紅茶、ウーロン茶、緑茶はすべて同じ茶葉から作られており、発酵の度合いによって色や香り、味が異なるということは、一般によく知られていますよね。では、たとえばアッサムやダージリンが同じ茶葉・同じ発酵度合いの紅茶であるにもかかわらず、銘柄によって風味や色に違いが生まれるのはなぜかをご存知でしょうか?
これは茶葉が生産される産地が大きく関わっているのです。本記事では、紅茶の特徴や味わいの違いについて、生産地とのかかわりから紹介します。
それでは、わかりやすく産地別に紅茶の特徴を紹介してみましょう。
目次
紅茶の銘柄は生産地の名前
まず触れておきたいのが、紅茶の銘柄であるダージリンやアッサム、セイロンのような名前の由来です。
あまり紅茶に詳しくない方は「ヌワラエリヤ」や「ルフナ」と言われても何のことかわからない、ということはありませんか? 紅茶のブランド名かなにかではないかと思われる方もいるかもしれません。
実は紹介した銘柄の名前はすべて地名です。簡単にいうと、コーヒー豆の「ブルーマウンテン」や緑茶の「宇治茶」のように、紅茶も産地がそのままお茶の銘柄の名前になっています。
ダージリンは北インドのヒマラヤ山脈のダージリン地方の紅茶、アッサムは北インドのアッサム地方の紅茶、という感じです。
紅茶の基本的な産地と銘柄
・北インド
北インドの紅茶で有名なのが「ダージリン」と「アッサム」です。このふたつの銘柄が同じ地域で生産されているなら特徴も似ているのかというと、そうではありません。同じ地域内でもれっきとした違いがあるのです。
ダージリンは世界三大紅茶のひとつであり、「マスカットフレーバー」と呼ばれるさわやかな香りが特徴の紅茶。ダージリンで生産されたすべての紅茶がその香りを持っているわけではありませんが、ダージリンの代名詞としてよく知られています。
一般的によく流通している「セカンドフラッシュ」ダージリンは、紅茶の水色が明るいオレンジ色です。
もっと早い時期に摘む「ファーストフラッシュ」は色が薄く、黄色っぽい色みになるのが特徴。こちらは茶葉も青々としており、まるで緑茶のようなさわやかさがあります。
一方アッサムはどうかというと、華やかな赤褐色の水色に、濃厚でコク深い味わいが特徴の紅茶です。紅茶らしい芳醇な香りが魅力で、コクがあるため最もミルクティーに向いているとわれています。
同じ北インドの紅茶でこれだけの違いがあるのは、土地の風土が関係しています。ダージリン地方はヒマラヤ山脈の500~2000mの高地にあり、この土地の紅茶は厳しい寒さに耐えねばならず、生産量も少なめ。
アッサム地方はブラマプトラ川流域に茶畑が広がっています。ダージリン地方に比べるとアッサム地方は平野で茶葉を育てやすく、広大な茶畑を有する土地です。茶葉を育てる環境の違いによって水色や風味に違いが生じるということがわかりますね。
・南インド
南インドでよく知られた銘柄は「ニルギリ」です。ニルギリとは「青い山脈」を意味する言葉だそう。高原にあるこの土地で作られるニルギリは水色が薄いオレンジ色で、すっきりとしたやわらかな味わい。セイロンティーにも似てクセがない紅茶です。
・スリランカ
スリランカといえば「セイロンティー」の産地です。この島で作られる紅茶が、「ディンブラ」「ウバ」「ヌワラエリヤ」など。
セイロンは旧国名で、この島国で生産されるお茶を総称してセイロンティーと呼びます。
同じ島国でもやはり銘柄によって違いがあります。中央山岳地帯の高地を産地とするディンブラは、赤褐色の水色で、マイルドさと渋みをあわせ持っています。
続いて、中央山岳地帯の東側の中高地を産地とするウバは、明るいオレンジ色で「ウバフレーバー」と呼ばれるウバ独特の香りを持っています。世界三大紅茶のひとつでもあり、スリランカ産の紅茶のなかでも抜きんでた特徴を持っています。
ヌワラエリヤは中央山岳地帯の最高地にあります。色はかなり明るいオレンジで薄く、緑茶のようなすっきりとした香りが特徴です。最高地にあるため、生産量は少なく茶葉は大変高価です。
スリランカの紅茶から3種類を紹介しましたが、実はスリランカでは製茶工場が位置する標高によって茶葉にランクを設けているんだとか。標高によって味が変わる証拠であり、標高が高ければそれだけ生産が難しくなるということでもありますね。
・中国
ウーロン茶の国・中国も有名な紅茶の産地です。中国の安徽省祁門県山間部の傾斜地で生産されているのが、世界三大紅茶の「キーマン」です。水色は薄く明るいオレンジ色で、キーマン特有のスモーキーな香りが魅力です。
・ケニア
ケニアの広大な平野で生産されているのが「ケニア」です。水色はアッサムと同じような赤みが強い色で濃く出ます。若葉のフレッシュな香りが人気です。ミルクやレモンなどなんでも合わせやすい紅茶で、ブレンド茶葉としても重宝する銘柄です。
高地であるほど緑茶っぽく、低地になるほど紅茶らしい
このように生産地の風土とあわせて紅茶の特徴を見てみると、標高が高いほど水色が薄くオレンジ色になり、標高が低くなるほど赤みが強い紅茶が多いことに気づきませんか?
スリランカ最高地のヌワラエリヤやヒマラヤ山脈のダージリンは黄色っぽく緑茶に近い味わいで、平野部で生産されたアッサムやケニアなどは赤くコクが深い紅茶。
実はパッと紅茶の色を見ただけで産地の特徴が見えてくるんです。おもしろいですよね!
ざっくりとした法則ですが、あまり産地に詳しくなかったとしても、紅茶の色みを見ただけである程度産地がどんなところか想像できるんです。
さまざまな銘柄の紅茶を飲んでみて、時には「この紅茶はどんなところで作られたのかな?」と考えてみると、紅茶の知識が深まります。
きっともっと紅茶のいろんなことを知りたくなりますよ!