コーヒーの市場規模が大きいエリアといえば、アメリカやヨーロッパの国々を思い浮かべるのではないでしょうか? ところが最近、中国のコーヒー市場が世界から注目されています。本記事では、大きく変わりつつある中国のコーヒー事情についてご紹介します。
目次
中国のコーヒー市場規模は拡大中
近年、ビジネスチャンスが転がっていると噂されている中国のコーヒー市場。その現状とはどのようなものなのでしょうか?
世界でもっとも急成長しているコーヒー市場
中国のコーヒー市場は、ここ20年で急速に変化しました。20年前までは、街中でコーヒーショップを見かけることがほとんどありませんでしたが、現在では都心部を中心に、コーヒーショップの数が驚くほど増えています。
2021年、中国のコーヒー市場は前年比31%増となりました。2022年から2025年にかけて、中国のコーヒー市場の年平均成長率は、9.63%増加すると予測されています。中国のコーヒー消費量に関しては、アメリカやヨーロッパと比べると、それほど多い訳ではありません。しかし、世界のコーヒー消費量の成長率が2%であるのに対し、中国のコーヒー消費量は毎年15%以上も増加しているといわれています。
中国政府も注目するコーヒー産業
中国のコーヒー市場が急成長していることを受けて、中国政府も自国内のコーヒー産業の発展に注目しているようです。中国国内外のコーヒー商取引と中国のコーヒー文化をさらに発展させることを目的に、中国政府が資金を提供し、海南省海口市で「I-coffee Exposition」という博覧会が開催されました。この博覧会は、コーヒーの生産、取引、消費が主なテーマとなっており、多くの来訪者があったといいます。また、中国政府はコーヒー栽培とコーヒー飲料の研究開発において、積極的に外国企業の投資を受け入れているようです。
中国のコーヒー産業の発展は、より良い品質のコーヒー生産に繋がります。中国の主なコーヒー生産地である雲南省は、2022年8月に「高級コーヒー製品の生産率および加工率の向上を促進するための規定」を発表しました。現在、中国・雲南省では年間10万トン以上のコーヒーが生産されています。それらのコーヒーは中国国内以外で消費される以外にも、ドイツや日本に輸出されているのだそう。雲南省では、今後2年以内に高品質なコーヒー豆の生産率を30%増加することを目標とし、中国のスペシャルティコーヒーを世界にアピールする予定です。
変わりつつある中国のコーヒー文化
もともと中国にコーヒーを飲む習慣はありませんでしたが、最近では至る場所でコーヒースタンドやカフェを見かけるようになりました。中国のコーヒー文化の変化と続々と生まれているローカルブランドについてご紹介します。
中国のコーヒー文化のいまと昔
中国のコーヒー市場が拡大したのは、中国国内のコーヒー需要が急増したからです。それまで無きに等しかった中国のコーヒー文化ですが、それがいま変わりつつあります。かつて中国でコーヒーといえば、主にインスタントコーヒーを指す言葉でした。変化が訪れたのは、スターバックスが中国に進出し、コーヒーの概念を覆したときからです。
さらに、新型コロナによるパンデミックは、中国のコーヒー文化の変化に拍車をかけました。それまで中国の一般的な家庭では、コーヒーよりもお茶を好んで飲む家庭が多かったようです。ところが、パンデミックのせいでカフェ通いができなくなったため、自宅でコーヒーを淹れて飲む人が増加しました。
中国では、世代ごとにコーヒー消費量や嗜好が異なります。中国のコーヒー文化を牽引するのは、10代~30代の若い世代です。40~59歳までの年齢層には、コーヒーを好んで飲む人が多いものの、仕事の関係で仕方なくコーヒーを飲んでいるという人も少なくありません。若い世代の消費者にしろ、中年層の消費者にしろ、有名なコーヒーチェーンのコーヒーを定期的に購入することは、経済的成功を収めた証とみなされているようです。
中国の国家統計局が発表したデータによると、2021年の総人口に占める60歳以上の高齢者の割合は18.9%(2億6,736万人)でした。これらの年代の人がコーヒーを日常的に飲むのは非常にめずらしく、コーヒーを飲む習慣が、中国の伝統的なライフスタイルにはなかったものであることがわかります。
中国のコーヒーブランドが増加中
中国で人気の外国企業のコーヒーチェーンは、スターバックスだけではありません。2020年、イタリアのコーヒーブランドである「Lavazza(ラバッツァ)」は、中国企業と合弁事業を開始し、上海にイタリア国外初の旗艦店をオープンしました。2022年時点で、ラバッツァのカフェは、中国全土に20店舗以上を展開しています。
国内のコーヒー需要が高まるにつれ、ローカルコーヒーショップやコーヒーブランドも続々と誕生しているようです。四川省の省都・成都では、毎日平均して1件の新しいコーヒーショップがオープンしているといいます。中国のほかの大都市でもコーヒーショップの数は増加しており、消費者たちは豊富な選択肢の中から、お気に入りのコーヒーショップを見つけています。
価格帯やコーヒーの品質に違いはありますが、中国では「Luckin Coffee」や「Coffee Box」をはじめ、香港発の「Pacific Coffee」、スペシャルティコーヒーを提供する「Fisheye Cafe」や「Greybox Coffee」などのブランドが誕生しました。ほかにも、「Manner Coffee」や「 Seesaw Coffee」も注目を集めています。
「Manner Coffee(マナーコーヒー)」は、元獣医でコーヒー愛好家でもある韓玉龍氏によって、2015年に創業されました。創業当初は、上海市にある繁華街の路地裏にオープンした小さなコーヒースタンドでしたが、2019年には中国本土にチェーン展開を開始。低価格でスペシャルティコーヒーを飲むことができると大人気です。
わずか4年ほどの間に大成功を収めたマナーコーヒーですが、創業者はブログの中で「突然『ホット』になったわけではありません」と述べています。マナーコーヒーの成功は、若年層をターゲットにしたことやマイカップを持参すれば10元(日本円で約190円)でスペシャルティコーヒーを飲めることなど、確かな戦略に基づいているといえるでしょう。
中国で花開くカフェブーム
お茶の文化が長いためか、コーヒー文化がなかなか発展しなかった中国。そんな中国にようやくカフェブームが訪れたようです。飲食店のデジタル化が進んでいる中国では、コーヒーの飲み方や提供の仕方も、消費者がコーヒーを飲みたいと思う状況に合わせて選ぶことが可能。カフェブームにより、現在中国国内のコーヒー市場は活気づいており、これからさらなる成長が見込めます。
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