スペイン南部マラガ市外のリゾート地エステポナにあるコーヒーロースター『Cocóra Specialty Coffees(ココラ・スペシャルティコーヒー)』。のんびりした雰囲気の小さな町に本拠地を構えるこのロースタリーは、スペシャルティコーヒーのみを焙煎して販売しています。
本記事では、独特のコーヒー文化を持つスペインで人気の『Cocóra Specialty Coffees(ココラ・スペシャルティコーヒー)』をご紹介します。
目次
『Cocóra Specialty Coffees(ココラ・スペシャルティコーヒー)』のはじまり
スペイン国内外で高く評価されているココラ・スペシャルティコーヒー。ここでは、まずはじめにスペイン屈指のコーヒーロースターである彼らの歴史についてご紹介します。
やむにやまれぬ事情からオープン?
ココラ・スペシャルティコーヒーは、ラトビア出身のハリスさんとジュリアさんカップルの手により誕生しました。しかし、彼らは最初から「スペインでコーヒーロースターを開きたい!」と、望んでいた訳ではありません。ロースタリーを開いた背景には、やむにやまれぬ事情があったといいます。
母国から遠く離れたスペインで人生の新たなスタートを切った2人は、コスタ・デル・ソル(太陽の海岸という意味)と呼ばれる海岸地域に辿り着きました。
世界中から旅行者が集まる美しい海岸を臨む小さな町に腰を下ろした彼らは、陽気で素朴な気質の人々が住む、オレンジの木に囲まれた素敵な環境に満足します。ところが、マラガ郊外のこの町には、おいしいコーヒーを飲める店がひとつも見つかりませんでした。
「近くのスーパーマーケットでは、外国産のコーナーにラバッツァ(LAVAZZA、イタリアのコーヒーブランド)のコーヒーしか置いていなかったんです。コーヒー好きの僕らにとっては、まさに絶望的な状況でした。
もちろん都会に行けば色々なコーヒー豆を手に入れられますが、その当時地方でスペシャルティコーヒーを販売している店はありませんでした。」
と、ココラ・スペシャルティコーヒーのオーナーであるハリスさんは、あるインタビュー記事の中で当時を振り返って述べています。
コーヒーが大好きな彼らにとって、おいしいコーヒーが気軽に入手できないことは死活問題だったようです。
その結果、自分たちでスペシャルティコーヒーを提供するカフェを立ち上げ、エステポナのコーヒー文化に新風を吹き込むことになりました。
コーヒーロースターとして再スタート
2017年、カフェをオープンさせた当初は軽食とコーヒーを販売する店でしたが、後に自家焙煎を行うようになり、コーヒーの焙煎所を併設するようになります。ココラ・スペシャルティコーヒーが自家焙煎を行うようになったのは、地元の人々に最高品質のスペシャルティコーヒーを味わってもらいたかったからでした。
一般的に、焙煎してから3~14日後くらいまでがコーヒーの飲み頃としてベストだといわれています。
一番おいしい状態のコーヒーを提供するには、自分たちで焙煎するのが一番です。
しかし、コーヒーへの情熱だけでは上手にコーヒーを焙煎することはできません。
そこで、2人はスペシャルティコーヒー専門の焙煎所を開くにあたって、ポルトガル・リスボンにある「Academia do Café」オーナーでSCAトレーナーのサンドラ・アゼベド氏、そしてスウェーデン・ストックホルムにある「Drop Coffee Roasters」オーナーのジョアンナ・アルム氏、さらにはアメリカの作家でコーヒー専門家として有名なスコット・ラオ氏からスペシャルティコーヒーを扱うための知識と技術を学びます。
スペシャルティコーヒー業界の中でも指折りの焙煎士・バリスタから英才教育を受けた彼らは、地元の人々の味覚に本当に訴える独自のローストスタイルを確立していきました。
その確かな焙煎技術は、SCAスペイン・ブリュワーズカップ2位、スペイン・ロースター・チャンピオンシップ3位など、複数の国内コンテストで優秀な成績を収めたことで実証されています。
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コーヒー業界での成功
コーヒー業界で名前を知られるようになったココラ・スペシャルティコーヒーは、スペイン国内だけではなく、ヨーロッパのさまざまな小売・卸売業者向けに、季節ごとに選りすぐった最高品質かつトレーサブルなスペシャルティコーヒーのみを仕入れて焙煎しています。
ココラ・スペシャルティコーヒーでは何十種類ものサンプルを試し、カップの品質を見極めながら、焙煎士が惚れ込んだコーヒー豆を選んでいきます。
このようにして世界中から厳選したコーヒーを焙煎しますが、少量ずつ焙煎するのは新鮮なコーヒーを届けたいとの願いから。焙煎したてのコーヒーは、ココラ・スペシャルティコーヒーのチームスタッフが手作業で選別して丁寧に梱包します。
また、ココラ・スペシャルティコーヒーはコーヒーの焙煎以外にも、AST(SCA公認トレーナー)による教育プログラム、オンラインストア、コーヒーショップのコンサルティングなど、さまざまな分野で成功を収めています。
スペシャルティコーヒー専門の焙煎所兼カフェとして再スタートしたココラ・スペシャルティコーヒーは地元の人々はもちろん、すばらしいコーヒーを求めてやってくる旅行者の間でも話題になります。
このロースタリーの成功がきっかけとなったのか、それまでスペシャルティコーヒーとは無縁だったエステポナの町にも、スペシャルティコーヒーを提供するカフェやロースタリーが次々とオープンするようになったのだとか。
残念ながら、パンデミックの影響で閉店を余儀なくされた店も相当数あったようですが、スペインの都心部から離れた小さな町々でも、スペシャルティコーヒーを愛する人々の数は着実に増えているようです。
スペインのコーヒー文化
独自のコーヒー文化が根付いているスペインでは、アラビカ種のコーヒーも輸入されていますが、ロブスタ種のほうが多く輸入されています。
コーヒーのかさを増すために焙煎時に砂糖を加えるなどめずらしい焙煎方法が行われていますが、最近ではスペシャルティコーヒー専門のロースタリーも増えているようです。
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『Cocóra Specialty Coffees(ココラ・スペシャルティコーヒー)のコーヒー
世界中からコーヒーを仕入れているココラ・スペシャルティコーヒーは、季節ごとに最高品質の豆のみを選んでいます。ここでは、ココラ・スペシャルティコーヒーの定番アイテムであるエチオピア産とブルンジ産、エルサルバドル産のコーヒーについてご紹介します。
エチオピアのコーヒーの特徴は?
ココラ・スペシャルティコーヒーでは、エチオピア・イルガチェフェ地域のバンコ・ゴティティ加工所で作られた、ウォッシュドタイプのエチオピアコーヒーが取り扱われています。コーヒー生産に適した土壌を持つイルガチェフェでは、シトラスや花のような香りがするコーヒーが収穫されます。
エチオピアでは果肉のまま乾燥させる、伝統的な加工法のナチュラルで精製されることが多いですが、イルガチェフェでは清潔な水を使用したウォッシュドによる精製を採用。ウォッシュドで精製されたコーヒーは癖のないクリーンな味わいで、ココラ・スペシャルティコーヒーではこのエチオピアのコーヒーの特徴を活かすように焙煎具合が調整されています。
さわやかな酸味を持つブルンジのコーヒー
東アフリカに位置するブルンジは、タンザニアやコンゴに隣接した国です。40年以上続いた民族間の内戦のため長い間農地は荒廃した状態でしたが、国際協力機構などの援助のおかげで農作物を海外に輸出できるまでになりました。
アフリカでコーヒーの生産地といえばエチオピアやタンザニア、ケニアなどの国々が有名なのではないでしょうか。しかし、現在ブルンジの経済を支えているのは主にコーヒー産業で、2008年からはスペシャルティコーヒーを生産することに力を入れた結果、近隣の国々にも劣らない高品質なコーヒーが収穫されています。
ブルンジは北海道の3分の1の国土ほどしかない小さな国ですが、コーヒーの生産に適した環境が備わっています。2012年には、高品質なコーヒーの品評会であるCOE(Cup of Excellence、カップ・オブ・エクセレンス)が開催され、ブルンジ産の質の良いアラビカ種のコーヒーが高く評価されました。
そもそもブルンジでコーヒーの栽培がはじまったのは1930年代、ベルギーの植民地時代のこと。当時のブルンジに持ち込まれたコーヒーの苗木は、昼夜の温度差が激しい標高1500m以上の高地で栽培されました。
現在、ブルンジのコーヒー農園のほとんどは小規模で貧困ゆえに肥料や機材が購入できず、有機栽培のコーヒーが手作業で収穫されています。しかし結果として、その環境こそがすばらしい風味を持つコーヒーを生み出しているのだそう。さわやかな酸味とベリー類のような甘い後味を持つコーヒーはヨーロッパの人々に好まれ、ココラ・スペシャルティコーヒーも積極的にブルンジのコーヒーを仕入れているようです。
めずらしい品種が多いエルサルバドルのコーヒー
ココラ・スペシャルティコーヒーでは、アフリカ産のコーヒーのみを扱っている訳ではありません。中央アメリカにある小国・エルサルバドル産のコーヒーも、スペイン南部の小さな町に居を構えるこのロースタリーの定番アイテムに名を連ねています。
火山地帯であるエルサルバドルの土壌はたっぷりとミネラルを含んでおり、水量も十分です。エルサルバドルではブルボン種が多いほか、パーカス種やゲイシャ種、そして希少なパカマラ種のコーヒーが栽培されています。標高が高い場所で栽培されるコーヒーは苦みが少なく、マイルドな酸味で飲みやすいといわれています。
ココラ・スペシャルティコーヒーの公式サイトによると、コーヒーロースターは現在お休み中で5月には開店する予定とのことです。早く休暇から戻ってきて、おいしいコーヒーを提供してくれることを願っています。
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