コーヒー業界で働く我々にとって、毎年1~2月は1年でももっとも楽しみな季節です。その理由は、世界各地のコーヒー農園が次々と収穫期を迎えるシーズンだから!
かく言う私も先日、2週間ほどかけて中米各国を訪れ、農園の視察や豆の買い付けをしてきたばかりです。新しい豆や生産者の方々との出会いもあって、とても楽しく、実りの多い出張になりましたよ。
そんな中米出張の話はまた別の機会にさせていただくとして、今回はコーヒー農園に興味がある、生産地の様子をちょっと覗いてみたいという方に向けて、農園視察に関するポイントをさまざまな角度からご紹介してみたいと思います。
豆の買い付け目的じゃなくても観光、見学ができる農園もありますので、中米方面へご旅行の予定がある方やコーヒー好きな方はぜひ読んでみてください。
目次
中米ってどの辺?どうやって行くの?
今回、私が訪れた中米は、北米大陸と南米大陸をつないでいる細長いエリアで、赤道のやや北側に位置しています。
メキシコより南はすべて南米と思っている方も多いようですが、それは大きな間違い!
この細長いエリアにグアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマの7カ国があり、世界的にも注目度の高いコーヒー生産地が密集しているんです。
日本から中米へ行く場合、飛行機の直行便はありません。アメリカ、またはメキシコから乗り継いで行くことになります。航空券の価格は、航空会社や購入するタイミングによって異なりますが、往復でだいたい20~30万円といったところです。
気になる食事や気候について
中米に限らず、海外旅行で気になるのが、その国の生活環境についてですよね。まずは気候と食事についてご紹介します。
【中米の気候、平均気温は?】
中米各国はそのほとんどが熱帯性気候で、日本のように四季はなく、代わりに雨季(5~10月)と乾季(11~4月)が存在します。訪問するならコーヒーの収穫期でもある乾季、中でも12~3月頃がオススメです。
なお、乾季は基本的に暑いのですが、多くの農園がある山に近いエリアは午後の平均気温が22~23℃くらいと比較的過ごしやすいです。ただし、朝晩は意外と冷えるので、真夏の格好で行くのはオススメしません。
【食事について】
海外の多くの国と同じく、中米各国も水道水は飲めません。つねにミネラルウォーターを持ち歩き、切らさないことが大切です。
食事は肉料理が中心。主食としてはトウモロコシ、豆、米などが食べられます。中でもトウモロコシの粉で作った「トルティーヤ」が一般的です。
日本では薄くパリパリに焼いたハードシェルのトルティーヤが有名ですが、こちらは厚みがあって柔らかめのソフトシェルタイプを多く見かけます。このように同じ名前の食事でも、国によってぜんぜん違うものが出てくることもあるのは面白いところです。
朝食は豆をペースト状にした「フリホーレス」が定番ですが、ニカラグアやコスタリカでは、米に豆を混ぜた「ガジョピント」というお赤飯がポピュラーなようです。お米を食べ慣れている日本人には、こちらの方がありがたいですね。
また、中米はさまざまなフルーツがおいしいことでも有名。とくに熱帯系のフルーツは本場だけあって、どれも非常においしいです。乾季は旬を迎えるフルーツも多く、中でもパイナップルはとても甘くて絶品でした。
ホテルは日本とほぼ同額。でもお湯が出ないことも
続いて、お金に関するポイントをご紹介していきましょう。
【宿泊費や移動は?】
ホテルなどの宿泊費は日本と比べるとほぼ同じ~やや割安くらいです。
安い宿は1泊3,000円くらいからあり、日本のビジネスホテルと同等レベルなら1泊5,000~7,000円くらいが相場。1泊1万円を超えるとかなり上等なホテルになります。
金額もさることながら、ホテル選びでとくに注意したいのが、バスルームでお湯が使えるかどうかです。1泊5,000円以上のホテルなら、まず心配はないと思いますが、それ以下だとお湯が出ない可能性があります。
お湯は出るけどシャワーの水圧が弱すぎて使い物にならない、というのは海外ではよくあることなのであきらめましょう。もちろん、ちゃんとしたホテルもあるので、気になる方は事前の下調べをしっかりしておくことをオススメします。
現地での移動手段は車がメインになります。基本はタクシーかバスですが、最近ではUberを利用する人も増えているようです。ただし、Uberはネット経由で手配することになるので、現地でのネット環境が必要になります。
日本からモバイルWiFiルーターを借りていくという方もいますが、滞在期間が長い場合や出費を抑えたいときは現地のホテルやカフェのWiFiを使わせてもらいましょう。
【使える通貨は?】
当たり前ですが、国によって使える通貨がそれぞれ異なります。各国の通貨は以下の通りです。
グアテマラ→ケツァール
エルサルバドル→米ドル
ホンジュラス→レンピラ
ニカラグア→コルドバ
コスタリカ→コロン
その国の首都や外国人観光客の多い都市であれば、米ドルが使える可能性もありますが、肝心なときに使えないと困るのは自分です。面倒でも現地通貨を用意しておくと安心です。
農園見学はハードル高め、観光農園もある
いよいよ本題の農園訪問に関するポイントをご紹介していきます。
【現地の公用語は何語? 日本語は通じる?】
中米の公用語はスペイン語です。空港や外国人の多い観光地などは英語を話せる人も比較的多いですが、日本語はまったく通用しません。
街から少し離れると、英語すらほとんど通じないので、音声翻訳機やアプリを用意するか、最低限の単語、地名くらいは覚えておく必要があります。メインの移動手段であるタクシーやバスも基本的にはスペイン語のみと思っておいたほうがいいでしょう。
なお、外国人を迎えることの多い農園主さんは、英語がペラペラという方もけっこう多いようです。
【農園訪問はどうやったらできるの?】
コーヒー農園を訪問するには、事前に農園へ連絡して、見学を受け付けているか確認する必要があります。
ここでひとつ注意しておきたいのが、「コーヒー農園は観光地ではない」ということです。観光客を受け入れるための人員や設備が整っていない、山の斜面にあってそもそも観光には向かない、というところも少なくありません。
そのため、買い付け以外の目的で訪問を申し入れても、たいていは断られるのが普通です。もし見学を了承してもらえた場合は、「人の仕事場にお邪魔している」という意識を持って、農園主やスタッフに失礼がないような行動を心がけましょう。
行きあたりばったりではなく、確実に、しかも手間を掛けずに農園見学をしたい場合は、以下のいずれかの方法をオススメします。
1)旅行会社のツアーに参加する
旅行会社や航空会社、現地のツアー会社が企画する農園ツアーに参加すれば、他の観光客たちといっしょに気軽に農園見学を楽しめます。通訳や移動手段もセットになっているので、英語が苦手という方にも安心です。
2)観光農園で楽しむ
本格的な農園じゃなくても、テーマパーク感覚で雰囲気を楽しみたい。見学のついでにお土産のコーヒー豆も買いたい、といった方には観光農園がいいでしょう。
観光農園では、農園を見ながらコーヒーの生産工程などを解説してくれるツアーをやっているところもあるので、コーヒーに詳しい方も、そうでない方にも楽しめると思います。
なお、スペシャルティコーヒーの産地として有名なグアテマラのアンティグアには、町の周辺に大きな観光農園がいくつかあります。世界遺産に登録された観光都市でもあり、比較的治安もよいので、街の散策や観光にもぜひオススメのエリアです。
中米旅行でひと味違った旅の思い出を
今回は、いつもと少し趣向を変えて、中米の農園訪問についてご紹介しました。
時期によっては真っ白でかわいいコーヒーの花や、真っ赤に熟したコーヒーの実を見ることができるかもしれませんよ。また、農園で働く人々の様子を見ることで、コーヒーの生産がどのように行われているかも実感できると思います。
多くの日本人にとっては馴染みの薄いコーヒー農園ですが、それだけに訪れてみれば新しい発見や気付きも多いはずです。
この春、海外へ旅行を計画中の方は、コーヒー農園を巡る中米の旅を検討してみてはいかがでしょうか? コーヒー農園ならではの山岳風景や空気感は、リゾートを巡る旅では決して経験できない貴重な体験になること請け合いです。