コーヒー好きのあなたに質問です。
浅煎りのコーヒーと深煎りのコーヒー、どちらが好きですか?
酸味やフルーティな香りを楽しみたい方は、浅煎りと答えるでしょう。しかし、苦味やパンチの効いた強いコクを求める人の場合は、恐らくツヤが出るほどに深く焙煎した豆を求めると思います。今回はそんなコーヒーに深みと苦味を重視している人にぜひオススメしたいお店があります。
埼玉県さいたま市に位置する自家焙煎珈琲豆店南回帰線。大宮駅から徒歩15分・さいたま新都心駅から徒歩10分の場所にある、喫茶要素ゼロの100%豆売り専門店です。
武蔵一宮氷川神社の参道に面している、駅から少し離れた住宅地の近くにあるお店。大通りから外れた場所に佇むお店は、一見すると地味な印象を与えるかもしれません。しかし、昔ながらの直火焙煎でしっかりと深煎りしたこだわりのコーヒー豆は、町の人をはじめ多くの人に愛されています。
さらに現在では品質の高い豆や、公式サイトの通販サービスが多くの方の目に留まり、遠方から来る方や、郵送を希望する人も増えているそうです。
目次
美味しい苦味を求める人へ【深煎りの豆を重視したお店】
店内には、深煎りを中心に、いろいろなコーヒー豆が幅広く並んでいました。喫茶スペースはなく、コーヒーの生豆の入った麻袋が無造作に並べられています。いかにもコーヒー専門店らしさが感じられますね!
ストレート豆はブラジルやコロンビアなど、ポピュラーながらも根強い人気を誇るラインナップがずらりと陳列されていました。もちろん全部スペシャリティコーヒーです!現在販売されているのは、ブレンド3種、ストレート豆15種(同じ豆で焙煎度合いが異なるものも含む)。これらのスペシャリティコーヒーのラインナップは、店長が創業当時に考えた方針が影響しているそうです。
店長の岩附さんが、お店のこだわりについて詳しく教えてくれました。
「当店が開業したのは2001年ですが、そのころはどちらかと言うといかに安売をするかの時代でした。しかし、他店に比べて少し価格が高くなったとしても、一段階上の品質のコーヒー豆求めるお客様もいらっしゃるはず。そこで、品種や産地を明示したスペシャリティコーヒーを主としました。
単純に産地の違いを記載するのではなく、ロースト(焙煎)度合いによる風味の変化を明示するなど、工夫して販売していました。他にも、お客様の個別の購入履歴を調べ、次回のご利用の参考にしています」
豆を選んだ基準は「深煎りに耐えられるか?」
特筆すべきポイントとして、この店で売られている豆は深煎りの豆が非常に多いのです。近年は品質にこだわった豆を浅煎りで販売するのが主流のビーンズショップが増えてきたため、対極にある南回帰線はより存在感を増しています。
ところでコーヒー豆には多くの産地、銘柄がありますが、南回帰線はどんな基準で豆を選んできたのでしょうか? と質問したところ、詳しく教えてくれました。
「まずは深煎りに耐えられるボディのある豆、濃厚なコーヒーエキスを持っている豆であることです。煎りの浅いコーヒーであれば軽い感じの豆でも良いのですが、ハイローストの豆でも、当店のコーヒーの味としては、ある程度しっかりとした風味が欲しい。非常にさらりとした風味のコーヒーがお好みの方もいらっしゃいますが、それは他のお店におまかせすればいいと良いと思っています」
そもそもどうして、深煎りを中心に取り扱うようになったのでしょう? という疑問についても、
「実は需要は多いはずなのに、深煎りコーヒー豆を主として販売している店は多くありません。深煎りがお好みの方が多いにもかかわらず、それをそろえた店が無かったため深煎り販売をメインとしたのです」
と答えてくれました。
深煎りのコーヒーを生み出すのは昔ながらの焙煎機
年季の入ったフジローヤル社の直火ガス5KG釜で、しっかりと深煎りのコーヒー豆を焙煎しています。
「最近では外国製の、ディスプレイにもなるような格好良い焙煎機をお使いの方も多くいらっしゃるようで少し憧れますけどね(笑)
また、最近では電気釜を使用して、注文後に焙煎、お客様にお渡しする店が多くなってきています。
自分のためだけに焙煎をしてくれたものを受け取れるという魅力がありますが、深煎りをメインとするならばその焙煎機の選択はありません」
さらに岩附さんは、自分の焙煎スタイルも説明してくれました。
「コーヒーの風味はコーヒー豆の資質が重要ですが、焙煎機の操作によっても香りの強弱やエキスの濃淡などが調節できます。当店では排気のハンドルを閉め気味にして、濃いエキスが出るようにしています。
香りが良くて、雑味はない。だけどしっかりとした風味や甘みもあって、なおかつ余韻も楽しめる……そんなすべての風味が揃ったコーヒーはありませんよね。どこを重視した焙煎をするのか、それができる焙煎機の選択と操作が楽しいのではないでしょうか」
最深煎りのコロンビアが創業当時から大人気!
オーバーフレンチにしたナリーニョ地域産コロンビアが、特に人気がある様子。以前はコロンビアばかり焙煎していた頃もあったようです。
「現在はどの豆も満遍なく好評をいただいていますが、創業当初はコロンビアの最深煎りばかり焙煎をしている時期もありました。このコーヒー豆が当店を今まで生き残らせてくれたコーヒー豆だったと思います」
言われてみて気付きましたが、コロンビアを真っ黒なイタリアンロースト(南回帰線では独自の名称として『オーバーフレンチ』と表記)にして販売しているお店は珍しいですね。
岩附さんの話によると創業当時、最初にお客さんにウケたのもやはりコロンビアだったそうです。南回帰線の公式ホームページでも、コロンビアが最初に紹介されていることからも人気がうかがえます。
ちなみに公式ホームページでは、店で販売されている18種類の豆を少しずつ詰め込んだギフトセットも取り扱っています。さいたま市近郊に住んでいない方でも、南回帰線のコーヒーを楽しむことが出来るのはうれしいですね。
「開業してから何年かしたある時、ふと思いついて全コーヒー豆を40gずつ詰め合わせたセットの販売を始めました。他にはないコーヒー豆セットで、ご好評をいただいています。少しずつの飲み比べができるので、自分の好きな風味を知っていただけます」
深みのあるコーヒー豆を飲みたい方は、ぜひ南回帰線へ
取材後、さっそくナリーニョ地域産コロンビアを購入して自宅で飲んでみました。ツヤがある、真っ黒な豆。この時点で、浅煎りよりも強いコーヒーの香りが楽しめます。挽き加減は中あら挽き。淹れ方はオーソドックスにペーパードリップです。
豆を挽いた時点で、部屋中を濃厚な香りが包みました。この香りだけでも、とても心が落ち着きます。
そして、淹れ終わったコーヒーを口に含むと、ガツンとした苦さが口中に広がりました。苦いけれど、えぐみはありません。苦味が徐々に美味しさ・ほんのりとした余韻に変わる感覚が楽しめて、心地よいひと時を過ごすことが出来ました。
眠い朝でもこの1杯を飲めば、きっとシャキッとした気分で1日を過ごすことが出来るでしょう。
強い苦味とコクを楽しみたい方は、ぜひ1度南回帰線のコーヒーを試してみてはいかがでしょうか?