全国の書店の投票で決定される本屋大賞に1年以上選出され、なおも売れ続けている『コーヒーが冷めないうちに』。
トータルの発行部数は60万部を越え、なおも売れ行きは好調です。
本が売れない時代と言われているのにも関らず、この本はなぜ売れたのでしょうか?
ここでは『コーヒーが冷めないうちに』のあらすじや登場人物、読後の感想(あくまでも個人的な感想です)などを書いてご紹介します。ちょっぴり辛口です!
ネタバレありなので、これから何も知らず読みたいという人は、注意してくださいね。
小説『コーヒーが冷めないうちに』あらすじ
ひと気のない――とある路地裏にひっそりと佇む小さな喫茶店『フニクリフニクラ』。
この喫茶店には都市伝説があります。それは、“とあるテーブル”に座ってコーヒーを飲むと「過去」や「未来」に行けるというものです。しかし、それには数々の条件があります。
① 過去や未来で何をしても、元の世界で起きていることを変えることはできない。
② 一度、過去や未来に行った人は二度とタイムトラベルできない。
③ 過去や未来では席から移動できない。
④ 出されたコーヒーが冷めてしまう前に飲み干さないと元の世界に帰れない。
⑤ その喫茶店に訪れた人にしか会うことはできない。
『現実は変わらないかもしれないが、それでも時間を移動したい』
――そう願った4人を題材にしたお話。次項ではメインの登場人物を紹介していきます。
『コーヒーが冷めないうちに』の登場人物
『コーヒーが冷めないうちに』の登場人物は喫茶店で働くスタッフ、常連客、都市伝説を信じて来店する者で構成されています。
時田 流(ときた ながれ)...喫茶店『フニクリフニクラ』のマスター。高身長。無口で無愛想だが、根は優しい男。過去に入院していたことがきっかけで、現在の妻・計と知り合う。
時田 数(ときた かず)...時田 流の従兄弟にあたる。無口な美大生。とある席で彼にコーヒーを淹れてもらうと時間を移動できる。
時田 計(ときた けい)...時田 流の妻。自由奔放な性格で誰からも愛される。心臓に持病があるため定期検診に通っている。
平井 八絵子(ひらい やえこ)...30歳の常連客。髪にカーラーを付けっぱなしというラフなスタイル。性格は勝気。喫茶店の近所でスナックを営む。実家は老舗の旅館で妹が若女将として切り盛りしている。
清川 二美子(きよかわ ふみこ)...28歳のキャリアウーマン。早稲田大学を主席で卒業した才女。IT関係の会社で働く。仕事先で知り合った男性と付き合っている。
房木...喫茶店入り口近くのテーブルを指定席にしている常連客。元・庭師。いつも旅行雑誌を読んでいる。アルツハイマーを患っている。
高竹(こうたけ)...房木の妻。喫茶店の近所の総合病院で看護師をしている。
白いワンピースの女...時間を行き来できるテーブルを陣取る幽霊。彼女が席を立ったときにしかその席には座れない。
4つのメインストーリー(ネタバレ)
『コーヒーが冷めないうちに』は4つのメインテーマがあります。
第1話「恋人」
キャリアもさることながら、誰もが目を引くプロポーションの清川 二美子。彼女はある日、恋人である賀田多 吾郎(かただ ごろう)に「アメリカに行く」と告げられる。吾郎のあまりに突然の告白に、二美子は投げやりな態度を取ってしまうが、後々酷く後悔してしまう。そんなとき喫茶店の“過去に戻れる”という都市伝説を聞いて...
第2話「夫婦」
若年性アルツハイマーを患う房木はいつも傍らに茶封筒を持っていた。聞くと、「妻に渡したい手紙」だと言う。房木は過去に戻りたいが、タイミングが合わず“時間を行き来できるテーブル”になかなか座れない。そんなとき、房木の妻・高竹が手紙のことを知って...
第3話「姉妹」
喫茶店の常連客の平井 八絵子は18歳のとき、家業の旅館を継ぐのを拒み実家を飛び出す。結果、旅館は妹の平井 久美(ひらい くみ)が若女将となる。久美は八絵子に「実家に戻ってきて欲しい」と度々説得を続けるが、毎回はぐらかされていた。そんなある日、久美が交通事故で亡くなったという報せが...
第4話「親子」
時田 計は時田 流の子を身篭っていた。しかし持病の心臓病のため、出産には「死」というリスクが伴なってしまう。生まれてくる子供に一目でも会いたいと思った計は10年後の未来に行くことを決心する...
正直『コーヒーが冷めないうちに』は僕的には、つまらない…(感想)
ここからは、あくまでも個人的感想(しかも超辛目である)になりネタバレもあるので、これから読みたいと思うひとは、ここでストップしていただきたい……。
では、レビューを始めよう。
『コーヒーが冷めないうちに』は"つまらない"というより、“いい大人が読むべき小説”ではないと思う。
タイムトラベルネタは好みが分かれると思うが、SF慣れしていない僕にはとても新鮮で、プロローグまでは楽しんで読めた。
しかし、話を読み進めていくうち、登場人物の行動や言動に違和感を感じた。挙げればキリがないのだが、アルツハイマーの症状が明らかに進行している旦那を1人で帰宅させ、喫茶店の店員と酒を飲む『看護師』の女性。
デリカシーとかそういう問題ではなく、ありえない。
僕の祖父がアルツハイマーを患っていたということもあるが、このシーンは怒りを通り越して呆れた。
「アルツハイマーってこんなんでしょ?」という作者の知識の無さが伺える。デリケートな題材を取り扱っているのだから、せめて取材くらいはしてほしい。また、よく分からん酒のウンチクのくだりが長い。いるか? あそこ。
極めつけは最終話の「親子」という話。
『重度の心臓病である計は妊娠しており、出産には死のリスクがある』という話だが、そんな持病を幼少期から抱えているのに何故、避妊しなかったのか?
毎度、定期健診に行っているのだから出産のリスクは夫婦共に分かっていたはずだ。旦那の時田 流がチャラ男なら話はまだ分かるが、彼は『無口で優しい男』という設定だ。彼なら「子供は作らず夫婦だけで仲良くやっていこう」と言いそうなのだが、シレっと子作りに励み、その結果妻は死んでしまうのである。
この話で流を始め、登場人物のほとんどが胡散臭い連中にしか見えなくなってしまった。
話に説得性を持たせるのであれば『計がどうしても子供が欲しい』という設定を付け加えるべきなのでは?(それでも不自然だが)
病気や死を題材にするのは悪いことではない。ただ、けっして安く扱ってはいけないものだと僕は思う。感情論は抜きにしても書くならせめて上手く描いてほしい。
小説というのは1つ違和感を覚えると全てが崩壊してしまう。
もちろん、完璧な読み物などないので、流すところは流せるが、『登場人物が人物設定から大きくかけ離れた行動を取る』など重大な欠陥があると感情移入できなくなるのだ。
また、泣かせるためにあざとく、使い古された設定(記憶障害、死、リスクのある出産)なども読んでいて冷めてしまう。
まるで「どうせ、こうゆう設定好きなんでしょ? ほらほら泣いて!」と催促されているようで気持ちが悪い。
そんなノリがずっと続くため、登場人物が『次にどんな台詞を言うのか』がページをめくらなくても分かってしまう。
悪い意味で期待を裏切らない小説だった。
書籍サイトのレビューを見てみると「中高生が好きそう」と書いてあったが、冗談じゃない。
今の中高生はもっとマシな小説を読んでいる。
この小説が売れた理由は単に「マーケティングが上手かった」だけだ。無理矢理にでも良いところを挙げるとするならば、台詞が多いので読みやすいといったところか。こんな小説が本屋大賞に選ばれるのは本当に嘆かわしい。これからは日本の文芸界の質を落とさない選出をしてもらいたいものである。
と、この小説をぶった切ってしまったが、本音である。
きっと好みはあると思うので、あえて言うなら単純に、「それでもいいから泣きたいの…」っていう気分の時には、おすすめかもしれない。