外国人観光客が多く訪れるオーストラリア・シドニーには、オシャレなカフェやコーヒーショップが林立しています。ヨーロッパ圏にも負けず劣らずのコーヒー文化を誇るオーストラリアですが、「Single O(シングル・オー)」は、そんなコーヒー文化を支えている老舗コーヒーロースターリーのひとつです。
ご存知の方も多いでしょうが、「Single O(シングル・オー)」は日本にも焙煎所とカフェを構えています。本記事では、環境保護活動に積極的に関わる、シドニー発の有名コーヒーロースターリー「Single O(シングル・オー)」をご紹介します。
目次
サードウェーブコーヒーを代表する『Single O(シングル・オー)』
シドニーで伝説的な存在のコーヒーロースターリーとされる「Single O(シングル・オー)」。
一体どのような特徴があるコーヒーロースターリーなのでしょうか?
『Single O(シングル・オー)』のはじまり
「Single O(シングル・オー)」の創業者であるディオンさんとエマさん夫婦は、2003年にシドニーのサリーヒルズ(Surry Hills)の裏通りに、小さなカフェと焙煎所をオープンしました。最初は「Single Origin Roasters」という名前でしたが、やがて「Single O(シングル・オー)」(以下、Single O)に店名を変えて現在に至ります。
いまではあまり珍しくはないスペシャルティコーヒー専門のロースターですが、Single Oが創業した当時は非常にめずらしい存在でした。2000年代初めのオーストラリアでは新鮮なコーヒー豆を入手するのは難しく、手軽に手に入るコーヒー豆といえばスーパーマーケットで販売されている袋入りのものばかりという状況だったのだとか。
そんな中にあってSingle Oは、サードウェーブコーヒー黎明期にスペシャルティコーヒーを焙煎して販売し、オーストラリアのコーヒー文化を牽引する存在となりました。
進取の気性に富む老舗ロースター
地元の人々に愛される老舗ロースターリーのSingle Oは、さまざまな取り組みに参加しています。その一例が、「RANDOM ACTS OF ART」プロジェクトです。2013年から行われているこのプロジェクトでは、シドニーを中心に活躍するアーティストたちと協力して、彼らのオリジナル作品が1kgのバッグに描かれるのだそう。
このプロジェクトは季節ごとに新しくなるコーヒーをアートで表現すると共に、才能あふれるアーティストたちを紹介し、サポートする機会となっています。また、新型コロナウイルスの影響を受け、サリーヒルズのカフェでは全商品をすぐにテイクアウトモデルに切り替えたほか、店内にバターや小麦粉、卵などの食品を購入できるコーナーを設け、真空パックされた食事の販売も開始しました。
「地元の食材を使ったレストラン品質の食事を提供することは、コーヒーを買いに来たお客さんの感染リスクを最小限に止める助けになると考えました。パンデミックでビジネスは変化し、生き残りをかけて適応を余儀なくされましたが、この挑戦はとても楽しいものでもあります。」と、Single Oのマーケティング・ディレクターであるマイルズさんは、とあるインタビューの中で述べています。
セルフサービスの「Freepour Coffee On Tap Bar」
Single Oの「顔」といえば、「Freepour Coffee On Tap Bar」です。これは、店内に備え付けられた専用タップ(蛇口)からコーヒーをセルフサーブするサービスのこと。タップを押すと、ちょうど1杯分のコーヒーが出てきます。
「タップでコーヒーを提供することで、社会的距離を保ち、できる限り人との接触を避けることができます。もちろんタップから出てくるのは、新鮮でおいしいシングルオリジンのコーヒーです。提供されているコーヒーについて知りたいなら、スタッフに気軽に訊ねてみてください。」と、マイルズさんは語ります。
「Freepour Coffee On Tap Bar」はアフターコロナ時代には最適なシステムであると同時に、支払いからコーヒーの提供までわずか10秒しかかかりませんから、時間がないときに利用するのに便利です。
環境への配慮を忘れない『Single O(シングル・オー)』
Single Oはコーヒーのおいしさのみにこだわるのではなく、いかに自然環境の保護に貢献し、いつまでも素晴らしいコーヒーを提供できるかに焦点を置き、積極的に行動しているコーヒーロースターリーです。ここでは、Single Oが実践している環境保護のための取り組みをご紹介します。
サステナビリティへの取り組み
最高のコーヒーを提供するのは当然のことながら、Single Oは地球環境に配慮を払うロースターリーです。シドニー本店では開店以来、使い捨てカップでコーヒーを販売したことがないのも、ロースターリーにソーラーパネルを設置しているのも、すべてサステナビリティに真剣に取り組んでいるからこそだといえるでしょう。
2019年からSingle Oが取り組んでいる「No Death To Coffee」プロジェクトでは、気候変動に耐性がある新しいコーヒーの品種の研究が行われています。気候変動に伴い、近い将来アラビカ種のコーヒーが入手困難に陥ると予測されているのだそう。しかし、最近新開発された「スターマヤ」と呼ばれる耐候性の品種なら、将来のコーヒー危機を乗り越えることが可能であると考えられます。
また、二酸化炭素排出量を削減する活動も積極的に行っています。乳牛や食肉を育てるのは二酸化炭素の排出が欠かせませんが、シドニーのカフェではヴィーガン中心の食事を提供して、二酸化炭素の排出削減を試みています。
加えて、Single Oは同プロジェクトの一環として非営利団体「ワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)」を支援し、コーヒー生産者たちが質の良いコーヒーを生産できる環境作りを助けてきました。
「1%For The Planet」に加盟
Single Oは、「1%for the Planet」に加盟しています。この非営利団体は自然環境保護に貢献するビジネスの奨励を目的として、2002年にパタゴニアとブルー・リボン・フライズ社の創設者らによって設立されました。
現在、「1%for the Planet」には世界中で3,400以上もの企業や個人が加盟しています。Single Oも加盟店として売上高から1%を環境保護団体への活動支援金として寄付し、自然環境の保護に貢献しています。
『Single O(シングル・オー)』の定番ブレンドコーヒーをご紹介
名前の通り、シングルオリジンコーヒーのおいしさに定評のあるSingle Oですが、ブレンドコーヒーも人気です。ここでは、Single Oの定番ブレンドコーヒーをご紹介します。
甘党さんには『KILLERBEE』
Single Oのブレンド「KILLERBEE」は、ハチミツやトロピカルフルーツのような甘さが特徴です。ほのかな甘さの秘訣は、コーヒー豆の天然糖を引き出すようにじっくり優しく焙煎しているから。
「KILLERBEE」は、コロンビア、ホンジュラス、ブラジル産のコーヒー豆で作られています。Single Oを代表するこのブレンドコーヒーは、甘党さんやカプチーノをよく飲む人、甘いパンと一緒に飲むコーヒーを探している人にとくにおすすめです。
エスプレッソ好きなら『YEEHAH!』
飲んだ瞬間、あまりの刺激に思わず叫び出したくなるようなコーヒーをお探しなら、Single Oの『YEEHAH!』はいかがでしょうか? こちらのコーヒーは、インド、ブラジル、パプアニューギニアのアラビカ種とプレミアムグレードのロブスタ種をブレンドして作られています。
キャラメルとレーズン、マカダミアの風味とどっしり重量感のあるボディは、濃いエスプレッソが好みの人や睡眠不足の人におすすめです。
寛ぎたいときには『PARADOX』
熟したベリーとほろ苦いチョコレートのような風味を持つ「PARADOX」は、パプアニューギニア、ブラジル、エチオピアのコーヒー豆をブレンドして作られました。こちらのブレンドコーヒーは、心を落ち着けたいときにはもちろん、ラテを作るためのコーヒーとしてもぴったりのチョイスです。
シドニーの味を日本でも『Single O Japan(シングル・オー・ジャパン)』
日本は、Single Oの初めての海外出店先に選ばれました。「Single O Japan(シングル・オー・ジャパン)」として両国に焙煎所を、日本橋浜町にカフェを構えていますが、どのような経緯で日本に出店されることになったのでしょうか?
Single O Japanができるまで
2008年、現在Single O Japanの代表を務める山本酉(やまもと ゆう)さんは、シドニーのサリーヒルズにある本店で皿洗いとして働いていました。創業から5年経過したSingle Oは、すでに地元の人々や旅行者に愛される人気店としての地位を築いていたといいます。有名店であるとは知らずに働きはじめた山本さんでしたが、まかないで飲んだエスプレッソに衝撃を受けます。
日本にもこのコーヒーを紹介したいと強く願った山本さんは、2011年に創業者であるディオンさんとエマさんに東京への出店を提案しました。それから3年経った2014年、東京・両国にSingle Oの焙煎所がオープン。Single O Japanとして、コーヒーの卸販売をスタートさせました。
Single Oのコーヒーを味わうなら「RYOGOKU TASTING BAR」
主にレストランやカフェ向けにコーヒーを販売しているSingle O Japanですが、2017年には両国にある焙煎所に、コーヒーを飲めるスペース「RYOGOKU TASTING BAR」が設けられました。焙煎所が稼働していない土曜日と日曜日(午前10時から午後6時まで営業)のみのオープンですが、ご近所の人々やわざわざコーヒーを求めて遠くから訪れる人々で賑わっています。
「RYOGOKU TASTING BAR」では、すべてテイスティングしてからオーダーできるため、コーヒーにあまり詳しくない人でも安心して注文できるでしょう。ドリップコーヒーはもちろん、イタリア製のエスプレッソマシンで淹れるエスプレッソなども味わえます。
「RYOGOKU TASTING BAR」
住所:東京都墨田区亀沢2-23-2 1F
電話番号:03 6240 4455
営業日:土・日:10:00~18:00
Single Oのカフェ「Single O Hamacho」
2021年10月、日本橋浜町にオープンした「Single O Hamacho」では、シドニー本店と同じく「Freepour Coffee On Tap」を導入し、さまざまな種類のシングルオリジンのコーヒーが提供されます。セルフペイ、セルフサーブでお好みのスペシャルティコーヒーを素早くゲットできるシステムは、どんなに忙しくてもおいしいコーヒーにありつけるのがなによりのメリットです。
テイクアウトもできるフードメニューは、オーストラリアの味と日本の味が季節に合わせて提供されます。とくに、シドニー本店でもお馴染みの自家製「バナナブレッド with エスプレッソバター」はおすすめです。
住所:東京都中央区日本橋浜町3丁目16-7
電話番号:03 4361 0479
営業日:月~金:7:30~19:00、土・日:8:00~19:00
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