多方面からリスペクトされるイタリアンのトップシェフ奥田政行さんと、日本のコーヒー界を進歩させたスペシャルティコーヒーロースターのオーソリティー岡内賢治さん。二人のレジェンドが出逢い、開催されたコラボイベント「レジェンドたちの味覚流儀」レポートの後編です。

 

丁寧に抽出された水出しコーヒーとイタリアンのペアリングに驚きの連続だった前編に続き、ここからの後編では、アクセントとして、主役として、お料理そのものにコーヒーを使ったメニューが登場します。

イタリアン大好き!コーヒー大好き!ならば、自然と鼻息も荒くなる魅惑のディナーコース後半をお楽しみください。

 

前編はこちら▶▶▶ URL

ドライ & ウェットの質感に翻弄される♡

4皿目:洋ナシとセロリの棒切りにのせたオマール海老にエチオピア ゴディティをはりつけて

コーヒーとのペアリングは3皿目で終了。ここからは主役として、調味料として、お料理の中にコーヒーが登場します。

「コーヒーをフルコースに取り入れたのは今回が初めて」という奥田シェフも、一番しっくりきたと絶賛のひと皿がこちら。

粗めに粉砕したコーヒーの苦みで、オマール海老をいただく感覚が新鮮。エチオピア ゴディティ豆の苦みと酸味があることで、オマール海老の甘みを引き立てます。

 

また、ドライなコーヒー豆とウェットなオマール海老という質感のコントラストも味わいのひとつに。さらに、旨味でいっぱいのお口の中に、いきなり瑞々しさをもたらしてくれる洋なしとセロリのつけ合わせ。いい意味で裏切られました。悪い男にだまされたけど、いい夢だった・・・って、こんな感覚なのかも知れないな・・・なんてことを考えながら、次のお皿へ。

 

焼き畑の香りをコーヒーで再現

5皿目:庄内豚のグリルと藤沢カブに散らしたパナマ コトワダンカン

豚肉のコクと旨味、カブとコーヒーの食感を楽しむひと皿。お肉とコーヒーの相性のよさに驚きます。

「焼き畑で育てられたカブを使用しているので、お料理そのものに焼き畑の香りを移したかった。今までコーヒーでやったら美味しいなと考えながら、十数年間やれずにいたんです。この豆だからできたという感じがする」と奥田シェフ。

 

奥田シェフにそこまで言わしめたコーヒーは、パナマのコトワダンカンという大きな農園の、ほのかにベリー系の酸味があるコーヒー豆。

打合せの際には、岡内さんが持ち込んだ十数種類の豆を、奥田シェフがひとつひとつ香りを嗅いで、噛んで食べるということを繰り返しながら、僅かな時間でレシピができあがったのだそう。

その様子を岡内さんは「手品を見ているような衝撃だった」と話します。

 

コーヒーが持つ調味料としての可能性

6皿目:コーヒーのリゾットと尾花沢牛のコンフィ コロンビア サマニエゴ深煎り

極めてシンプルなカボチャのリゾットに、粉砕したコロンビア サマニエゴの深煎りコーヒー豆が散らされています。奥田シェフ曰く「なんの芸もないカボチャのリゾット」(笑)。というのも、コーヒーの魅力を感じるために、極力までリゾットの味付けを控えたから。

信じられないくらい柔らかな牛肉とともに口へ運べば、牛肉の旨味が出汁の役割を果たし、芳醇さはさらなる広がりをみせます。

 

私個人的には、時々やってくる大きなコーヒーの塊が妙にうれしくて。カリッと噛んだ瞬間に、サマニエゴの香ばしさが鼻からフワッと抜けていくのです。

 

今回の勝負料理! 椎茸と岡内さんのバトル

7皿目:お魚のムースとモッツァレラを詰めた椎茸のルワンダ コアカムカンザのパン揚げ

今回の勝負料理でございます。

椎茸にモッツァレラチーズを詰めて、魚のムースで覆ってコロッケに。そこで使用するのがコーヒー入りのパン粉。

椎茸とコーヒーは、香りも似ていて相性がいい! サクサクふわふわモチモチと、様々な食感と香り、もう、どう食べても美味しい! 美味しい以外の言葉が見つかりません。

 

何が勝負かって?

実は岡内さん、椎茸が苦手。というかキライ。というか大キライ。では、ここでチャレンジしていただきましょう。私の席へどうぞ!

椎茸を前に、何やら動きがかたくなる岡内さん。

はい、どうですか?

「美味しいよ。これ、美味しい!」

岡内さんが椎茸を食べているだけでも驚きですが、美味しいが出ました。

詳しく聞いてみると「椎茸の香りもあるけど、コーヒーの香りやほかの味もあってとにかく上品で優しい。だからって、ほかの椎茸料理も食べられるかと言ったら別の話だけどね(笑)」とのこと。

実は、他にも椎茸苦手! という方が数名いらっしゃったのですが、みなさん完食されておりましたよ。コーヒー万歳!

 

濃厚な肉の甘みに、コーヒーという選択肢

8皿目:ケニア ガクイ深煎りを練り込んだパッパルデッレとラグーソース

そろそろお腹が限界です・・・が、美味しい上に、未だ知らないお料理がどんどん運ばれてくるので、手からカトラリーを放すことができません。

そんな中、運ばれてきたのは、コーヒーを練り込んだパスタに赤ワインで煮ほぐした和牛のラグーソースを添えたひと皿。カスカラもトッピングされています。

(※カスカラについては、前編のウエルカムドリンクの解説をご覧ください。)

 

麺、もっちもち。お肉、甘みと旨味がとっても濃厚。というか、甘みと旨味のかたまりです。にも関わらず、一口ごとにフワッとコーヒーの香ばしさもしっかり。

さらに、カスカラチェリーの軽やかな酸味と甘みで、重たさを感じる暇もなく、ぺろりと完食。コーヒーの底力を見せつけられました。

 

目指すのは、料理の後ろに背景が見えること

ドルチェ:エチオピア イルガチェフェの香りをうつしたパンナコッタと
オリジナルブレンドコーヒー「YAMAGATA」

とかなんとか言ってるうちに、別腹タイム。

お楽しみのドルチェは、エチオピア イルガチェフェの味を染みこませたパンナコッタです。合わせて用意されたのは、今日のお料理に使用したコーヒー豆だけを使って、岡内さんがブレンドした本日限定のオリジナルコーヒー「YAMAGATA」。

 

ブレンドコーヒーについて「山形の雄大な自然をイメージした。というかベストを尽くしたら、結果的にそうなったと表現した方がいいかも」と岡内さん。

YAMAGATA」を飲んだ奥田シェフは、「雨上がりの月山がアルプスのように眼に映る6月の月山の風景が浮かんだ。まさにどこまでも視界が広がるような透き通っていてキリッとした味」と表現されました。

 

「料理の後ろに風景が見えるような、素材にありがとうと言いたくなるような料理を目指している」という奥田シェフの考えに、見事にフィットするコーヒーは、パンナコッタにしっとりと寄りそうようでした。

 

素材を“挽きたてる”コーヒーの魅力

途中、お誕生日のお客様をみんなでお祝いしたり、岡内さんのドリップ実演や、パナマ ゲイシャ種のコーヒー豆争奪じゃんけん大会が開催されたりと、盛りだくさんアットホームな数時間。予定より1時間延長という長丁場でありながら、全く気にさせないどころか「終わってしまうの、さみしいな」とすら感じる時間もこれにて終了です。

 

「コーヒーが必ず活きていること、コーヒーが主役の料理だということを食べてすぐに感じる“味”ではなく、“味わい”にしたことで、コーヒーがいぶし銀のように素材を“挽きたてる”ことを大切にした」という奥田シェフの言葉通り、時を経て「あの鼻から抜ける香りよかったなー」なんて思い出すだけでも幸せな時間。

 

そして、今回のイベントを通して、コーヒーには飲む以外にもたくさんの味わい方があるということが証明されました。これは、いちコーヒー好きとしてもうれしいですね。

ごちそうさまでした!

 

 

取材協力

アル・ケッチァーノ http://www.alchecciano.com

カフェ ファソン http://cafe-facon.com

 

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