カフェで飲むような、おいしいコーヒーがオフィスでも飲めたら……。そんな願いを可能にするのが、今回お話を伺った『Crack Roaster』が提供するふたつのサービスです。
ミッションとして掲げているのは、「職場を最高の環境へ」。サービスにかける想いや立ち上げの背景について、創業者の小野シンジさんにお話を伺いました。
目次
「出張バリスタ」&「焙煎珈琲のサブスクリプションサービス」の2サービスを提供
──Crack Roasterでは、2種類のサービスを展開していると伺っています。
小野さん(以下、小野):はい、法人への出張バリスタサービス「Crack Barista」、オフィスでプロが焙煎したスペシャリティコーヒーを月替わりで楽しめる「Crack Cafe」の2サービスを提供しています。
──2種類とも法人向けのサービスなんですね。何か理由があるのでしょうか。
小野:大きくふたつあります。ひとつ目は、ビジネスとして見たときに、セールスを伸ばしやすいのは法人向けサービスだろうという現実的な理由ですね。ふたつ目は、僕自身に法人営業の経験があり、「できること」だったからです。ここに、「好きなこと」であるコーヒーを掛け合わせてみようと考えました。
──以前は法人営業をされていたんですね。
小野:新卒で入社した会社で、3年間やっていました。ただ、独立志向は大学1年生の頃から強くて。就職した理由も、会社で色々学びたかったからなんですよ。だから、はじめから3年間で退職しようと心に決めていました。
──では、計画通り退職して、起業された?
小野:ええ。起業自体は初めてのことではなく、大学時代にすでに経験していましたし、サラリーマン時代にも副業で3度立ち上げています。ただ、いずれも失敗に終わってしまった。共通点は、「興味があるもの、好きなもので起業しなかった」ことなんです。
──だから、今回はコーヒーを選ばれたんですね。
小野:どんなビジネスであっても、苦しい時期はやってきます。そのとき、好きなものを仕事にしていなければ、乗り越えられないんじゃないかと思ったんです。思い切ってやらないと、一生このままになってしまう危惧もありました。どうせ失敗するかもしれないのであれば、好きなことで失敗したほうがいいなと。
──そして、「コーヒー×法人」の掛け合わせに。そこから、どのように今のサービスに行きついたのでしょうか。
小野:ビジネスは、三つのFを解決するためのものです。このFは、不満・不平・不公平ですね。法人向けということは、オフィスや職場の課題を解決するサービスです。そこで自分のサラリーマン時代の体験も含めて俯瞰して見てみたところ、楽しく働けていない人の多さに思い至ったんです。
──小野さん自身も、あまり楽しく働けてはいなかった?
小野:正直に言えば、そうですね(笑)。ただ、僕は楽観思考でして、「働かなきゃいけないことに変わりはないんだから、どうせなら楽しいほうがいいよね」とか、「まあ何とかなるよ」という性格のため、サバイブできていたんですが。
この僕の思考や提供したい価値を落とし込んだのが、キャッチコピー「職場を最高の環境へ」です。コーヒーさえあれば楽しく働けると言いたいわけではありません。ただ、楽しく働くためのきっかけを提供できるんじゃないかと思ったんです。
「受動的な存在であるカフェを、オフィスへ」──Crack Barista
──当初から2サービスを提供しているのでしょうか。
小野:いえ、最初は「Crack Barista」です。コーヒーマシンを置いているオフィスは数あれど、カフェで飲むコーヒーとはやっぱり違う。それは味わいもですが、楽しさに関してもだと思ったんです。じゃあ、カフェの楽しさを移動させてみてはどうだろう。そこから、「バリスタがオフィスに行ったらおもしろいのでは」と考えました。
──非日常なものとして、わくわく感があるなと感じます。
小野:常駐型のサービスにすると、企業側のコストもかかってしまいますからね。だからこその出張サービスでもあるんです。出張先の社員さんたちが、テーマパークに遊びに来ているときのような表情になっていただけるのを見ると、非常に嬉しさを感じます。
環境が変わると、精神が変わる。精神が整うと、仕事のパフォーマンスやモチベーションにもいい影響が生まれると思っているんです。
──どのような企業で利用されているのでしょうか。
小野:業種はさまざまですね。質の高いケータリングのようなイメージで、社内イベントや株主総会の懇親会、社内セミナー、スタートアップ企業のピッチイベントなどで使われています。
──反響はいかがですか?
小野:上々ですよ。「Crack Barista」は、クオリティは無論のこと、飲み放題も売りなんです。そのため、人数がはっきりしないイベントの際にも、安心してご利用いただけます。ありがたいとお声をいただくことが多いですね。
──飲み放題、太っ腹ですね。
小野:毎回、飲みきれないほどの豆を持参しています。種類は2種類。さらに、コーヒーが飲めない方用にオーガニックリンゴジュースと紅茶または緑茶もご用意しています。食事は別でご用意いただき、飲みものは当社にお任せいただく。そんなサービスですね。
──どのくらいの価格で利用できるのでしょうか。
小野:2時間39,800円からですね。高いと感じられる方もいると思うのですが、それだけの価値はあると自負しています。価値を感じていただける企業さんと長くお付き合いしておりまして、リピーターが多いんです。
──リピートされることが、サービスの価値を裏付けていますね。
小野:ありがたいですね。「Crack Barista」で利用している豆は、今日取材場所として利用させていただいた「PASSAGE COFFEE」さんのもののみ。安定した品質もリピートに繋がっている理由だと思っています。
──取材場所のご希望には、そういった理由があったんですね。
小野:もとは僕が常連でして(笑)。事業を立ち上げるとき、仕入先をどうしようかとオーナーに相談したところ、快く取引をOKしてくださったんです。サービス開始以来、コーヒーの品質に対するクレームはゼロなんですよ。
<<「Crack Barista」への問い合わせは、こちら>>
提供したいのは、コーヒーと共に作られる雰囲気──Crack Cafe
──もうひとつのサービス、「Crack Cafe」は、どういった経緯で始められたのでしょうか。
小野:「Crack Barista」をご利用いただいている企業から、「月額でコーヒーが飲めるようにしてもらえないか」とお問い合わせをいただいたのがきっかけです。現在、30社以上に導入いただいています。
コーヒーマシンは無償でレンタルしていただけ、月替わりで2種類のスペシャリティコーヒーが1杯100円でお飲みいただけるサービスですね。こちらは、数社のロースターさんとお取引をしておりまして、味の違いを味わっていただけるようにしています。基本は浅煎り、深煎りの2種類です。
──オフィスにコーヒーマシンを入れている企業はあるとお話されていました。他社サービスもあるなかで、「Crack Cafe」の特徴は何でしょうか。
小野:確かな品質の豆が毎月届き、カフェで飲むようなおいしいコーヒーがオフィスで飲めること。当社の掲げる「職場を最高の環境へ」の想いが、社員の方々に伝えられることでしょうか。
働き方への意識の変化や、働き手不足から、社員が会社に求めるものにも変化があると感じています。エンゲージメント向上を掲げる会社が増加しているように感じられるのも、こうした変化の表れでしょう。
──転職への印象も必ずしもネガティブではなくなったように感じます。不満があるなら会社を辞めようと考えるのは、おかしいことではないですよね。
小野:そうなんですよ。会社としては、社員のために何かを還元したい、福利厚生を見直したい。しかし、整備している総務の方は、福利厚生のプロではありません。そんなときの選択肢のひとつとして、「Crack Cafe」を検討していただきたいんです。
「ただおいしいコーヒーを飲めればいい」のではなく、当社の掲げるミッションに共感いただくことで、より本質的な価値もご提供できると思っています。
──職場の環境を、最高のものに。
小野:はい。フィーカやシエスタなど、休憩の文化が日本にも根付けばいいと思っているんですよ。8時間労働1時間休憩だけではなく、午前午後に15分ずつ飲みものでリフレッシュする時間を会社が作ったらいいのに、と。仕事をしながら流し込むように飲むコーヒーではなくて、雑談を挟みながらゆったり飲むコーヒータイム、あるといいと思うんですよね。
──会話が生まれるのもいい効果がありそうです。
小野:良好な人間関係に繋がりますからね。そして、良い人間関係は良い職場環境に必要不可欠ですから。こうした会話は、「豊かな無駄な会話」です。僕は、非効率こそが人生を豊かにすると思っているので、当社のサービスで豊かな無駄な会話を後押ししたい。
実際に、「Crack Barista」も「Crack Cafe」も、導入したところで目に見えて数字に何か変化が生まれるサービスではありませんから。「最近、職場の雰囲気が和やかになったよね」とか、「何となくいい空気になっているね」といった感覚値こそが重要で、当社のサービスのポリシー。そこをご理解いただける企業さんと、末永くお付き合いしたいと思っています。
──そこに価値を見出せるかどうか、ですね。
小野:はい。「とにかく安ければ」を希望されるなら、ほかのサービスのほうがいいでしょうから。会社が何を目的にしたいかが大切ですね。
なお、職場環境を良くしたいのは、窓口となってくださる総務の方に対しても同じです。そのため、「Crack Cafe」は、契約後発注の手間は不要。月初めの営業日の固定時間に届く点も、非常に喜ばれている点なんです。行なっていただくのは、請求書のメールのやり取り1本だけ。ただ、環境への配慮からコップの提供はしていないため、マイカップでご対応いただくなど、会社で対応していただいています。
──最後に、サービスの導入を検討されている方に、一言お願いします。
小野:当社はコーヒーが専門ですが、ベースにあるのは職場環境の整備、福利厚生の改善です。そのため、福利厚生の見直しに悩んでいる企業さんは、相談ベースからお問い合わせください。福利厚生に関わる他企業・サービスの紹介も含め、お力になれることがあると思っています。
取材協力:港区 PASSAGE COFFEE(パッセージコーヒー)
「スペシャルティコーヒーを、特別ではなく、日常へ。」をコンセプトにし、エスプレッソコーヒー、ハンドドリップ、エアロプレスコーヒーを提供。ポットサービスも受け付けています。
Crack Roasterの小野さんは、会社立ち上げ前から通い続ける常連客のひとり。ビジネスマン・ウーマンや観光客に憩いの場を提供する同店は、国籍を問わず多くの人に愛されています。
【店舗情報】
店舗名:PASSAGE COFFEE(パッセージコーヒー)
住所: 東京都港区芝5丁目14-16 大正堂ビル
TEL:03-6809-3353
HP:https://passagecoffee.com/
営業時間/定休日:平日 7:30 - 19:00 土日 9:00 - 19:00 祝日 9:00 - 19:00/不定休