フランスの陶磁器の歩みは、ロワイヤル・リモージュ抜きには語れません。ロワイヤル・リモージュは、フランスの陶磁器の発展に大きく貢献した食器ブランドです。
本記事では、ロワイヤル・リモージュの歴史と特徴について詳しくご紹介します。
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目次
由緒あるフランスの名窯「ロワイヤル・リモージュ」
フランスの磁器製造の歴史にその名を刻むリモージュの街。焼きものの街で誕生した食器ブランド「ロイヤル・リモージュ」の歴史をまとめてみました。
焼きものの街「リモージュ」の成り立ち
17世紀末、フランスでは東洋の白磁への憧れから、軟質磁器の製造が行われるようになりました。軟質磁器とは、ガラス粉末に石灰や白土を混ぜて低温焼成した白色陶器のことです。マルコポーロによって紹介された東洋の磁器は「白い宝石」と呼ばれ、ヨーロッパ各国の王侯貴族が夢中になって集めたといいます。そんな東洋の磁器に似せて作られた軟質磁器は、それまでフランスで製造されていたファイアンス焼きよりも、はるかに硬質磁器に近い磁器でした。
ところが、18世紀初め、ドイツの小国ザクセンのマイセン窯がヨーロッパで初めて硬質磁器の焼成に成功することに。芸術の中心地を自負していたフランスは、なんとかしてマイセンの硬質磁器製法を我が物にしようと躍起になります。しかし、硬質磁器を作るのに欠かせない鉱物「カオリン」が、フランス国内ではまだ見つかっていませんでした。
フランスの陶磁器界に転機が訪れたのは、マイセン窯が硬質磁器焼成に成功してから約60年後のことでした。1768年、とある女性がリムーザン地方のリモージュ近郊で、白くて粘土のように柔らかい土を偶然見つけます。その女性は白い土を布地の漂白剤として使用していたようですが、後に調べた結果、カオリンであることが判明しました。こうして硬質磁器の原料が発見されると、軟質磁器のセーブル焼きで有名だったセーブル王立磁器製作所に運ばれ、使用されることになります。
しかし、当時のリムーザン知事は、地元で発見されたカオリンで硬質磁器を製造することを思い立ち、1771年に実業家のグレル兄弟の援助を得て磁器工場を設立しました。以来、リモージュの街は、次々と新しい製陶所ができ、華麗な硬質磁器を作る焼き物の街としてその名を馳せるようになります。
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ロワイヤル・リモージュの誕生
1737年に設立されたリモージュ窯(後のロワイヤル・リモージュ)は、リモージュで発見されたカオリンを使って硬質磁器の製造を始めました。それまでステンドグラスやエマイユと呼ばれる七宝焼きを作っていたリモージュ窯は、豊かな経験と優れた技術で、瞬く間に高品質の硬質磁器を焼成するようになります。
1774年にアルトワ伯爵(後のフランス国王シャルル10世)の庇護下に入ったリモージュ窯陶製所は、王室御用達窯に認定されます。こうして、晴れてロワイヤル・リモージュになったリモージュ窯は、食器の裏側に「リモージュ」と刻印することを許された最初の窯となりました。
ちなみに日本ではロワイヤル・リモージュとして知られていますが、ブランドの正式名称は「アンシェンヌ・マニュファクトゥア・ロワイヤル・ド・リモージュ」です。この名前からも、歴史あるロワイヤル・リモージュが、由緒正しい工房、誇るべき歴史を持つ工房だということがわかるのではないでしょうか。
美術館コレクションを復刻させるロワイヤル・リモージュ
ここでは、ロワイヤル・リモージュのユニークな特徴をご紹介します。
ロワイヤル・リモージュの特徴
ロワイヤル・リモージュは、白磁の質を追求するだけにとどまらず、優美で色彩豊かな芸術性の高い磁器を製造していきました。こうして、18世紀に花開いたロワイヤル・リモージュは、その後も衰退することなく、19世紀には黄金期を迎えます。
フランス国内生産、手作業による磁器製造にこだわったロワイヤル・リモージュは、1986年にフランスの高級食器ブランド「ベルナルド」の傘下に入ることになりました。そんなロワイヤル・リモージュの大きな特徴は、美術館所蔵の18、19世紀の作品の公式復刻版を製造しているという点です。
世界各国の美術館に収蔵されている磁器は、歴史的な価値はもちろん、美術品や芸術品としての価値が高いものばかり。美術館と連携しているロワイヤル・リモージュは、高い陶製技術を駆使して過去の作品を現在に蘇らせ、いまを生きるわたしたちの手元に届けてくれる食器ブランドです。
マリー・アントワネットが愛した食器を復刻
フランスの超高級食器ブランド「セーヴル」といえば、フランスを代表する名窯です。少量生産のため希少性が高いセーヴルの作品は、フランス国外に流出することはほぼありません。しかし、高嶺の花であるセーヴル焼きも、ロワイヤル・リモージュの復刻版なら手が届くのではないでしょうか。
1781年、マリー・アントワネット王妃は、300点もの食器を王立セーヴル磁器製作所に注文しました。その中でも、彼女が一番好きな花である青い矢車菊が描かれた食器セットは、ヴェルサイユ宮殿の庭に作られた「プチ・トリアノン宮」で使用するために作らせた食器だったといいます。
セーヴル焼きの可憐な矢車菊の食器は、1782年6月、プチ・トリアノン宮を訪れたロシア皇太子夫妻に夜食をふるまった際に使用されました。現在、そのとき使用された食器は、ベルサイユ宮殿とルーブル美術館に展示されています。しかし、ロワイヤル・リモージュは、この矢車菊が描かれたマリー・アントワネット愛用の食器を復刻しました。
矢車菊をこよなく愛したマリー・アントワネット王妃は、1793年に37歳の若さで断頭台の露と消えました。一説によると、ガラの悪い靴屋に引き取られたマリー・アントワネットの息子ルイ17世は、母親の死後も彼女が大好きだった矢車菊を摘んでは、健気に幽閉部屋の前に届けていたそうです。
ロワイヤル・リモージュの復刻版「マリー・アントワネット」を手に取れば、フランス絶対王政の華やかな時代と、その終焉に思いを馳せることができるのではないでしょうか。
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おわりに
18世紀や19世紀に製造された磁器はアンティークの域を超えた美術品に近いため、美術館でしかお目にかかれない作品がたくさんあります。しかし、ロワイヤル・リモージュが製造する公式復刻版の磁器なら、憧れの作品を手に入れることができるでしょう。現在、ベルナルドの公式サイトから、ロワイヤル・リモージュの復刻版「マリー・アントワネット」を購入できます。
参照サイトURL:https://www.bernardaud.com/jp/jp