント以上のものを完璧にコントロールするので、ゲイシャなどのユニークで繊細な味を引き出せるようになりました。僕の中ではバリスタチャンピオンシップに取り組むのと同じくらい豆に向き合って抽出しているので、味の組み立てひとつとっても非常に面白いです。逆に言えば、知識があまりないバリスタさんが適当にドリップで淹れるよリは、はるかに美味しいですよ。
—でも、逆に機械の可能性が広がると、それを操作できるのは熟練されたバリスタに限られるのではないでしょうか?
そうですね。我々がレシピ開発しているのは、非常に知識が豊富で、農園のこともよく知っているから出来ることです。今、コーヒーもクオリティが二極化しているように、やはり提供も今後は二極化していくと思います。だから、どのポイントにおいてもコーヒーの知識があることは非常に重要ではないかと思いますね。
—岩瀬さんにとってゲイシャの魅力とは?
単純に、分かりやすい。「ワオ!」ってなるフレーバーに尽きると思います。
—そのワオ!もゲイシャの産地や農園ごとに全部違いますか?
ゲイシャの場合、僕はドレスを来た女の子に例えるんですけど、白いドレスを着た、凄くエレガントな清楚な感じの豆もあれば、夜にカクテルドレスのピンク色や紫色のドレスを着てはしゃごうとしているものもあれば、黄色みたいなのもあるし、本当に同じゲイシャでもいろんな表情を持っていると思います。
—ここで飲めるゲイシャを色に例えるとどんな感じでしょう?
エリダ農園は黄色、ジャンソンは完全に紫色です。色に例えられるということは、つまりフレーバが豊かということなんです。みんな表情が違いますね。
—国内外で活躍されている岩瀬さんですが、今後もっとやっていきたいことはありますか?
メインはレックコレクティブの経営をしているので、バリスタの育成をして、店舗運営をしていますが、自分が店舗に立つことはありません。社内、社外問わず、こういう場所に立って自分の価値を高めていく活動も同時にしていきたいと思っています。今後は、単純にバリスタとしてよりも、産地に関わりながら、良いものをお客さんに提供していくことをもっとやっていきたいですね。
阪本 義治氏(Barista Trainer / Coffee Consultant)
—オープン初日を迎え、今どのようなお気持ちですか?
やっとオープンしたというよりは、これからという気持ちに近いですね。「FURUMAI」でお客様を満足されられなければ終わりなので、オープン前の反応よりも、これからのお客様のリアルな反応や感想が本当に大事になってくると思います。
—アンバサダーとして、このプロジェクトに関わった経緯を教えてください。
約3年半前に、「FURUMAI」の開発に携わることからスタートしました。実はこのプロジェクトは最初、マシンの開発メンバーにコーヒーのプロがいなかったんですよ。
スタートして一年くらい経ったところで、これ以上は専門家がいないと先に進めないということになり、 僕に声をかけていただきました。開発メンバーにセミナーをしながら、同時に僕のネットワークでコーヒーのプロにお声がけをして、技術や知識を持っている仲間達でアンバサダーチームを作りました。
—当時、「FURUMAI」を見た時の印象は?
最初に原型を見た時点からかなり可能性がある機械だと思っていました。圧力をかけてプレスして抽出する方法もそうですし、コーヒーマシンといえば黒くて四角くて、下からコーヒーが出てくるだけのものが多い中、当初から他にはないものを作ろうとしていて、機能美も優れているうえ、創造性があったので、必ず面白いプロジェクトになるだろうとは思っていました。
—ゲイシャ専門店にしたのはなぜですか?
あるとき、木原社長が知合いから、「コーヒーやるならゲイシャを飲まないとダメだ」と言われたそうで、普通に流通していないパナマの最高ロットを私が入手して飲んでもらったんです。
すると、それを飲んだ社長が「(ゲイシャ農園を)やりたい」とおっしゃるので、世界各国の農園主や生産者を探しました。しばらくしてコスタリカで農園を手に入れることが出来、機械も開発したのだから、店舗を構えようとなりました。
—壮大なプロジェクトになりましたね。
このプロジェクトは、「Seed to Cup」を超えて、「Farm to Cup」なんです。農園を持って豆を植えるための土地を耕すところから考える。今土壌から開墾している土地もあるので、早くて3〜4年後くらいには自分たちの耕した土地からコーヒーが収穫できるかもしれませんね。
—阪本さんにとって、ゲイシャの魅力とは?
コーヒーの魅力を全て体現したのがゲイシャだと思っています。コーヒー関係者に「今、最高のコーヒーって何ですか?」って聞いたら、95%くらいの人は「ゲイシャ」って答えると思うんです。でもその専門店は世界に存在していなかった。
一口でゲイシャといってもコロンビアのように重たくてしっかりした味もしますし、パナマになると非常に華やかで繊細な味がしますが、どれにも共通するコーヒーの質の高さを味わっていただけるものだと思っています。
次回は、貴重なゲイシャ農園主のインタビューをお届けします。お楽しみに!