「〇〇・コーヒー・ロースターズ」なんてお店の名前は聞いたことありませんか?

これは自社でコーヒーの焙煎(ロースト)を行なっているお店でよく使用される名前ですが、要は「自家焙煎」のこと。「自家焙煎」と聞くと、なんだかコダワリの美味しいコーヒーが飲めそうな気がしますよね。

 

「焙煎」は、コーヒーを飲むのに必要不可欠な工程です。熱を加えるというのは知っているけど、なぜ焙煎をするのか、焙煎とはなんなのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。

今回は、コーヒーの「焙煎とは一体なんなのか?」を解説します。

 

コーヒー豆焙煎(ロースト)の歴史

こちらの記事でも触れていますが、コーヒーが飲まれるようになった起源はエチオピアにあると言われています。当初はコーヒーは焙煎せず、水に加えて煮出したり、砕いたものを団子状にして食用にしたりしていたそうです。

 

諸説ありますが13世紀ごろにコーヒーの焙煎は始まったとされています。(コーヒーの歴史)

18世紀ごろにはヨーロッパにも伝わり、焙煎は主婦の仕事として料理するのと同じ感覚で広まっていたそうです。19世紀ごろから焙煎の職業化が進み、焙煎工場などができるものの、まだ効率化はなされておらず大量生産をするには至っていませんでした。

 

20世紀に入ると、焙煎が工業としての発達を見せます。それまでは直火式(豆を入れた容器に直接火にかける方法)が主流だったのを、熱風式(熱源とコーヒー豆容器を離して配置し、高温の熱風で焙煎を行う)の出現により短時間での焙煎が可能になりました。

近年ではこの短時間焙煎を利用し、お店で注文が入ってから焙煎を行うコーヒーショップなども出てきました。焙煎技術の進歩は、コーヒーの楽しみをより一般客へと伝えやすい形にするという役割を担っているとも言えそうです。

 

 

そもそも、焙煎とはなにか?

広辞苑によると、焙煎とは

ばい‐せん【焙煎】
(コーヒーの豆を)火熱で煎(い)ること。

とのこと。「煎る」とは、水などを用いず、乾いたまま火にかけて炒めることを指します。つまり、コーヒーの生豆をなんらかの方法で熱するというシンプルな工程です。

 

ただし、焙煎はコーヒーの苦味や香り、酸味といった味覚に大きな影響を与える工程です。焙煎を行う「焙煎士」は、焙煎の温度や時間、気圧などを細かく調整しながら味付けを決める、いわばコーヒーのプロデューサーのような役割を担っているのです。

 

焙煎でコーヒー豆には何が起きているのか

前述の通り、焙煎とはコーヒー豆を加熱する工程です。コーヒーの生豆を加熱することで、もともと持っている様々な物質が、熱エネルギー(要は、高温。)によって化学反応を起こし、別の物質へと変化します。

 

 

コーヒーの味覚として特徴的な「苦味」は、「メラノイジン」という成分が主とされています。これは、アミノ酸やショ糖類の化学変化によって生じる物質群で、反応が進めば進むほど大きい物質となり、大きければ大きいほど苦味が強くなる傾向があります。

 

またコーヒーの「酸味」は、加熱によってクロロゲン酸類が分解して生じるキナ酸、ショ糖類が分解して生じる酢酸などが司るとされ、焙煎が始まってからこれらは一旦増加するものの、焙煎が進むと分解が進んで減少するため、深煎りにすると酸味は減っていきます。

つまり、コーヒーの苦味や酸味はどちらも熱による化学反応によって作られる味覚なのです。

 

また、これらの反応によってコーヒー豆の内部では(二酸化炭素などの)ガスが発生し、スポンジのような空洞が作られます。この空洞に水分が浸透することで、コーヒーは液体として抽出されやすくなるのです。浅煎りよりも深煎りの豆の方がサイズが大きいのはこのためです。

 

焙煎していないコーヒー豆は無味無臭?

焙煎をしていないコーヒーの生豆は、普段私たちが目にするコーヒー豆とは違った、黄緑色をしています。実は、この生豆はほとんど無味無臭。苦味も少なく、酸味もほとんどなく青臭さが若干ある「豆」の味なのです。(なお、加熱処理等していないという衛生的観点から、生豆をそのまま食べるのは推奨しません。)

 

これが焙煎という加熱行為によって、私たちが普段飲んでいるコーヒーの様々な味が引き出されます。焙煎がコーヒーにとってどれだけ重要な工程なのか、このことからも伺い知れます。

 

焙煎するとカフェインが増える、はウソ?

突然ですが、深煎りのコーヒーはカフェインの量が多いと思っていませんか?

意外にも、これは勘違い。焙煎してもカフェインの量はほとんど変化しないことがわかっています。

 

一般的に「カフェイン=苦味が強い」というイメージがありますが、前述の通りコーヒーの苦味の主成分は「メラノイジン」という成分で、カフェインはコーヒーの苦味を感じる成分の10%程度。したがって、苦いコーヒーだからカフェインが多いとは限らないのです。(ノンカフェイン/デカフェのコーヒーも深煎りだと苦いですからね。)

むしろ、焙煎を進めるとカフェインは少しづつ減少します。ただしカフェイン自体が熱に強い物質なのでそれほど変化はないと考えて良いでしょう。

 

自分の好みの焙煎度合いを見つけよう

正直、コーヒーの味の違いは農園よりも、焙煎度合いで比較した方ががわかりやすいでしょう。浅煎りと深煎りのコーヒーを飲み比べてみると、苦味と酸味の分量、コーヒー自体の質感や重さ(ボディと表現します)などがすぐにわかるでしょう。

 

色々な度合いのコーヒーを飲んでみて、自分の好きなエリアを探してみると、コーヒーの豆などを買うときも大きく好みから外れることは減るでしょう。焙煎度合いについては以下の記事にて触れていますので、こちらも読んでみて下さい。

 

深煎りと浅煎りの違いとは?焙煎度合による味の違いを知る

 

焙煎は、焙煎士の細かな調整によってなされる繊細な作業。自家焙煎のコーヒーなどは、甘みが重視されたり、酸味のフレーバーを前面に出していたりとショップの個性が一番出るところです。ツウになったつもりで、焙煎士がどんな味を表現したかったのかを考えながら飲んでみると、より一層コーヒーを楽しめる……気がします。

 

 

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