1933年の創業以来、多くの方に親しまれ続けてきた「UCC上島珈琲店」。
コロナ禍で、“どうすればお客様に安心してご来店いただけるか”という課題を乗り越え、『虎の門店』と『京都嵯峨嵐山店』の2店舗を新規オープンしたUCC上島珈琲。withコロナが当たり前になった社会で、時代に合った3密を避けられる設計を重視したという。
天井の高さや排気、席の配置などにこだわった空間が特徴です。今回は、そんな新店舗の魅力をUCCの遠藤敏一さんに詳しくお伺いします!
写真/同社:ブランド推進部 加藤未麗さん
目次
大人を魅了する空間づくりが圧巻のラウンジスタイル「虎ノ門店」
——新しくオープンした『虎ノ門店』の特徴や魅力について、教えてください。
「上島珈琲店」として141店舗目となる虎ノ門店は、オフィス街である虎ノ門という場所柄、ビジネスパーソンのお客様がとても多くご来店されます。そのため、カフェとして過ごしやすい空間であるのはもちろん、仕事にもご利用いただける機能面にも優れた店舗をコンセプトにオープンいたしました。
——具体的には、店内にどのような工夫をされているのですか?
お客様がご来店される際の目的に合わせて席をお選びいただけるように、店内を3種類のゾーンに分けています。通常のカフェスペースである“ライトカフェゾーン”を”、入口に設置。
“ラウンジゾーン”、“コワーキングゾーン”は、仕事をしやすい空間をお探しの方に向けて、個室ブースやPCが利用しやすい席をご用意しています。席は外向きに配置してあるため、お客様同士が顔を合わせることなくお仕事に集中していただけます。また、ゆったり広めのソファーにもお座りいただけるのも、こちらのお店の特徴です。
——個室ブースなどの設置で、全体の席数はこれまでより減少しましたか?
いいえ、逆に席数は増えています。その分、卓数を減らすことで4人席が少なくなり、1~2人席を増やしました。元々3人以上でいらっしゃるお客様が少ないビジネス街ですので、より多くの方にご来店いただけるよう設計しています。
コロナ禍ということもあり、3密を避けて安心できる空間になっていることも、当店の特徴の一つです。実際にご利用いただいた方から、「とても居心地がいい」「仕事がしやすい」と言ったお声もいただいています。
——店舗限定のメニューへのこだわりもお聞かせください。
「虎ノ門店」の限定メニューは、上島珈琲店で初のパフェとしてご提供している「職人のこだわり珈琲パフェ」です。自家製コーヒーゼリーの上に、オリジナルのミルク珈琲アイスとミルク珈琲マカロンをトッピングしたデザートとなっています。
珈琲好きのお客様に大好評のため、多くの店舗でメニュー化いたしました。隠し味に濃厚なドリップコーヒーを使用した「上島珈琲店のビーフカレー」も、当店を含め限られた店舗でしかご提供していないこだわりのフードメニューです。
——まだオープンしたばかりですが、今後どのような店舗を目指していきたいですか?
出店前にコンセプトを相談していた頃は、ビジネスパーソンに向けてより良い空間を提供できる店舗を目指してきました。しかし、オープンしてみるとビジネスユースではないお客様も以外といらっしゃいます。そのため、仕事以外の目的でご来店される方にも満足していただけるようなお店を目指して取り組んでいきたいと思っています。
京都の伝統的な日本家屋を再現!日本の“間(ま)”を感じられる「京都嵯峨嵐山店」
——次に、同じく新店舗の『京都嵯峨嵐山店』のコンセプトについて教えてください。
京都の嵐山に出店するということで、新しく日本家屋を建築いたしました。昔ながらの雰囲気は残しつつも、古すぎるということはない“レトロモダン”なデザインを取り入れています。
また、京都の景観条例にも従い、観光地で浮かないように街とのマッチングにこだわりました。具体的には、暖簾をくぐって入店していただき、店内には玉砂利がひいてある場所もあります。他にも京都ならではの“いけず石”や格子の窓など、細かいところまで京都らしさを演出しています。
——とても素敵な店内ですね。どのようなお客様がよくご来店されますか?
お店の近くにある「渡月橋」を見るために、観光でいらっしゃったお客様が多くご来店されます。嵐山は京都駅から15分で移動できるということもあり、日帰りコースとして人気のスポットです。そのため、休憩の際の立ち寄ってくださるお客様が、「店に入ったらいきなり都会になった…」と感じないように、京都を感じるデザインで統一いたしました。
1~2人でカフェに入る方が多いことを事前にリサーチし、2名席を多めに作っています。オープン当初に様子を伺ったところ、Instagramの撮影スポットもご用意しているため、着物をレンタルした学生さんが多く見受けられました。
——コロナ禍の新規オープンですが、延期するという選択肢はなかったのですか?
コロナウイルスの感染が拡大し始めた頃は、コロナ後に延期するという選択肢もありました。しかし、議論を重ねていく中で、withコロナにあったお店作りに変更して出店する “攻めの姿勢”が大切ではないかという結論になりました。そこで、天井を高くして、排気のパワーを強くするなどの3密を避けた設計を考え、お客様が安心してご来店いただける空間をご提供しています。
——こちらの店舗には、京都ならではの限定メニューがあるそうですね。
食べ歩きがしやすいように筒に入っている「扇ワッフルサンド」が店舗の限定メニューです。ふわふわとした食感のワッフルに濃厚なバニラアイスと季節のコンフィチュールを挟み込んだ見た目でも楽しめるデザートです。ドリンクメニューでは、シルキーな舌触りのコーヒーにきめが細かい泡を添えている「アイスブリューコーヒー」をご提供しています。こちらも、一部の店舗限定の商品となっています。また、3~5月中旬までの限定メニューだった「宇治玉露のミルク珈琲」も先行発売しました。
——抹茶とコーヒーのコラボレーションはとても珍しいですね。
たしかに、抹茶かコーヒーどちらかをミルクとブレンドしたドリンクが、一般的ですね。上島珈琲店は、ミルクコーヒーの機関限定メニューを2か月に1回出しています。「宇治玉露のミルク珈琲」もその一つです。現在始まっている「オレンジミルクコーヒー」は、令和元年に“過去の期間限定ミルクコーヒーで復活して欲しいドリンク”について、お客様にアンケートとった際に1位になった商品なので、ぜひ実際に味わってみてほしいです。笑
創業から目指し続けてきた“大人のための珈琲店”
——「上島珈琲店」が大切にしているコンセプトを改めてお聞かせください。
「上島珈琲店」は、日本の喫茶文化とともに成長を続けながらこれまで多くの方にご来店いただきました。創業当初の懐かしくも失われつつある喫茶文化を大事にして、現代・未来に伝えていくという想いを込めて、 “大人のための珈琲店”というコンセプトを大切にしています。
銅の配合が多いドリンクカップを使用していることも、幅広い方にコーヒーの美味しい楽しみ方を伝えたいというこだわりから生まれた発想です。
——ドリンクカップにもこだわりをもたれているのですね。
もちろん“珈琲店”なので、カップだけではなく珈琲にも力を入れています。その中でも上島珈琲店ならではのこだわりは、“ネルドリップ”という抽出方法です。
布ドリップとも言われ、フランネルという織物を使用することによって、通常使用されているペーパードリップよりもコクのあるコーヒーが出来上がります。また、まろやかで甘みが出て雑味がない味わいが特徴です。紙のフィルターを使用しないので、エコの観点でも注目されています。
——ネルドリップは、手間のかかる難易度の高い抽出方法ですが、何か工夫されていることはありますか。
洗練された職人でないと抽出できない製法でしたが、創業者が何とか一般の方にもお届けしたいという想いから機械化に取り組みました。
現在は、一部店舗を除いてすべての店舗に“ネルドリップ”で抽出できるマシンが導入されています。また、ミルクで割ることで薄くなってしまうという問題を解決するために、新たに“ダブルネルドリップ”という抽出方法を開発しました。こちらは、“ネルドリップ”を2回抽出する上島珈琲独自の技術ですので、ぜひ味わっていただきたいと思います。
——これまで培われてきた技術をベースに、今後はどのような展望を描かれているのですか。
コンセプトの由来にもなっている古き良き文化を守りながら、お客様にもっと満足いただけるメニューや空間を提供するために、新しいものを取り入れていくことです。上島珈琲店は規模が大きい会社ですが、保守的な部分を大切にしつつ、アグレッシブな部分を併せ持っています。
例えば、期間限定のミルクコーヒーで“ボルチーニ茸”が商品化されたことがありました。正直、「ここまで来たか…」と思いましたが、すごく香りがよくお客様にもご好評いただきました。
今後もお客様が喜ぶものを追求するためなら、どんどん攻めの姿勢で取り組んでいきたいと考えています。
上島珈琲店の魅力は“商品・空間・人”へのこだわりから生まれる!
——上島珈琲店が掲げるコンセプトを実現するうえで大切にされていることはありますか。
私たちが大切にしているのは、お客様にご満足いただく“商品・空間・人”をご提供することです。先ほどお話した美味しいコーヒーの抽出方法である“ネルドリップ”など商品だけでなく、居心地のいいお店創りのために空間にもこだわっています。
全店で心掛けていることは、居心地の良さを追求してお客様にゆっくり過ごしていただける演出です。店内BGMは良質なスピーカーでJAZZのチャンネルを流し、リラックスした空間を創ることもこだわりの一つです。「京都嵯峨嵐山店」では、漆塗りしたスピーカーを設置して視覚的にも楽しんでいただける工夫を凝らしています。
——ぜひ生で拝見したいです。店舗ごとに空間演出は変えているのですか。
多くの店舗でコンセプトやデザインは統一されています。しかし、一部の特別店舗”では、お店ごとにテーマやコンセプトに基づいて、全体がデザインされています。例えば、『虎ノ門店』ですと家具にこだわっていて、ブースや2段になっているテーブルはすべて特注です。他にも本社がある御成門の『No.11』や渋谷にある『REAL DRIP COFFEE No.12 by上島珈琲店』が独自のテーマで店内をデザインしています。
——“人”に関してのこだわりや大事にされている想いをお聞かせください。
接客業の世界では、どのお店でも当たり前ですが、より多くの方に常連になっていただくということを目標にしています。お客様に、何度も足を運んでいただくためには、人の差別化を図らなければなりません。
そのために研修プログラムを充実させ、上島珈琲店自体のロイヤリティを高める取り組みを行っています。実際、本部にお客様から接客に関するご好評の声が数多く届くようになりました。
——具体的には、どのような研修内容なのですか。
一人ひとりのお客様に寄り添える接客を目指していただくために、マニュアルだけでなく臨機応変な対応が出来るような研修内容になっています。
お客様に何度も足を運んでいただくために必要なことは、元気なご挨拶を始め、どんなものを食べているかを覚えることや何気ないお話をすることです。大げさなことをするわけではなく、本当に些細なきっかけが大切だと考えています。研修や日頃の業務を通して、ご来店される方がまた来たいと感じるきっかけを作ることができるスタッフになっていただきたいと思います。
——採用時にも、そういったホスピタリティは重要なポイントになりそうですね。
そうですね。相手の立場にたって物事を考えられる方はとても魅力的です。そのうえで、「上島珈琲店の商品が好き」という方や「人と接することが好き」という方と一緒に働きたいと思っています。
そして、お店のコンセプトや大事にしていることに対して、ヤリガイや熱意を感じてくれる人であれば、さらに嬉しいです。お客様に寄り添って、一緒により良い“商品・空間・人”をご提供していきたいと考えています。
——今後も、「上島珈琲店」ならではのこだわりで、お客様の過ごしやすい空間を提供し続けてください。本日はありがとうございました!
“Good Coffee”で、お客様はもちろん働く人も“Good Smile”に!
お客様にご満足いただくために、古き良き時代と、新しい価値観を柔軟に取り入れている「上島珈琲店」。UCCグループ全体の共通言語として「カップから農園まで(Cup to Seed)」という言葉があります。それは、カップ(珈琲)がお客様の口に注がれるまで責任をもつという意志の表れです。
栽培する方や携わってきた方のバトンを繋ぎ続けて、想いが詰まった至極の一杯を提供する。つまり、上島珈琲店はアンカーになります。
その店舗で働くスタッフは、一人ひとりのお客様に寄り添い、マニュアルではない真心のこもった接客を大切にしています。だから店内は、いつも笑顔でいっぱいなんです。
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インタビューを終えて、「上島珈琲店」では、“商品・空間・人”をとても大切にしていることが伝わってきました。
飲食店という業界に全てに通じると思うのですが、「食」の文化の存在意義や飲食で働くことの楽しさや喜びを教わった気がします。
CAFENDでは、「飲食店で働く」を応援しています。
採用をおこなっている店舗様には特別なご案内をさせていただいているので、お気軽にお問い合わせください。