もっと多くの人々に“ゲイシャ”の価値や魅力、おいしさを知ってほしい――その一念から「GESHARY COFFEE」のプロジェクトに賛同し、ブレインとして力を発揮してきた阪本氏。

 

しかし、そのきっかけとなったのは、バリスタトレーニングを生業とする氏の立場とは、ある意味対極に位置する全自動コーヒーマシンの開発サポートの依頼でした。

 

本稿ではVol.1に引き続き、全自動コーヒーマシン『FURUMAI』の魅力や、阪本氏のFURUMAIアンバサダーとしての役割などについて、お話しを伺っていきます。

 

▼Vol.1はこちらから

【特集】極上のゲイシャ体験で新たな価値を創造する。阪本義治氏が見据える「GESHARY COFFEE」の未来像とは

 

すべてはマシン開発の協力依頼から始まった

――阪本さんは「GESHARY COFFEE」のイベントなどに「FURUMAIアンバサダー」という肩書きで参加されていますが、これはどういうポジションになるんでしょうか?

 

「FURUMAIアンバサダー」というのは、「GESHARY COFFEE」さんの系列会社である、株式会社TREEFIELDさんが開発された全自動コーヒーマシン『FURUMAI』の良さを国内外にPRをしたり、マシンに搭載するレシピを提供したりする、まさに「大使(=ambassador)」のような役割なんです。

 

現在、FURUMAIアンバサダーは僕を含めて5人いるんですが、僕以外は全員、世界でもトップクラスの著名なバリスタばかりです。彼らには『FURUMAI』のマイスターとして、おもにマシンに関するアドバイスやオリジナルレシピの開発などをやってもらっています。

 

  • FURUMAIアンバサダー

阪本義治

 バリスタトレーナー/コーヒーコンサルタント

岩瀬由和

 World Barista Championship 2016 準優勝

 Japan Barista Championship 2014-2015 優勝

Berg Wu(台湾)

 World Barista Championship 2016 優勝

Stefanos Domatiotis(ギリシャ)

 World Brewers Cup 2014 優勝

Benjamin Put(カナダ)

 World Barista Championship 2015-2016 3位

 Canadian Barista Championship 2014-2017 優勝

 

一方、僕は他のアンバサダーとは少し立ち位置が違い、『FURUMAI』の開発がスタートして間もない時期からこのプロジェクトに参加しているんです。

 

僕が参加した当時はまだマシンの外装すらなく、中身もいかにも手作りって感じのパーツを組み合わせただけのもので、一応コーヒーを淹れる一連の動作はするんだけど、抽出不足だったり、不安定だったりと完成には程遠い状態でした。

 

そんな状況から、原因は何か、どうすればもっと良くなるのかをひとつひとつ突き詰めていって、いっしょに作り上げてきたという感じなので、どちらかというと開発チームにより近い、アドバイザー的なポジションかもしれません。

 

――その当時はまだ「GESHARY COFFEE」のプロジェクトは動いていなかったんですよね? 参加を決めた理由はなんですか?

 

当時はまだプロジェクトの規模も小さく、コーヒー屋の「コ」の字も出ていなかったですね。

 

じつは最初にお声がけをいただいたとき、引き受けるかどうかはマシンを見てから決めるつもりだったんです。まず現物を見て、それをどうしたいのか現場の想いを聞いて、見込みがあると感じたら契約します、とお答えしました。

 

それで実際に開発中のマシンを見せてもらったんですが、これがいい意味で規格外というか、とても面白いプロダクトで、開発チームの士気もすごく高くて、コイツはとんでもない可能性を秘めているぞ、と感じたんです。もうその場で即決でしたね(笑)。

 

コーヒーの知識がほとんどない素人ばかり集まって作っているから、既成概念にとらわれることもなく、発想がすごく自由なんですよ。僕らのように長年コーヒー業界にいる人間には思いもつかないような斬新なアイデアがポンポン出てくるんです。

 

――たとえばどんなものですか?

 

抽出不足で味がしっかり出ていないことを指摘したら、じゃあ抽出するチャンバー自体を自由に可動させて撹拌してみようとか、抽出時にエアロプレスのように圧をかけるのもその流れで出てきたアイデアですね。

 

グラインダーに関しても、粒度が揃っていないし香りもまったく出ていないと言ったら、それならグラインダーをもう1基搭載して精度を高めよう、ってなったんです。斬新でしょ(笑)。コーヒー業界に長くいる人間からは、こういうアイデアはまず出てこないですよね。

 

僕はそうしたさまざまなアイデアやそこからできた物に対してジャッジをしただけで、僕の方から提案したものはひとつもありません。今のプロダクトはほとんど彼ら開発チームが独自のアイデアで作り上げたものなんです。

 

――機能も斬新ですが、見た目のデザインも業務用マシンとは思えないほど洗練されていて目を引きますね。

 

おっしゃるとおりです。僕はどちらかというと、コーヒーマシンとしての機能、性能さえしっかりしていれば、見た目はとくに気にしない方なんですが、彼らは性能と同じくらいプロダクトとしての美しさ、“機能美”にも強いこだわりを持っているんです。

 

後発メーカーである以上、他社と似たようなものを作るのは意味がないし、面白くない。せっかく作るならスポーツカーのように性能と美しさを兼ね備えたものにしたい、というのが彼らの意思で、これには会社も賛同していました。

 

僕は当初、この考えに否定的だったんですよ。どれだけ見た目にこだわっても結局は店に馴染まなければ売れないと思っていたので。ですが、徐々に完成へと近づいていく中で、彼らの目指すところは間違っていなかったんだと考えを改めるようになったんです。

 

『FURUMAI』の曲線を生かしたフォルムや、抽出の工程も含め、“あえて見せるデザイン”というのは従来の業務用マシンにはなかった考えですが、とてもスタイリッシュにまとまっていますよね。

 

僕が参加した当時のマシンの出来栄えからはまるで想像ができないくらい、素晴らしい完成度に仕上がっていると思いますよ(笑)。

 

そういう意味では、僕は「コーヒーとして間違いはないか」のジャッジメントはしてきましたが、プロダクトとしてのアイデアや方向性はすべて会社であり、開発チームが生み出したものなんです。

 

彼らはものづくりに対して、そういう「強み」や「力」を持っているので、僕はそんな彼らが作り出すマシンやお店がおかしな方向へ向かわないように、業界の常識やセオリーに照らし合わせて必要な軌道修正をしていく、それが僕に求められた役割だと思っています。

『FURUMAI』がコーヒー業界の未来を変える!?

――そうして数年来、携わってきた『FURUMAI』が今まさに「GESHARY COFFEE」で活躍しているわけですが、実際に稼働してみて、改めて感じた魅力というのは何ですか?

 

やはり一番は、誰が淹れても味にブレがなく、つねに最高の一杯を提供できるところですね。

 

先ほどFURUMAIアンバサダーの方々が独自のレシピを開発、提供しているとお話ししましたが、そのレシピを使えば、たとえアルバイトの子が淹れても世界のトップバリスタの味をそっくり再現できる。これが『FURUMAI』の最大の魅力です。

 

 

僕がこの『FURUMAI』の開発に参加して、もっとも重要なポイントと考えていたのはまさにそこで、下手なバリスタより『FURUMAI』の方がはるかにおいしいコーヒーを淹れることができる、そういうマシンに仕上げなければ意味がない。それくらい強い気持ちで取り組んできました。

 

バリスタトレーニングを本業にしている僕がこういうことを言うと、矛盾していると思われる方もいるかもしれません。もちろん個々のバリスタの技術向上も大切なんですが、それ以上に僕はコーヒー業界全体が発展していくことこそ重要だと思っているんです。

 

バリスタトレーニングはそのひとつの手段であって、目的ではないんですよ。

 

ですから、業界の未来を考えたとき、技術がない、向上心がないバリスタや良いアウトプットのできないバリスタは淘汰されても仕方ない。むしろ淘汰されていくべきだと思っています。

 

コーヒーはおいしいのにバリスタが致命的に無愛想だったり、勤務態度が悪かったりすると、あまりいい気分はしないでしょう? 反対に一流の豆を扱っているのにバリスタの腕が三流ですべて台無し、なんてお店も少なくない。

 

そんなバリスタにお給料を払うくらいなら、『FURUMAI』を一台導入したほうがオーナーにとっても、お客様にとっても絶対にいい。

 

もうコーヒーの抽出は『FURUMAI』にまかせてもらって、バリスタを含めたスタッフはレシピの研究やサービスの充実、お客様とのコミュニケーションにもっと力を入れていくことで、コーヒー業界は今まで以上に発展していくと思います。

 

もうひとつ、これは『FURUMAI』の導入を検討しているオーナーさんにぜひお伝えしたい注目ポイントとして、信頼性の高い日本製品であることも挙げておきます。

 

日本製ですから当然マシンの操作パネルやマニュアルも日本語ですし、万が一何か問題が起きてもサポート窓口もサービスマンも日本人なので、時差や言葉の壁を気にせず相談することができる。これは海外メーカー品にはない、とても大きな魅力であり、アドバンテージです。

 

 

抽出レシピやマシンの設定に関する相談なども思い立ったらすぐできます。海外メーカーのようにメールの返事で数日待ち、パーツの取り寄せでさらに数週間待ち……なんて無駄に時間ばかりかかることもありません。

 

毎日何十杯、ときには100杯以上淹れるわけですからね。こうした導入時の敷居の低さ、導入後のサービスの充実度もオーナーにとっては大きな魅力と言えるのではないでしょうか。

“Farm to Cup”の取り組みを世界へ

――次はいよいよ世界に向けて『FURUMAI』を広くアピールしていくステップへと移っていくわけですが、FURUMAIアンバサダーとしての意気込みを聞かせてください。

 

新型コロナウイルスの影響も続いていますし、具体的なお披露目の時期はまだわかりませんが、マシンの完成度には自信を持っています。いつか発表のときが来たら、世界に向けて『FURUMAI』の良さをしっかりアピールしていきたいですね。

 

もちろん、それは「GESHARY COFFEE」さんについても同様です。

 

東京の中心地、日比谷でこれだけの規模のカフェをやっているだけでも十分すごいことですが、それがゲイシャ専門店であり、さらにコスタリカにはCup of Exellenceで1位に輝いた実績を持つ農園まで所有していて、事業コンセプトである“Farm to Cup”を着実に実践している。

 

自分たちの手で収穫し、輸入し、焙煎もして、抽出するマシンも自分たちでゼロから作る。この一連の流れをすべて自分たちでやっている、こんなすごいことを実践している会社は世界中探し回っても他にありませんよ。

 

今後はこれらの強みを生かして、ここ日比谷店を基点にしっかりアウトプットしていくことも僕に与えられた使命だと思っています。

 

――具体的なプランなど伺ってもいいですか?

 

さっきもお話しした生産者の方を招いての講演会(→Vol.1参照)とかね、本当にアイデアだけならいろいろあるんですよ(笑)。せっかく自社農園があるんだから、日本にいながら農園がもっと身近に感じられて、農園のファンになってもらえるような試みなどもいつか挑戦してみたいですね。

 

まだどれも僕の頭の中で、アイデアの域を出ていないものばかりなんですが、これから「GESHARY COFFEE」さんといろいろ策を練っていく中で、具体的になっていくものもあると思います。そのときまでぜひ楽しみに待っていてください。

 

 

“コーヒーのプロフェッショナル”として業界を力強く牽引する阪本氏と、“Farm to Cup”を合言葉にかつてない壮大なスケールのビジネスモデルでコーヒーの新境地を開拓していく「GESHARY COFFEE」。

 

コーヒー業界に新しい風を吹き込んだこの両者のタッグが、次に狙う2ndインパクトは果たしてどんなものになるのでしょうか?

 

新たなムーヴメント“4thウェーブ”の担い手とも期待される「GESHARY COFFEE」に、cafend編集部はこれからも注目し、随時情報をお届けしていきます。

 

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