【SOCIAL GOOD ROASTERS(ソーシャル グッド ロースターズ)千代田】(以下:SGRと表記)は、ハンディキャップのあるバリスタや焙煎士が活躍しているコーヒースタンド。
福祉とコーヒーという一見、不思議な関係ですが、Coffee for Human『人のための珈琲』という理念をカタチにするために誕生しました。
今回、SGRを運営する一般社団法人ビーンズ代表の坂野拓海さんと、現場に携わる成田友彦さんにお話を伺いました。
目次
『福祉×コーヒー』を始めたきっかけ
ーー福祉施設として、なぜコーヒースタンドに着目したのかお聞かせください。
坂野さん:一般社団法人ビーンズは、さまざまな福祉施設を運営する会社です。障がい者向けの住宅はもちろんの事、「人を活かせる仕事を作る」という観点から花屋や家具屋などの運営も行なっています。
次はどんな仕事環境を作ろうかと考えていたときに、バリスタの方との出会いがありました。
「コーヒーそのものだけではなく、コーヒーを通して人とコミュニケーションを取り、その人が幸せになるきっかけが作りたい。仕入れの面もフェアトレードがあり、社会性がある。」
そんな話を聞き、障がい者の方も同じ気持ちになってもらえるのでは?と感じたんです。そこから3ヶ月で、SGRを立ち上げました。
ーー前職は何をやられていたんですか?
坂野さん:元々は企業の経営コンサルだったんですよ。たまたま人事異動で障がい者の採用担当になったのが、福祉に触れるきっかけでした。
30歳くらいまでは会社員をしながらボランティアをやっていて、次第に福祉の世界にのめりこんでいったという感じです。
『SGRの役目』個性を活かして活躍できる環境を提供する
ーーどのような障がいを持った方がいるのでしょうか?
坂野さん:施設によって変わりますが、SGRでは主に「精神障害の方」、「発達障害の方」、「知的障害の方」を受け入れています。見た目でわからないハンデを持った方が多いです。
自分の個性を発揮しながら活躍できる環境なので、20代の若い方~ご高齢の方まで幅広く働いています。
ーー利用者さんの仕事内容は共通しているのでしょうか。
坂野さん:障がいによって仕事内容を分けたりはしません。
人と接するのは苦手だという方には、裏方の作業をしてもらったり。
焙煎をやってみたいという方には指導したり……この辺りは自分の個性を活かす、という点で健常者の方と何も変わりません。
自分の個性を活かせる場というのが福祉施設なので、その方ができることを一緒に探しています。
ーー今ハンデのある方は何人くらい働いていますか?
成田さん:20人弱です。1日に10〜15人くらいです。
ーーコーヒーのお仕事以外にどのようなサポートをしていますか?
成田さん:個別支援計画を作って目標を決め、利用者さんがSGRを通して成長する手伝いをしています。
サービス管理責任者が面談しながら、目標に向けてフィードバックをしています。
また、コーヒーを教えること自体も支援に繋がっています。
例えば「豆を計る、数字を見れるようになった」という些細な仕事も、利用者さんにとって社会に出たときに役立つ要素の一つです。
一般のコーヒー屋さんがやらない視点で成長を見守り、新しい切り出し方で支援に取り組んでいます。
ーー卒業もあるのでしょうか。
成田さん:あります。就職する人や、新たな道へ進む人など、卒業の形も様々です。
卒業しなきゃいけないわけでもないし、本人が決めることが大切です。
私たちは、その中でいろいろな道筋を提案して支援を行なっています。他の支援機関とも連携して会議も行ないながら、その方の方向性を固めていきます。もちろん、一度卒業してまた戻ってきても構いません。
こちらから一方的に別の仕事を探してきて、コーヒーじゃないところを斡旋したりはしません。
本人が望めば、親御さんなど周りも考慮しながら話し合いを進めていきます。
ーー作業所に来られる方からは、どのようなやりがいの声がありますか?
成田さん:人によってやりがいを感じる部分は違うので、「キレイにシールを貼れた」「実際にお客さんと喋った」「焙煎が楽しい」「コーヒーの仕事自体が楽しい」など、人それぞれです。
坂野さん:必ずこれをしなきゃいけない!みたいな感じにはしてないんですよ。
コーヒーという繋がりの中でいろいろな仕事を体験してもらって、自分はこれがやりたいんだとか、これが楽しかったという気持ちを0から作っていきたいと思っているからです。
初めて働く人もいれば、再挑戦の場所として使う方もいます。何かを無理やり求めるよりも「やっていくうちに、自分がやりがいを感じるものを見つけましょう」という感じでやっています。SGRはつくりが小さいとはいえ、コーヒーに関わる全ての仕事が詰まっていますから。
『ブレずにその人たちを支えていく』シンボルマークのハシビロコウ
ーーシンボルマークも素敵ですよね。
成田さん:「ハシビロコウ」という鳥をシンボルにしています。
坂野さん:動かない鳥として有名で、相手のタイミングが来るまで待つという姿勢をあらわしています。
コーヒーを扱っていますが、最終的にSGRは「働く人が成長する場」なんですよ。
様々な課題がある中で、自分たちができることを支援しながら、その人たちが成長できるのを待つしかありません。
「相手のタイミングが来るまで待ちましょう」という姿勢を表しています。
ハシビロコウは「不器用」という鳥言葉があるエチオピアの国鳥。
SGRでは、エチオピアのコーヒーも使用しているので親和性はかなり高いと思います。(後付けですが笑)
ーー運営側が動じず、利用者さんを見守るという意味合いもあるのでしょうか。
坂野さん:そうですね。周りの都合で動かしたり、こうならねばならぬということではなく、その人の良きタイミングがあります。
ブレずにその人たちを支えていくという意味が込められています。
ーー店内では、焙煎機も目を引きますね。
坂野さん:焙煎機は僕が選びました。焙煎士の世界大会の公式マシンを使っています。
夢を買いたかったんです。
煙でいぶさないので表面に二酸化炭素やタールが漂着せず、身体にもいい。
日本には3台しかなく、日本大会で優勝した焙煎士が世界大会の練習のために使いにくるんですよ。
本当に焙煎を極めたいと思ったらこれを触るだけで世界に繋がります。
卸しからECサイトまで、幅広い販売チャネル
ーー直接コーヒーを買いにくるお客様が多いのでしょうか。
坂野さん:CSR(Corporate Social Responsibility)に取り組んでいる企業向けの卸しもしています。
成田さん:あとは、一般の方が購入されたり、ECサイトなどいわゆるコーヒー屋さんの販売チャネルで動かしています。
ーーお客様は、福祉施設と知っていて来店される方が多いですか?
成田さん:知らずにフラッと来る方が多いです。神保町界隈はカフェ巡りをされている方が多いんですよ。
Googleでコーヒー屋さんを調べて来店されたり、一般的なカフェと同じような形で来店されます。
HPには記載がありますが、Googleなどでは福祉施設と強く掲載されていないので、知らずに立ち寄られる方が多いです。
もちろん、当店の事をもとから知っていて、目掛けて来てくださる方もいらっしゃいます。
ーー福祉施設と知らずに来たお客様の反応はどうでしょう?
坂野さん:奥で作業をしているので、福祉施設とは分からず、ワークショップのような印象を受けるお客様の方が多いです。
成田さん:お客様にとっては工場見学に近いかもしれません。
坂野さん:一般の方は、福祉施設にいきなり行くという機会ってあまりないですよね。
日常的ではないため福祉と距離があるかなと思います。
ただ、SGRはスタンドとして営業をしています。
普段福祉に接点のない方が来て、障がいというものに触れられる場として、福祉とコーヒーは相性がいいのかなと思います。
スタッフは、コーヒーの新しい姿・可能性に挑戦できる
ーースタッフはどのような仕事をされているのでしょうか。
坂野さん:焙煎やドリップなど、コーヒースタンドの仕事は一通りやるのですが、メインは事業所の利用者さんに仕事を教えています。
成田さん:自分がコーヒーをやるというより、自分が今までやってきたコーヒーの仕事を還元するというイメージです。
坂野さん:福祉支援職は専門でスタッフがいます。ただ、職員の仕事も利用者の仕事も最終的にはあまり分けなくていいかなと思っています。もちろん、SGRという場所を一緒に運営していく中での役割分担は必要ですが。
人によって得意分野が異なるので、長所と短所を補い合いながら、みんなで仕事に取り組む。
面倒見のいい先輩スタッフという意味では、一般のコーヒースタンドと変わりません。教えるのが好きという方に向いている仕事です。
坂野さん:コーヒーの仕事をしていて「スペシャルティコーヒーを作る」だけでは行き詰まります。技術に何かを加えてコーヒーの新しい姿や可能性の発見があると私は思っています。
コーヒーの専門性だけではなく、外に視野を向けながら新しい挑戦もできる場所です。
ーースタッフとして、運営する上で難しく感じる点はありますか?
成田さん:わからないスタッフに教えてあげて、スタッフを育てるという点は一般のコーヒースタンドと同じです。
一般の方よりも個性があるので、できない面が表に出てしまうこともありますが、福祉施設だから難しいとは感じません。
逆に個性がわかりやすいからこそできる支援もあります。
施設を運営していくという面では、他のコーヒー屋さんにない考え方があるので、その難しさはあります。
ただ、人と人との関わりについては、簡単・難しいではないかなと感じています。
誰かを幸せにし、成長していく姿をみて喜びを感じられる
坂野さん:コーヒーの技術はもちろん大切ですが、それ以上に「コーヒーの提供を通じて消費者や生産者を幸せにすること」に喜びを感じられます。
幸せを感じながら、成長の支援を行うのがSGRの仕事です。
成田さん:もちろん、世界大会で使用される焙煎機を使ってみたい!コーヒーの技術を向上させたい!というモチベーションで仕事をするのは良いことです。
しかし、その意識だけではSGRで働くことは難しいです。
勉強して学んだ知識を他の方に還元できる方、そんな方と私たちは働きたいと思っています。
ーー独立支援や店舗の拡大は考えていらっしゃいますか?
坂野さん:人を育てることがやりたい方がいればお任せしたいなと思います。
スタッフ一人一人のキャリアビジョンとして、SGRをもっと活性化させたい!というスタッフは応援したいです。フランチャイズではなくて、純粋に世界観を広げていこうという形でスタッフの支援も行ないます。
成田さん:仕事の選択肢が増えれば、障がいのある方にとってより良い未来が築けると思います。
障がい者も健常者も区別しない滑らかな世界を
ーー福祉の魅力についてお聞かせください。
坂野さん:ビジネス的な面で言うと、福祉の仕事は一つのことだけではなくなんでもできるのが魅力です。住宅を作ったり、花屋をやったりコーヒーをやったり。SGRの内装も全部自分たちで考えて作っています。
利用者側もスタッフも目線は変わらないので、自分が形にしてみたいなと思ったことをこれからも続けたいです。
仕事のやりがいという点でいえば、気持ちがあればなんでもできるし、ムリだと言っていた人ができるようになる、そういった瞬間に立ち会えるのは魅力です。
不器用な自分と上手く付き合う方法をSGRを通して見つけるまで待つし、一緒に方法を見つけていきます。
成田さん:こんなに人のことを見れる仕事はないなと思いました。
苦手な部分にこそ、その人らしさが出ます。SGRは苦手な部分をお互いに補いながら支え合う場。
そういった許容の文化のある環境が素晴らしいと感じます。
自分が何をしたらいいか悩んだときに、たまたまハマるものがあると嬉しいですよね。その行為が好きで突き詰められるという点は、憧れにも近いです。
ーー今後のビジョンについてお聞かせください。
坂野さん:障がい者も健常者も区別する必要のない滑らかな世界を体感できる空間を作りたいなと思っています。
今後、「高齢者も障がい者もみんなが働けるカフェ」という場所づくりを展開していく予定です。
人間って本来自由で、お互いに助け合いながら暮らしていますよね。そういう観点で見ると、障がい者と健常者の区別ってほぼないんですよ。
障がい者の方が選べる仕事の選択肢や、支援のサービスも昔より増えてきていますが、よりたくさんあった方が間口が広がります。まだ世の中で対応ができていないので、私たちが区別のない滑らかな世界を作って、一人一人が自由でその人らしくなれる実証をしていきたいです。
インタビューを終えて
コーヒーを通じたコミュニケーションで喜びを感じられる。
福祉とコーヒーの掛け合わせは不思議でしたが、インタビューを通じ「人のための珈琲」というコンセプトがとてもしっくりきました。
ただコーヒーを作るだけではなく、SGRを通じた繋がりの中でたくさんの体験をし、それぞれの個性を活かせます。
自信もつき、成長のきっかけにもなりますよね。
営業時間中は、実際に利用者さんが仕事をしているので、福祉に触れるきっかけとなります。
ぜひ、SOCIAL GOOD ROASTERS(ソーシャル グッド ロースターズ)千代田に足を運んでみてください。
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【コーヒーという仕事を通じて、関わる人々の在り方や未来にコミットする、焙煎所を併設した福祉作業所でのお仕事です。ウェルフェアトレードによる社会性も魅力的です】