厳しい暑さも過ぎ去り、すっかり秋らしくなりました。コーヒーもアイスからホットへと移り変わる時期ですね。
そろそろハンドドリップを再開しようかな、と考えている方も多いのではないでしょうか?
でも、いざ久しぶりにやってみると、感覚が鈍っていてうまく淹れられなかったり、味や濃さが安定しなかったり、といった話もよく耳にします。いわゆる「コーヒーあるある」ですよね。
そこで今回は、鈍った感覚を取り戻し、もっと上手においしくドリップするための見直しポイントをご紹介してみたいと思います。
普段、何気なくやっている淹れ方を再確認し、ハンドドリップのレベルアップを目指してみましょう!
目次
コーヒーをおいしく淹れる方法とは?
淹れ方について語るまえに、「コーヒーをおいしく淹れる」ということについて考えてみましょう。
おいしいコーヒーを淹れるうえで大切なのが「コーヒーの味をしっかりと出す」ことです。
豆が持っているポテンシャルをしっかり引き出してあげることができれば、コーヒーの味はぐんとおいしくなります。
ですが、「しっかり出す」ということを意識しすぎて、「おいしくないもの」まで抽出してしまっていることも意外と多いんです。
これはいったいどういうことでしょうか?
越えてはいけない「エグ味」のライン
ドリップでコーヒーを抽出する際、その味を決める要素は以下の順番に溶け出してきます。
① 酸味系の成分
② コクや苦味系の成分
③ エグ味
ものすごく大雑把ですが、順番としてはこんな感じです。
このうち、①酸味、②コクと苦味はコーヒーの味を決める「おいしい成分」なのですが、③エグ味はコーヒーの味を悪くしてしまう、いわゆる「おいしくないもの」です。
しかもエグ味は出始めると、そこから先はエグ味ばかりが増えていき、コーヒーの味をどんどん悪くしてしまいます。
コーヒーをおいしく淹れるためには、このエグ味が出るよりまえに抽出を終わらせる。これが大切なポイントなのです。
ドリップの味を決める4つの要素
コーヒーをおいしく淹れるためにもうひとつ大事なことがあります。それは「コーヒーの濃さ」です。
この「濃さ」は、以下の4つの要素で調整することができます。
これら4つの要素を加減して、エグ味のないちょうどいい濃さに抽出できれば理想的です。
とはいえ、コーヒーの「濃さ」の感じ方には個人差があり、好みのわかれるところでもあるため、まずは自分にとって「ちょうどいい」と感じる濃さでの抽出を目指してみましょう。
具体的な調整方法は?
では、いくつか具体例を混じえて、味の調整方法を考えてみます。
例1)味は濃いが、香りがあまりしない
<状況>
エグ味がたくさん入っている可能性が高いです。
<原因と対策①>
抽出時間が長すぎることが考えられます。
抽出時間は、一度に注ぐお湯の量と注湯間隔で調整することが可能です。この場合は一度に注ぐお湯を増やしたり、注湯間隔を短くしたりすることで全体の抽出時間を短縮してみましょう。
「200ccのコーヒーを3分以内で抽出」これを目安に抽出してみてください。
最初の蒸らしも含め、2分30秒から3分ほどで抽出できれば、バランスの取れた飲みやすいコーヒーに仕上がると思います。
<原因と対策②>
コーヒーの挽き目が細かすぎる可能性があります。
コーヒー豆の挽き目が細かすぎると、抽出液がドリッパーの中で滞留しやすく、落ちるスピードが遅くなり、過抽出の原因となります。
ハンドドリップの場合、中挽き~中細挽き(上写真)にしてお湯の通りをよくしてあげるといいでしょう。
例2)全体に味が薄い
<状況>
コーヒーの成分を十分に抽出できていません。
<原因と対策①>
抽出時間が短い可能性が高いです。
先述のとおり、コーヒーのコクや苦味の成分は酸味系成分の次に出てきます。このため抽出時間が短いと、コクや苦味の成分が十分に抽出されず、味が薄っぺらくなるのです。
朝のお出かけ前など、慌てて淹れたコーヒーによくありがちですよね。
普段から味が薄いという方は、いつもよりゆっくり少量ずつお湯を注いで抽出することで改善されるはずです。上でも書いた「200ccを3分で抽出」を目安にやってみましょう。
<原因と対策②>
お湯の温度が低すぎるかもしれません。
抽出時のお湯の温度が低いと、抽出不足で味の薄いコーヒーになります。ポットで保温中のお湯ではなく、必ず沸かしたお湯を使いましょう。
一般的には90~95℃くらいがコーヒーの抽出に適した温度とされており、沸騰した直後の熱湯だと少し熱すぎ。一度ドリップポットに移すことで温度が下がり、抽出に適した湯温になります。
なお、当店でのオススメは90~93℃。コーヒーの味をしっかりと出しつつ、抽出時間を少し短くすることでエグ味を出さないように心がけています。
味を安定させるには、同じ環境を作る
ハンドドリップをされているお客様からのご相談で「味がブレる」「安定しない」という話もよくお聞きします。
コーヒーの味を安定させるには、まず抽出環境を整えることが必要です。
先ほど挙げた4要素(コーヒー豆の量、挽き目、抽出時間、お湯の温度)に加え、抽出量も毎回同じにしてみましょう。
たとえばカップ1杯200ccなら、毎回きっちり200ccで抽出を行う。これが日によって190ccだったり220ccだったりすると、淹れるたびに濃さが変わり、味もブレてしまいます。
本来なら豆の分量やお湯の温度をきちんと測ってから淹れるのが理想ですが、そこまで手間はかけたくないという場合には、一部の工程をルーチン化するのがオススメです。
以下はその一例ですが、
- コーヒー豆の計量スプーンはいつも同じものを使う
- 沸かしたお湯は一度ドリップポットに移してから使う
- サーバーの目盛りを見て抽出量をコントロールする
といった具合です。
こうしてルーチン化することで計量の手間をかけずとも、毎日「ほぼ同じ」抽出環境でコーヒーを淹れることができます。
忘れてはいけない「豆の品質」
ここまでコーヒーの抽出に関していろいろとポイントをご紹介してきましたが、その前段階として忘れてならない大事な要素があります。それは「コーヒー豆の品質」です。
原料であるコーヒー豆が劣化していたり、そもそも質が低かったりすれば、抽出工程でいくら工夫してもおいしいコーヒーにはなりません。
とくに大切なのは、焙煎してから日にちの経っていない新鮮な豆を使うこと。そして淹れる直前まで粉に挽かず、豆のまま保存しておくことです。これで豆の劣化を遅らせることができます。
それでもコーヒー豆は日々少しずつ味が変化していくため、毎回同じ味に淹れるのはじつはとても難しいことなのです。
味がブレてしまう原因をできる限り排除しつつ、日々の微妙な変化を感じながら飲むのも、またコーヒーの楽しみ方のひとつといえるでしょう。
今回はハンドドリップをもっとおいしく淹れるポイントについてご紹介してきました。
大切なのは、抽出を安定させ、コーヒーのおいしい成分だけをしっかりと引き出すこと。エグみを出さず、ちょうどいい濃さに仕上げるための4つの要素をつねに意識して、ワンランク上の味を目指してみてください。