cafendをご覧のみなさん、はじめまして。調布市仙川で「カフェカホン」というスペシャルティコーヒー自家焙煎店の店主をしている平村と申します。
ゆったりペースになると思いますが、今後こちらでコラムを書かせていただきますので、どうぞお付き合いください。よろしくお願いします。
さて、第1回となる今回は、コーヒー用語のひとつ、「ニュークロップ」について書いてみたいと思います。
「ニュークロップ」というのは、いわゆる「新豆」のことです。日本ではコーヒーは年中どこでも飲めますので、あまり「旬」というものを感じられないかもしれませんが、実際は1年に1回だけ収穫される農作物です。
そのため、「もっとも収穫された時期が近いコーヒー豆=ニュークロップ」が出回る時期があるのです。
コーヒー豆は主に「コーヒーベルト」と呼ばれる北回帰線~南回帰線の間の熱帯地域で栽培されていて、その多くは収穫後、脱穀・乾燥などの工程を経て、8~10月あたりに日本へ到着します。
つまり、コーヒーにとってはまさに今が旬にあたる「ニュークロップ」のシーズンというわけです。身近なところではお米の「新米」とよく似ていますね。
「クロップ」という言葉の意味も知っておきましょう!
せっかくなので「ニュークロップ」の「クロップ」の意味についてもご紹介します。
これは「年度」という意味で、「○○年製」といっても良いかもしれません。ちなみに今年到着するコーヒーは、「2016-2017クロップ」と呼ばれます。
今年獲れた豆なら「2017クロップ」じゃないの? と思われる方もいるかもしれませんが、これには理由があるんです。
そもそもコーヒーにとっての1年は、毎年10月から始まります。
10月1日を境に、翌年9月末日までの1年間に収穫されたコーヒー豆は、同じ生産年度のものとして扱われるのです。
このためクロップの呼び方も年をまたいでいます。これを受けて全日本コーヒー協会は、1983年より10月1日を「コーヒーの日」と定めています。2015年に新たに設けられた「国際コーヒーの日」も同じく10月1日です。
当店でも扱いの多い中米系のコーヒーは、ほとんどが12月~4月頃に収穫されます。そこからおよそ半年後の9月前後に日本へ到着するので、昨年末~今年収穫されたコーヒー、つまり「2016-2017クロップ」がようやく到着する時期を迎えているのです。
スペシャルティコーヒーは、もっとも新しい「製造年度」のコーヒーを使って販売することが基本とされているので、まさにこれから新年度の「ニュークロップ」が楽しめる時期を迎える、というわけですね。
ニュークロップって何が違うの?
では、「ニュークロップ」とそれ以外のコーヒー豆では何が違うのでしょうか?
味の観点からいうと、ニュークロップには新豆ならではの「フレッシュさ」「みずみずしさ」があります。この点はやはりお米と同じで、新米はみずみずしいですよね。
その反面、水加減の難しさはありますが、上手に炊けた時の甘みや香りは素晴らしいものです。
しかし、この美味しさが味わえるのは一年でもわずかな期間だけ。だからこそ新米にはワクワク感があり、毎年楽しみにしている人も多いのだと思います。
コーヒーのニュークロップも同じで「みずみずしさ」がまるで違います。
同時に「酸の質」も異なるのです。同時に飲み比べないと分からないくらいの微妙な差ではありますが、同じ農園の1年前のコーヒー(=「カレントクロップ」と呼びます)と、届いたばかりのニュークロップでは「酸のキレ」に違いがあるのです。
より上品というか、ニュークロップの方が澱みがなく爽やかさを強く感じられます。ニュークロップが「フレッシュ」な印象を受けるのは、この「酸」の違いによるものなんです。
新米と同じく、ニュークロップ独特の味わいはこの時期限定のもの。その違いを分かっているコーヒー屋さん、特にスペシャルティコーヒーの自家焙煎屋さんが「ニュークロップ来ましたよ!」と熱心に宣伝するのはこのためなんです。
ちなみに、先ほど「新米は水加減が難しい」と書きましたが、実はこれコーヒー豆も同じでニュークロップの方が水分を多く含んでいます。そのため、焙煎をする時に失敗しやすいので要注意、というのは自家焙煎屋さんでは「あるあるネタ」なのです。
焙煎しない方にはあまり関係ない話ですけどね。
さて、いよいよこれから「ニュークロップ」のシーズンに入っていきます。早いものはすでに店頭で販売されていますが、今年は本格化するのが10月入ってからになりそうです。
スペシャルティコーヒーのお店で「ニュークロップ」という言葉を見掛けたら「新米販売開始!」みたいなことですので、ぜひ試してみてください。
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