認知症の中でも患者数がもっとも多いのが、アルツハイマー型認知症です。回想法や薬物療法といった治療が行われていますが、現在のところアルツハイマー型認知症の根本的な治療法はまだ確立されていないといいます。
しかし、コーヒーに含まれる「トリゴネン」と呼ばれる成分にアルツハイマー型認知症を予防する効果があると噂になっているのだそう。
本記事では、アルツハイマー型認知症の原因とトリゴネンの効果について詳しくご紹介します。
目次
誰もがかかる可能性がある「アルツハイマー型認知症」とは?
脳の認知機能が低下して日常生活に支障が出る認知症は、老化によるもの忘れとは異なる状態です。
認知症の一種であるアルツハイマー型認知症ですが、なにが原因で発症するのでしょうか?
脳の構成と仕組みについて
わたしたちの脳は物事を考えたり、感情を司る場所である大脳と運動をコントロールする小脳、そして呼吸機能などをコントロールする脳幹から構成されています。
大脳と小脳には合わせて千数百億個もの神経細胞(脳細胞)が存在し、お互いに電気信号を送り合って情報を交換し巨大なネットワークを築いています。
例えば、成人は1分間におよそ15~20回まばたきをして、涙を循環させたり目の汚れを落としたりします。最近ではパソコンやスマホの影響でまばたきをする回数が減っているといわれていますが、まばたきの様にふだん何気なく行っている動作も、すべて脳からの指令でコントロールされているのです。
ところが、脳の障害や病気で認知症になると、感情をコントロールできなくなったり、記憶障害や判断力の低下が起こったりなどの症状が現れるようになります。
アルツハイマー型認知症になる原因
大切な脳細胞が減少、もしくは壊死すると認知症を引き起こします。
認知症の種類によって原因は異なりますが、アルツハイマー型認知症はアミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積し、脳細胞が壊死することが原因です。
アルツハイマー型認知症を引き起こす原因物質だと考えられているアミロイドβは、健康な人の脳にも存在します。通常、食事からタンパク質を摂取すると胃液や腸液などでアミノ酸に分解され、小腸で吸収されてから一旦肝臓に蓄えられます。その後、肝臓から各臓器に送られたアミノ酸は、そこで体を構成するのに必要なタンパク質に合成されるのだとか。40以上ものアミノ酸から構成されているアミロイドβは、脳で合成されたタンパク質が分解されたものです。
アミロイドβには、短期間で排出されるタイプとお互いにくっつきあって脳内に蓄積されるタイプが存在します。加齢などの理由から毒素を持つアミロイドβが蓄積して脳の神経細胞を壊死させると、脳が萎縮してアルツハイマー型認知症を発症するといわれています。アルツハイマー型認知症は高齢者に多い病気ですが、遺伝によって若い人が発症することもあるようです。
アルツハイマー型認知症になると?
アルツハイマー型認知症は、ゆっくり進行していきます。最初は加齢によるもの忘れだと思っていたのが、じつはアルツハイマー型認知症の症状だったというケースも少なくありません。
作り慣れた料理の手順がわからなくなる、買い置きがあるにもかかわらず同じ商品を何度も買ってしまうのであれば、アルツハイマー型認知症の発症を疑いましょう。
女性のほうが男性より発症リスクが高いといわれているアルツハイマー型認知症ですが、発症するともの忘れのほかにも、仕事や家事でミスが増えたり、よく知っている道なのに迷ったり、会話がかみ合わなくなったりといった症状が現れます。
また、理由もなく不安になったり、妄想がひどくなったり、お金の計算ができなくなったり人格が変わったりすることもあるようです。
コーヒーのトリゴネンがアルツハイマー型認知症に効く?
アルツハイマー型認知症に対する薬物療法は存在するものの、現状では治療効果が高いとされる新薬はまだ市場に出回っていません。
そんな中、コーヒーに含まれている成分「トリゴネン」が、アルツハイマー型認知症に効果があることがラットを使った海外の研究で明らかにされました。
トリゴネンとは?
コーヒーの主成分は水ですが、ほかにも数百以上もの成分が含まれていると考えられています。トリゴネンは植物中に存在するアルカロイド(窒素を含む塩基性化合物)の一種で、コーヒーの生豆にはカフェインとほぼ同量のトリゴネンが含まれているそうです。トリゴネンはコーヒーだけではなく桜島大根や青首大根、セロリなどの野菜に含まれているほか、一部の魚介類にも含まれています。
海馬を保護するトリゴネン
イラン医科学大学の実験動物繁殖センターのラット(12〜14週齢、体重範囲250〜295 g)を対象に、アルツハイマー型認知症へのトリゴネンの作用を調べる研究が行われました。まずラットの脳内にある海馬領域にアミロイドβを注入し、アルツハイマー型認知症を発症させます。その後、ラットにトリゴネンを経口投与し、迷路タスクや物体認識タスクを課したところ、認知能力の改善とニューロン喪失の軽減が見られました。
アルツハイマー型認知症になると、脳の海馬から徐々に萎縮がはじまります。記憶には大きく分けて、短い間脳の保管される短期記憶と長い期間脳に保存されていつでも取り出せる状態の長期記憶があります。海馬は短期記憶から長期記憶へと情報をつなぎ、記憶を仕分ける器官です。もともと壊れやすく繊細な器官ですが、アルツハイマー型認知症になって海馬が萎縮すると、もの忘れが激しくなるなど記憶障害の症状が現れるようになります。
しかし、先述した研究結果の通り、トトリゴネンは海馬を脳内のアミロイドβの悪影響から保護する効果を持つことがわかりました。トリゴネンが海馬のニューロン喪失を軽減できたのは、酸化ストレスや炎症を抑制し、ミトコンドリアの完全性を維持する効果があるからだといいます。
トリゴネンを配合したコーヒーとは?
コーヒーのトリゴネンには、認知症の中でもアルツハイマー型認知症を予防・抑制する効果が期待できます。ところが、トリゴネンはカフェインとは異なり、熱に弱いのが大きな特徴です。一般的にコーヒー生豆を焙煎するときには180~200℃の温度で投入し、しっかり風味を与えるために高温で焙煎し続けて、およそ190℃前後の温度で焙煎を終了します。そのため、高温焙煎したコーヒーにはほとんどトリゴネンが含まれていません。
アルツハイマー型認知症の予防と改善のためにコーヒーを飲もうとするのであれば、低温焙煎されたコーヒーを選ぶかトリゴネンを加えた特別なコーヒーを選ぶ必要があるでしょう。
最近では、コーヒーの生豆から抽出する「グリーンコーヒー豆エキス」を商品化した製品も多く販売されています。まだ研究過程ではありますが、グリーンコーヒー豆エキスが含まれているサプリメントを試してみても良いかもしれません。
コーヒーでアルツハイマー型認知症を予防しよう
トリゴネンにはアルツハイマー型認知症だけではなく、単なるもの忘れを予防する効果もあるとされているため、「最近、もの忘れがひどくて困る」とお悩みの方にもおすすめの成分です。
アルツハイマー型認知症は誰もがなり得る病気ですから、トリゴネンを含んだコーヒーの開発や研究が積極的に進むことを祈るばかりです。
参照サイトURL: