新しい芸術と文化の中心地であるイーストエンドの一画に、若者たちに絶大な人気を誇るコーヒーロースターがあります。
歴史はまだ浅いものの、『Dark Arts Coffee(ダーク・アーツ・コーヒー)』は、人々を惹きつけてやまないオンリーワンな魅力を放つロースタリーです。
本記事では、ロンドンの下町で悪魔の飲み物のように刺激的なコーヒーを提供している、『ダーク・アーツ・コーヒー』をご紹介します。
目次
イーストロンドンで異彩を放つ『Dark Arts Coffee(ダーク・アーツ・コーヒー)』
世界中から最高品質のコーヒー豆を輸入し、完璧なコーヒーを生み出しているダーク・アーツ・コーヒー。彼らが提供しているコーヒーを飲めば、錬金術を駆使したとしか思えない焙煎技術に驚かされるに違いありません。
ロースタリーらしくないコーヒーロースター?
スペシャルティコーヒーを提供する独立系カフェやコーヒーショップが増え、活況を呈しているロンドンのコーヒーシーン。近年、おしゃれなエリアとして注目を集めているイーストエンドもコーヒーショップが林立していますが、その中でも、ダーク・アーツ・コーヒーは唯一無二の存在です。
ハックニー地区のロジナストリートにあるロースタリーに一歩足を踏み込めば、ほかのロースタリーとは異なる雰囲気にすぐに気づくでしょう。焙煎所内にはタトゥーを入れ、髭を貯えた人たちが、忙しそうに立ち働いています。アメリカのバイク文化とオカルトがミックスされた風変わりな内装は、とてもロースタリーとは思えません。
「モダンで洗練されたコーヒーロースターが多いと思うんだけど、それじゃあ自分たちらしさを表現できないことに気づいたんだ。どこにでもあるようなコーヒーロースターを真似てしまうと、詐欺っぽい感じになってしまうからね。」と、経営者のブラッドリー・モリソンさんはとあるインタビューの中で語っています。
『Dark Arts Coffee(ダーク・アーツ・コーヒー)』のはじまり
ダーク・アーツ・コーヒーの歴史は、2013年に開催されたモーターサイクルフェスティバルで、モリソンさんとコリン・ミッチェルさんが出会ったことから始まります。意気投合した彼らは、2014年にダーク・アーツ・コーヒーの前身である「Dark Arts Coffee Roasters」をオープンさせました。当初はバリスタとして働いていたモリソンさんでしたが、お店で提供しているコーヒーが好きではなかったのだとか。
自分に任せてもらえばもっと良い仕事ができると考えた彼は、「仕入先を変えてくれませんか?」と、当時の経営者に持ち掛けます。こうして、ダーク・アーツ・コーヒーは新たなスタートを切ることになりました。2015年には、コーヒーの責任者としてジェイミー・ストラチャンさんが加わり、世界中から厳選した豆を仕入れて、常に新鮮なコーヒーを提供できるよう2ヵ月分づつ自社焙煎を行っています。
季節ごとにおすすめ商品が入れ替わるコーヒーは、豆を挽いていない状態のホールビーンで購入できるほか、注文時にフレンチプレスやエスプレッソマシンなど、好みの淹れ方に合わせて挽いてもらうことも可能。
コーヒーへの愛と情熱は言うまでもなく、大型バイク、ホラー映画、ゴシックアクセサリー、70年代のヒッピー文化など、モリソンさんの好きなモノをギュッと詰め込んだダーク・アーツ・コーヒーには、コーヒーファンはもちろん、ダークな雰囲気を楽しみに訪れる人も多いといいます。
変化し続ける『Dark Arts Coffee(ダーク・アーツ・コーヒー)』
イギリスで人気のコーヒーロースターも、新型コロナウイルスによるロックダウンの影響を免れることはできませんでした。しかしながら、ダーク・アーツ・コーヒーはピンチをチャンスにうまく変えることができたようです。ここでは、どのように彼らが生き残れたかについてご紹介します。
併設のカフェスペースでコーヒーを
多くのコーヒーロースターがカフェを併設しているように、ダーク・アーツ・コーヒーにもカフェスペースが備わっています。週末にのみ営業のカフェ「I Will Kill Again」は、モリソンさんの奥さんであるタリアさんのアイデアにより誕生しました。
地元の食材を使ったベジタリアン、ヴィーガン向けのメニューのほとんどは自家製です。メニューのラインナップは、アボカドのスマッシュトーストとラタトゥイユ、ビーツとザワークラウト、ベイクドオニオンリングを挟んだチョリソパン、スモークパンチェッタなどなど。週末になるとブランチを食べにやってくる若者たちで賑わいを見せていましたが、パンデミックの影響で閉店を余儀なくされます。
ダーク・アーツ・コーヒーによると、「カフェが再オープンすることはありません!」とのこと。カフェのファンにとっては残念なお知らせですが、じつは新たにテイクアウト専用のエスプレッソバーがオープンしました。ロースタリーの小さな一角に設けられたこのエスプレッソバーは毎週土曜日のみ、午前10時から15時まで営業しています。
パンデミックで思わぬ展開へ
パンデミックによる影響でカフェを閉じざる得なくなったダーク・アーツ・コーヒーでしたが、ここ2年でオンラインショップの売上は1,000%増加しました。インターネット販売が予想外に好調だったため、元金属工場を改装した2階建てのロースタリーは大幅に拡張されます。
「ロックダウンの影響でビジネスが思わぬ方向に展開し、対応するのに必死だったよ。注文した商品が24時間以内に届いて、アマゾンよりも優秀だとコメントをもらったときには、スタッフみんなで大喜びしたね。」と、モリソンさんは語っています。
この成功は、巧みなブランディング戦略によってもたらされたものです。モリソンさんいわく、金曜日の夜にはビールを飲みながら作戦会議を開くのだそう。チームワーク抜群のダーク・アーツ・コーヒーは新たにYouTubeチャンネルを設けて、抽出ガイドやインタビューなど視聴者に有益な情報を提供しています。
また、ソーシャルメディアを有効に使う以外にも、イベントやワークショップを開いたり、コーヒー豆と共にオリジナルデザインの商品を販売したりして、着実にファンを増やしていきました。
『Dark Arts Coffee(ダーク・アーツ・コーヒー)』おすすめのコーヒー
ここでは、ダーク・アーツ・コーヒーの商品の一部と日本支店の情報についてご紹介します。
ユニークな名前のコーヒーたち
ダーク・アーツ・コーヒーのコーヒーは、そのユニークな名前でもファンを楽しませてくれます。死後の世界と名付けられた「LIFE AFTER DEATH(ライフ・アフター・デス)」は、精製過程でカフェインが97%除去されているため、カフェイン摂取をできるだけ控えたい人におすすめのデカフェです。インパクトが強い名前のこちらのコロンビア産コーヒーは、爽やかなリンゴの酸味、キャラメルと甘いチョコレートの風味がします。
また、邪視を意味する「EVIL EYE(イービル・アイ)」は、ホンジュラスで生産されたコーヒーで、プラムジャムのような濃厚な口当たりと黒糖のような香りが特徴です。「DRAGON(ドラゴン)」はブラジル産の滑らかな口当たりのコーヒーで、ナッツやキャラメルのような香りと黒ブドウのような酸味を持っています。
コックニー英語で注文してみよう
ダーク・アーツ・コーヒーのあるロンドンの東の地域では、「コックニー英語」と呼ばれる、労働者階級が話す荒っぽい英語が話されています。明治時代の文豪・夏目漱石が英国留学したときに、聞き取れずに苦労したのがこのコックニー訛りの英語です。
コックニー英語にはいくつかルールがあり、You are~をYou is~といったり、My~というべきなのにMe~というなど、文法的に間違った話し方をします。また、大きな特徴としては、「T」や「H」の音を発音しません。ですから、コーヒーを注文したいときには、下記のように発音に注意しましょう。
・Can I get a decaf latte?(キャナイ・ゲッ・ア・デカフェ・ラッ?)
・Hello, Can I have a Flat white?(アロ、キャナイ・アブ・ア・フラ・ワイッ?)
日本語でいうと、いわゆるべらんめえ口調に当たるコックニー英語。「粋に聞こえてカッコイイ!」と、イギリスの若者たちの中には、イーストエンド出身ではないにもかかわらず、コックニー英語を真似て話す人も多いのだそう。ダーク・アーツ・コーヒーに行く機会があれば、ぜひともコックニー英語でコーヒーを注文してみたいですね。
日本でも飲める『Dark Arts Coffee(ダーク・アーツ・コーヒー)』
「ダーク・アーツ・コーヒーのコーヒーを飲んでみたいけど、イーストエンドに行く機会もないし…」という人は、神奈川県三浦郡葉山町にある日本支店『Dark Arts Coffee Japan(ダーク・アーツ・コーヒー・ジャパン)』を訪れてみてはいかがでしょうか?
こちらの店舗は、ヤコポさんマヤさんご夫妻がロンドン在住時に「I WILL KILL AGAIN」の内装を手掛けたことがきっかけとなって、日本に支店を置く運びとなりました。ダーク・アーツ・コーヒー・ジャパンはイーストエンドにある本店同様、バイク文化とオカルトが融合した内装が特徴的です。個性的な店内にはカフェスペースが併設されおり、地元の人々や観光客に人気となっています。
『Dark Arts Coffee Japan』の基本情報
住所)〒240-0113 神奈川県三浦郡葉山町長柄29
営業時間)9:00~18:00(月曜定休)
電話番号)046-895-3151
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