コーヒー豆の精製方法に「ナチュラル」や「ハニー(プロセス)」と呼ばれるものがあるのをご存知ですか?
一般的な精製方法である「ウォッシュト」に比べ、個性的な香りや甘みが際立ったコーヒー豆の作り方なんです。
気温が徐々に高くなり、季節的にはアイスコーヒーへと移ってきていますが、暑い時期でも「やっぱりコーヒーはホット!」いう方もいらっしゃると思います。
「ナチュラル」や「ハニー」で精製されたコーヒーは、そんな方々にこそ注目してほしいコーヒーなんです。
今回は、夏だからこそオススメしたい個性派、「ナチュラル」と「ハニー」についてご紹介します!
コーヒー豆の精製方法に注目してみよう!
コーヒーは一般的に生産国の名前(ブラジル、グアテマラなど)で販売されていますが、当店で扱っているような「スペシャルティコーヒー」になると、生産国に加えて、農園の名前、品種、精製方法まで明らかになっています。
この情報の読み方は以前に詳しく書いた記事(以下参照)がありますので、そちらをご覧ください。
今回注目するのは、そのうちの「精製方法」です。
コーヒーは、木に生っている時は赤い実です。コーヒー豆はその中の種の部分になりますので、コーヒー豆を作るには「果実から種を取り出す」という作業が必要になります。
この工程のことを「精製」と呼んでいます。
精製方法は大まかに「ウォッシュト」「ナチュラル」「ハニープロセス」の3種類に分けられるのですが、その違いはコーヒーの実の中身がどうなっているかを知っているとわかりやすいです。
【コーヒーの実図解】
コーヒーの実のもっとも外側には果肉が付いていて、その中にコーヒー豆の本体である種子があります。
果肉と種子の間には「ミューシレージ」と呼ばれる層があり、これは触るとベタベタしていて、舐めると甘い「蜜」のような味がします。
コーヒーの精製は、基本的に「果肉を剥く」「乾燥させる」というふたつの工程があって、それぞれの精製方法は、この工程に違いがあります。
精製方法ごとの工程の違い
もっとも一般的な精製方法が「ウォッシュト」です。
果肉を剥く時に、果肉とミューシレージの両方を取り除き、「種子だけ」の状態にして乾燥させます。
上の図では省いていますが、種子の周りにはもう一層、「パーチメント」と呼ばれる薄皮がありますが、この「パーチメント」は残したまま乾燥を行います。
この製法で作られたコーヒー豆は基本的にスッキリとしたクリアな味わいで、多くの方が思い浮かべるコーヒーのイメージはこちらが近いと思います。
一方の「ナチュラル」は、「ウォッシュト」のように最初に果肉を剥かず、コーヒーの実そのままの状態で先に乾燥を行う精製方法です。
十分に乾燥させ、コーヒーの実がドライフルーツのような状態になったら果肉を剥いて種子を取り出します。
その風味はウォッシュトとは対照的で、香り、味ともにとてもフルーティで個性的、しっかりしたボディ感のある味わいになります。
「ナチュラル」と「ウォッシュト」の中間に位置するのが「ハニー(プロセス)」です。
この方法ではコーヒーの実から種を取り出す際、果肉だけを除去して、ミューシレージ+種子の状態で乾燥を行います。
ミューシレージが付いたまま乾燥を行うことで、その甘みが種に残り、まるでハチミツをまとわせたような甘さを持つコーヒー豆に仕上がるのです。
ナチュラルとハニーの個性を楽しもう
このようにコーヒーとしては個性的な部類に入るナチュラルとハニーですが、その個性が暑い時期に爽やかさを感じさせてくれます。
とくにナチュラルはより個性が強く、その味わいは「フルーティ」というコメントでよく表現されます。その多くはベリー系のフルーツを連想させる香りです。
ちなみに同じ「フルーティ」という表現でも、オレンジやグレープフルーツなどに例えられる柑橘系のフルーティさは、ウォッシュトのコーヒーに多く見られるコメントになります。
クリーンな風味になるウォッシュトのコーヒーは、酸味にもキレがあるため、柑橘系を連想しやすくなるのです。
ハニーは、ナチュラルほどの強い風味はないですが、ウォッシュトのキレに甘みを足してくれます。
豆によってはハチミツのような甘みもあり、これがキレの良い酸と相まってハチミツレモンのように感じられることも。
これが夏にピッタリの風味で、朝の1杯目のコーヒーにも最適です。
焙煎度合にも注目するとさらに面白い!
さらにもう一歩踏み込んで、「なぜナチュラルやハニーは夏に合うのか」を考えてみましょう。これには豆の焙煎度合が絡んできます。
ナチュラルやハニーのコーヒー豆は、あまり深煎りにせず、比較的浅煎りで販売されていることが多いです。
体感的な話になってしまいますが、これらのコーヒー豆はウォッシュトのコーヒー豆に比べると「焦げやすい」印象があります。
深く焙煎してしまうと、せっかくのフルーティさや甘みが焦げたような苦味に負けて消えてしまうのです。
コーヒー豆は浅煎りにすると苦味はほとんどなく、酸味が強く出ます。
ナチュラルやハニーのコーヒー豆は、その個性を活かそうとすると浅煎りの傾向になり、結果的に酸味のある爽やかな風味のコーヒーになります。
コーヒーらしい苦味が少なくなるため、まるでジュースのような爽やかな飲み口と味わいになるわけです。
じめじめとして蒸し暑い日本の夏だからこそ、気分がパッと明るくなるジューシィなナチュラルやハニー精製のコーヒーで、気持ちを切り替えてみてはいかがでしょうか?
暑い時期でもコーヒー豆を選ぶ楽しみはあります。その時期ごとにおいしいと思えるコーヒー豆を探してみてくださいね!