オンライン上で簡単に人と出会える現代。しかし、そんな現代だからこそ、リアルで出会える場の魅力が高まっているようにも感じます。
今回訪れたのは、東京・三鷹にあるCafe Hammock。「ハンモックが印象的なカフェ」だけではない、「出会える」魅力がたくさん詰まったカフェです。
目次
ビルの2階に広がるCafe Hammockは隠れ家のような場所
三鷹駅からほど近いビルの2階。知らなければ気づかぬまま通り過ぎてしまいそうな小さな看板と、階段の入口に掛けられたハンモックがCafe Hammockの目印です。
2階に上がると、そこには店名のとおりハンモックがたくさん掛けられた広々とした空間が広がっていました。
右側には多ジャンルの本やマンガが収まった本棚。窓際にはカウンター席が、そしてアウトドア家具を使ったテーブル席が設けられています。
そして、目の前に飛び込んでくるインパクトのある絵。
「ギャラリースペースとして貸し出しているんです」とオーナーの小長谷さんが説明してくれました。
ハンモックは三鷹のメーカーのもの。Cafe Hammockはショールームとしての役割も担っているのだそう。
「ハンモックや椅子は、ここで試して気に入ってもらえたら、メーカーさんから購入することができますので、お気軽にお聞きくださいね」
小さなメーカーにとって、自社ショールームをもつハードルは高い。Cafe Hammockは、そうした需要に応えているのです。
出会いを活かしたバラエティ豊かなメニュー
Cafe Hammockならではのメニューのひとつが、ガーナ出身の女性が作る「アフリカンスープ」(800円)。見た目は「いかにも辛そう」ですが、食べてみるとそんなことはなく、子どもでも食べられるやさしい味わいです。
アフリカンスープを作っているガーナの女性は、小長谷さんの恋人の友人。日本で幼い子どもを育てながら、週に何度かお店に仕込みに通っているのだそう。
「出会い」が活かされているメニューは、コーヒーも同じ。
Cafe Hammockで提供されているコーヒーは、台東区蔵前にある「SOL’S COFFEE」の豆を使用しています。これも、オーナーの方との出会いが仕入れるきっかけだったのだとか。
「Cafe Hammockに合うコーヒーを、とSOL’S COFFEEさんが選んでくれた季節ごとにオススメのシングルオリジンコーヒーをお出ししています。
SOL’S COFFEEさんのコーヒーの味わいは、さらりと飲めるバランスのよさが特徴です。焙煎の前後にハンドピックを行なっているので、余計なえぐみがないんですね。豆はスペシャリティ基準の生豆を、仕入れる農園にもこだわっているとお聞きしまして。そういった姿勢への共感も含めてお付き合いさせてもらっています」
ほんのり爽やかな酸味を感じられるコーヒーは、ブラックのままおいしくいただける味わいでした。仕入れる豆の種類に応じて、お店にあった最適な豆を提供してくれているんだそうです。
もうひとつの「出会い」は、地元・三鷹の農家との間にありました。
「三鷹は、昔から農家が多い地域なんです。農家の方の想いや活動内容を届けるために行なわれている、“まちなか農家”という活動にメニューを通して参加しています」
Cafe Hammockが提供しているのは、三鷹産の野菜を使用したグリーンスムージー。野菜は季節に応じて変わり、取材時に使われていたのはモロヘイヤでした。ほんのり甘みを感じます。
「ふだん提供しているグリーンスムージーのほか、ICUの学生と一緒に文化祭で提供するドリンクの開発を行なったこともあります。農家にブルーベリーの収穫に行かせてもらったり、シェフに味を見てもらったりして。三鷹で店をやっている一員として、これからも何らかの形で応援していきたいと思っています」
ギャラリー×イベント=新たな出会い
この日、壁面に飾られていたインパクトのある絵。これも、Cafe Hammockの「出会い」がもたらしたものでした。
「はじめはギャラリースペースにするつもりはなかったんです。それが、“使わせてもらえないか”と訊かれたのが最初。今では2~3週間スパンで、さまざまな人がいろんな形で展示をしてくれています」
展示する際にお願いしているのは、「期間中に、何かイベントを1度は開催してほしい」ということ。せっかく作品を飾るなら、来店のきっかけになる機会を設けてほしいと思っているためなのだそう。
「ここで出会った別のアーティストとトークイベントをやってみたり、楽器演奏を行なってみたり。何をやるかは自由です。展示も、壁だけを貸し出しているわけじゃなく、ハンモックを吊している柱やフロア、すべてをお使いいただけます。その時々によって店の雰囲気すら変わるので、僕らも一緒に楽しんでいます」
アーティスト・イン・レジデンスができたらいい、と小長谷さんは語ります。アーティスト・イン・レジデンスとは、ある土地に滞在しながら作品を制作し、個展を開くといった活動を支援する事業のこと。
「三鷹は自然がたくさんあり、都心部にも近い。滞在しながらクリエイティブ活動をするには、うってつけの場所だと思うんですよ」
ギャラリー専用の店ではないため、価格も安価に抑えているのだそう。「パッションはあるけれど、まだまだ無名の若いクリエイターにどんどん利用していってもらいたいですね」と語ってくれました。
「もっとカオスになってほしい」多分野の人が出会う場に
Cafe Hammockとしても、さまざまなイベントを企画しています。これまでに何度も開催されているのは、映画上映イベントです。コーヒーを提供しているSOL’S COFFEEさんとも、このイベントを行なったことがあるのだそう。
「コーヒーについて打ち合わせをするために店を訪れてくださる機会を活かして、コーヒーにまつわる映画(フィルム・アバウト・ア・コーヒー)の上映イベントを行ないました。オーナーの方にコーヒーに関するお話もしていただいて。ただ映画を上映するだけではなく、映画に何かをかけ算するのがCafe Hammockの特徴なんです」
小長谷さんが「おもしろかった」と教えてくれたのは、「いねむりシアター」。これは、「映画を観ていると眠たくなることがある」ことから、逆転の発想で「いねむりすることを前提とした映画上映会をしよう」という話になったことから開催されたイベントです。フロアにごろ寝できるようにし、睡魔を呼び寄せる作品を流したのだそうです。
「映画は、popcornというマイクロシアターサービスを利用して上映することが多いです。誰でも知っているような映画だけではなく、隠れた名作と出会えるのが利点なんですよ」
Cafe Hammockは、「言い方は悪いけれど、“たまり場”を目指してスタートした」場所。「オンライン上で出会える今の時代だからこそ、あえてリアルで出会える場所を作りたかった」のだそうです。
「初期衝動を燃やしつづけるには、人との出会いが大切だと思っているんです。異業種・異分野の人と出会うことで、思いもよらぬアイディアが生まれることがある。そこからイベントを行なって、イベントに来てくれた人同士がまた何かおもしろいことをはじめる。そんな場所になっていけたら最高ですよね」
店を切り盛りしながら、そうした化学変化を楽しんで見守っていたい。もっとクリエイティブに、もっとカオスに。そのためにできることを模索しているのだと語ってくれました。
Cafe Hammockは「自分たちがほしかった居場所」
「子連れも方も、ノマドワーカーの方も大歓迎なんです」というCafe Hammock。さまざまな客層の人が共存できるお店を目指し、店のありかたやイベントを考えています。
人と人とがつながる線がどんどんいろんな方向に伸びていく起点となる場所に。
Cafe Hammockは、「こんな場所がほしかった」を具現化させた“大人のたまり場”です。
【Cafe Hammock】
住所:〒181-0013 東京都三鷹市下連雀3-22-15 2階
電話:0422-26-8677
開店時間:11:30~18:00
休業日:火曜(イベント貸切による休業あり)
cafepass:Cafe Hammock