私たちが味わっているコーヒー、じつは重大な危機に陥りかけていることをご存じでしょうか。
その名も「コーヒー2050年問題」と言い、将来、おいしいコーヒーを自由に味わえなくなる恐れがあるのです。
そこでこのコラムでは、コーヒー好きの人たちに関係する「コーヒー2050年問題」の概要と、今抱えている問題、そして私たちにできる応援についてご紹介します。
これからもおいしいコーヒーを味わい続けるため、直面する問題について学んでいきましょう。
もうすぐやってくる「コーヒー2050年問題」とは
出典:キーコーヒー株式会社 コーヒーの2050年問題 直営農園における気候変動適応の取り組み
コーヒー2050年問題とは、世界中で発生している気候変動が原因で、コーヒー生産量が急激に落ち込んでしまう問題のことです。
主に、気候変動の影響を受けて発生する次の影響により、コーヒー栽培が難しくなるといわれています。
- 気温の上昇
- 湿度の上昇
- 降雨量の減少
コーヒーの栽培には「標高」「昼夜の寒暖差」「適度な降雨量」が欠かせません。
気候変動は、各栽培環境を変化させてしまうほか、高温多湿化によって病気がまん延し、コーヒーの栽培を困難にしてしまいます。
特に影響が大きいといわれているのが、コーヒーの原産地として有名な「ブラジル」です。
以下の画像からも分かるように、2050年までに複数あった栽培エリアが大幅に減少すると予想されています。
出典:キーコーヒー株式会社 コーヒーの2050年問題 直営農園における気候変動適応の取り組み
気候変動が進めば、他の栽培国にも大きな打撃を与えてしまいます。
今後もおいしいコーヒーを味わうためにも、今のうちから問題解決に着手することが大切です。
2050年まで耐えられない?コーヒー農場が抱える3つの問題
2050年問題がやってくるまで、あと27年あると思われがちですが、実際には、今現在もコーヒー農場は環境による打撃を受けているのです。
場合によっては2050年を迎える前に大きな問題に発展するかもしれません。
そこで現在、コーヒー農場が抱える3つの問題についてご紹介します。
問題①異常気象による生産量の減少
今現在、世界各国で気候変動による「異常気象」が頻発しています。
例えば、局所的に発生するゲリラ豪雨はもちろん、予想降雨量をはるかに超える大雨、その他気温の上昇など、私たちの生活を脅かす問題が毎年のように発生している状況です。
異常気象を受けてしまうと、コーヒーを含む植物はうまく成長できなくなります。
異常気象が増える分、コーヒーの生産量が減少してしまうため、すでに2050年問題の予兆が始まっているのです。
問題➁コーヒー農場の人材不足
今現在、世界各国でコーヒー農場の人材不足が加速しています。その理由は次のとおりです。
- 都市部への人材流出
- 地方部の人口減少
- コーヒー農場の低賃金化
IT化などが進み、世界中の人々が都市部へと移動。地方の少子高齢化が加速している国も多く、思うようにコーヒー農場に人材を集められていません。
また、コーヒー2050年問題に向けて対策が始まっていますが、研究予算の確保が難しい状況です。目の前にある問題を解決する人とお金を用意できないのです。
問題③サビ病の発生
近年、コーヒー農場は「サビ病」に悩まされています。サビ病とは、糸状菌と呼ばれる菌によって、葉っぱがサビのように変色する病気のことです。
コーヒー農場でサビ病がまん延すると、植物が十分に成長できなくなります。
また、抗菌のために「ファイトアレキシン」という有害物質が生成されるため、商品として販売するのが難しくなってしまうのです。
コーヒー好きにできる応援とは?最新の適応施策を紹介
「今後もコーヒーを美味しく味わいたい」
そう願うコーヒー好きの方に知っておいて欲しいのが、各企業によるコーヒー2050年問題への適応施策です。
3つ企業の適応施策をご紹介します。
ぜひ施策情報をチェックし、コーヒー2050年問題の認知度を広げてみてください。
KEY COFFEE施策①WCRとの協業
出典:KEY COFFEE ― “コーヒーの未来を守る”活動に協力 ―
KEY COFFEEは、2016年5月から、アメリカにあるコーヒー研究機関「WCR」とコーヒー2050年問題の解決に向けた共同研究を開始しました。
この研究では、気候変動による病害に耐えるコーヒー品種の発掘を目的とし、優良品種の栽培試験が行われています。
KEY COFFEE施策②国際品種栽培試験の実施
出典:KEY COFFEE International Multi-location Variety Trial
KEY COFFEEは、現在、強い品種の栽培を生み出すIMLVT(国際品種栽培試験)に取り組んでいます。
IMLVTでは、前述したWCRと協業し、約40種類のコーヒーの苗木を使って優良品種を探す研究を行っています。
耐病性をもつ品種を探すことはもちろん、味を損なわない香味試験も実施。
おいしいコーヒーを末永く生み出すために、日々研究が進められています。
UCCホールディングス株式会社施策①サスティナビリティ教育
出典:UCC サステナビリティ教育受講者数30万人を目指して
2050年問題を知り理解することも大切ですが、普段飲んでいるコーヒーについてどんな問題があるのか、そこから関心を持ってもらうこともとても大切です。
「コーヒーはSDGsの縮図」とも言われるほど、一杯のコーヒーに辿り着くまでのプロセスには気候変動・環境・人権問題など地球規模で解決しなければならない課題が存在します。
UCCでは、世界のコーヒー生産国での実際の取り組みや、消費国日本での取り組みをご紹介しながらSDGsを考えるオンラインセミナーを小学生、中学生、高校生、大学生向けに開催しています。
また、一般の方向けにSDGsセミナー「コーヒーと考えるSDGs」も開催しています。
こちらは入門編は無料、基本編は1,100円(税込)受講することが可能です。
気になる方はこちらからチェックしてみてください。
UCCホールディングス株式会社施策②2040年までにカーボンニュートラルの実現
気候変動は、2050年問題にも大きく関わり、今世界でも大きな課題の1つです。
UCCでは「2040年までにカーボンニュートラルの実現」という目標に向けて、温室効果ガスの削減対応を行っています。
温室効果ガスには、UCCグループの各事業会社からの直接排出(Scope1)、UCCグループの工場・オフィス等での電力使用に伴う間接排出(Scope2)、
及びUCCグループ事業会社以外からの間接排出(Scope3)があります。
その各カテゴリーにおいて、温室効果ガス削減対策の検討を進めています。
個人ではどうしても対策が微々たるもので無視しがちな気候変動問題ですが、UCCのように大きな企業がこのような対策を行っていることに関心を向けることも私たちができる
2050年問題への取り組みだと思っています。
スターバックス コーヒー ジャパン株式会社①環境配慮型店舗の国際国際認証を取得した店舗を展開
出典:スターバックス プレスリリース(2021/11/29)
スターバックスコーヒーでは2021年12月にオープンした「スターバックスコーヒー皇居外苑和田倉噴水公園店」を日本1号店として、環境負荷低減を目的とした
実証実験を行うサスティナビリティ拠点、そして環境配慮型店舗の国際認証を取得したグリーナーストアを展開しています。
2050年問題を理解すると普段私たちができることは環境に配慮したカタチでコーヒーを飲むことだと思います。
その普段の生活の中で、スターバックスを利用する人が沢山いると思いますが、グリーナーストアでは以下のような取り組みをおこなっております。
・使い捨て資材を極力出さないカフェスタイルを提案。持ち帰り時は繰り返し使えるカップの利用を推奨し、店内利用ではマグなどリユースできるドリンクウェアで提供。
・リサイクル素材を積極活用した店内デザインにより、循環性を重視したサードプレイスを実現。キャンバスや漁網のアート、直して長く使い続ける国産材100%の家具や間伐材を使った什器を導入
・出店工事の際に店舗から出た廃棄物の約85%を鉄や紙の原材料としてマテリアルリサイクルへ
・自律分散型水循環システムを開発するWOTAと協業した手洗い可能なクリーンステーションの店内設置や、フード陳列無しなど環境配慮を追求した新オペレーションも検証
→上記の取り込みにより店舗から出る破棄物量の約40%の削減を目指しています。
現在スターバックスでは国内にグリーナーストアは2店舗あります。
▼是非足を運んで、コーヒーについて考えてみてほしいですね。
グリーナーストア1号店 スターバックスコーヒー皇居外苑和田倉噴水公園店
グリーナーストア2号店 スターバックスコーヒー道の駅みのりの郷東金店
おわりに
コーヒーの生産性が落ちてしまう大問題「コーヒー2050年問題」に立ち向かうためには、気候変動を改善する地球温暖化に取り組むこと、そしてコーヒー豆の研究が必要不可欠です。
私たちにできる応援といえば、コーヒー2050年問題について理解し、世界中の人たちに知ってもらうこと。
世界中で認知度が高まれば、研究支援なども増加していくので、この機会にコーヒー2050年問題についてまわりの人たちに広めてみてはいかがでしょうか。