毎年開催されている「World Barista Championship(ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ)」は、世界中のコーヒーマニアの注目の的です。

 

この大会で優勝したバリスタは世界一のコーヒープロフェッショナルとして、コーヒー業界に名を刻む名誉を与えられます。

 

本記事では、ワールド・バリスタ・チャンピオンシップとバリスタの歴史について詳しくご紹介します。

 

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップの歴史

丸山珈琲 鈴木樹(スズキ ミキ)氏(出典PRTIMES)

20年以上も継続して開催されているワールド・バリスタ・チャンピオンシップは、どのようにして行われるようになったのでしょうか?

 

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップのはじまり

料理コンテストと同じように、コーヒーの競技会もあってしかるべきだと考えたアルフ・クレイマー氏(Alf Kramer)は、1998年にノルウェー・オスロで賛同者たちと共に、バリスタのためのコンテストを開催します。このコンテストが、現在のワールド・バリスタ・チャンピオンシップの前身となりました。

 

同じ年、ヨーロッパ・スペシャルティコーヒー協会(SCAE)が設立され、アルフ・クレイマー氏が初代会長となります。しばらくして、2000年にバリスタ大会を開催しようとなったとき、彼はワールド・バリスタ・チャンピオンシップの開催案を理事会にて提議します。

 

じつは、ヨーロッパ・スペシャルティコーヒー協会の設立以前に、アメリカやブラジル、コスタリカではすでにスペシャルティコーヒー協会が設立されていましたが、世界的なバリスタ大会が行われたことはありませんでした。

 

アルフ・クレイマー氏の提案は受け入れられ、ノルウェーで開催されたバリスタ大会をモデルにただちに世界大会が組織されることとなり、12ヵ国が最初のワールド・バリスタ・チャンピオンシップに参加することになります。こうして2000年、モナコ・モンテカルロで、世界一のバリスタを決定する世界大会が開催されることになりました。

 

現在の競技形式ができるまで

現在の競技形式になったのは、2002年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップからです。2002年にはノルウェー・オスロで大会が開催されることになりましたが、そのときに主要ルールが制定されることになりました。

 

当時定められたルールは今日に至るまでほとんど変わることはありませんが、変更されている点もいくつかあるようです。2004年、イタリア・トリエステで第5回ワールド・バリスタ・チャンピオンシップが開催された際には、審査員認定プログラムが導入されることになりました。

 

現在では、ワールド・コーヒー・イベンツ(World Coffee Events)と呼ばれる組織がワールド・バリスタ・チャンピオンシップの運営を行っていますが、ヨーロッパ・スペシャルティコーヒー協会とアメリカ・スペシャルティコーヒー協会が組織の権利を保有しています。

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップのルールとは

最近では、50ヵ国以上の国や地域から参加者が集まっているようですが、どのようなルールの下で競技が行われているのでしょうか?

 

バリスタが腕を競う世界大会

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップに出場するには、各国で開催されるバリスタ・チャンピオンシップで優勝しなければなりません。優勝者たちに加えて運営組織に指名されたバリスタが競技に参加することもありますが、参加者全員で予選ラウンドに挑み勝ち残った12名が準決勝へ、そこから上位6名が決勝へ進み、バリスタ世界一の座が競われることになります。

 

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップに参加したバリスタは、エスプレッソとカプチーノ、自らアレンジしたシグネチャー・コーヒーをそれぞれ4杯ずつ、15分以内に提供する必要があります。世界中から集められた4人の審査員は、バリスタが用意した合計12杯のコーヒーを技術レベルや味だけではなく、作業やプレゼンなどによって評価します。

 

とくにシグネチャー・コーヒーは、独創性が評価対象になるためバリスタの腕の見せ所です。シグネチャーコーヒーはアレンジドリンクですが、アルコールの使用は不可となっています。

 

2021年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップ

イタリアで開催された「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ2021」のチャンピオンに輝いたのは、コロンビアのディエゴ・カンポス氏(コーヒー会社「Amor Perfecto」所属)でした。コロンビアが優勝したのは今回が初めてですが、ワールド・バリスタ・チャンピオンシップの歴史の中でコーヒー生産国が優勝したのは、2011年と2012年に続いて3度目になります。

 

コロンビアでは、海外に輸出できないランクのコーヒーが市場に安価で出回っています。そのためコーヒー生産国でありながらも、コーヒーのおいしさを追求する人が少ない状態でした。ところが、最近になってようやく富裕層を中心にコーヒーの味にこだわる人々が増えてきているようです。

 

今回コロンビア代表のバリスタがワールド・バリスタ・チャンピオンシップで優勝を果たしたことにより、コロンビアのコーヒー文化はさらに活発になることが期待できるでしょう。

 

バリスタの歴史と職業

第15代ワールドバリスタチャンピオン、井崎英典(Hidenori Izaki)氏

コーヒーのプロフェッショナルであるバリスタは、現在ではよく知られている職業です。ところで、バリスタという職業は一体いつ頃生まれたのでしょうか?

 

バリスタの誕生

バリスタという言葉は、20世紀にムッソリーニが指導者であった時代のイタリアで誕生します。イタリアでは1645年にコーヒーと共にアルコールを提供する場所であるバーが生まれ、そこでドリンクを作る人はバーテンダーと呼ばれていました。当時のバーで提供されていたのは銅製の鍋でコーヒーを煮出すトルココーヒーでしたが、淹れるのに時間がかかるため、コーヒーを注文した人たちは辛抱強く待つ必要があったようです。

 

コーヒーを提供するカフェの歴史は古く、1554年にはトルコ・イスタンブールに世界初のカフェ「カフェ・カーネス(コーヒーの家)」が開店し、人気を博していました。このことからもわかる通り、16世紀頃にはコーヒーを作る仕事はすでに存在していたようです。しかし、その職業がバリスタと呼ばれるようになったのは、つい最近のことだといえるでしょう。

 

バリスタとエスプレッソ

1884年には、エスプレッソマシンの前身ともいえるコーヒーを淹れるための蒸気機械が発明され、注文した人の目の前で1杯以上のコーヒーをより迅速に淹れることが可能になりました。イタリアでは、「4つのM」が揃わなければ良いエスプレッソは作ることができないといわれています。

 

「4つのM」とは、Macchina(エスプレッソマシン)、Macinazione(適切なコーヒー豆の粉砕)、Miscellas(焙煎とブレンド)、Mano(バリスタの手腕・技術)です。現在に至るまで進化を遂げてきたエスプレッソマシンですが、バリスタの才能や技術は、マシンやコーヒー豆の品質と同じくらい重要です。

 

世界の架け橋となるワールド・バリスタ・チャンピオンシップ

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップが開催されたことにより、世間のバリスタに対する認知度はますます高まりました。初期の大会では北欧勢をメインに数ヵ国がリードしていましたが、ワールド・バリスタ・チャンピオンシップの栄光を勝ち取る可能性のある国は、いまでは50ヵ国以上もあるといわれています。

 

とくにコーヒー生産国のバリスタの進歩は目覚ましく、ワールド・バリスタ・チャンピオンシップは生産国と消費国の間の素晴らしい架け橋となっているのではないでしょうか。2022年には、オーストラリア・メルボルンで大会が開かれることが決定しています。どんな展開になるのか、いまから楽しみにしたいですね!

 

 

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