近年、世界の注目を集めている「カスカラ」。海外のコーヒーロースターの中には、コーヒー豆だけではなくカスカラを販売するところも増えつつあるようです。
スーパーフードと呼ばれているカスカラには、どのような効果があるのでしょうか?
本記事では、カスカラの効能とカスカラティーのレシピを詳しくご紹介します。
世界から注目されるカスカラ
日本ではあまり知名度が高くないカスカラですが、どのようにして作られるのでしょうか?
カスカラとは?
カスカラ(cascara)とはスペイン語で「殻」「果物の皮」「籾殻」の意味で、コーヒーチェリーの果皮を乾燥させたものを指します。普段わたしたちがコーヒーとして飲んでいるのはコーヒーチェリーの種(コーヒー生豆)で、たいていの場合カスカラになる果肉や外皮の部分は廃棄されるか肥料にされてきました。
ところが、最近ではカスカラをお茶にして飲んだり、粉末に加工したりするなど食品としての再利用が積極的に行われています。とくに南米のコーヒー生産地では、高品質のカスカラを作ることに力を注いでいるコーヒー農家の数も増えているようです。
カスカラの食品としての再利用は、環境に優しいだけではなく、コーヒー農家にさらなる収益をもたらすメリットがあります。
実際、10年ほど前からコスタリカ大学では、食用カスカラの研究が行われてきました。その成果もあって、カトゥーラ、カトゥアイ、そしてティピカの変異種であるヴィラロボスなどの品種を使った良質なカスカラティー(コーヒーチェリーティーとも呼ばれている)が作られています。
カスカラティーを作るにはまずコーヒーチェリーの果肉を集めて洗い、蒸発装置で急速加熱して雑菌を死滅させます。さらに洗浄した後に天日で乾燥させるか、大型の脱水機で乾燥させるかし、完全に乾いたらお茶として包装して出荷されます。
気になるカフェイン含有量は?
一般的に約100mlのコーヒーには、40~60mgほどのカフェインが含まれているのだそう。缶コーヒーを好んで飲む人も少なくありませんが、190ml入りの缶コーヒー1本には、なんと約100~150mgものカフェインが含まれています。
よく飲まれている飲み物の中では、玉露(100ml当たりのカフェイン含有量は約160mg)に次いでカフェイン含有量が多いのがコーヒーです。カスカラがコーヒーの副産物であることを考えると、「カスカラティーにもコーヒーと同じく、たくさんのカフェインが含まれているのでは? 」と思うかもしれません。
ところが、イギリスのコーヒーロースター「Square Mile Coffee Roasters」がドイツの研究所にカスカラのカフェイン含有量の調査を依頼したところ、カスカラティーに含まれているカフェイン量はコーヒーよりもはるかに少ないことが判明しました。
カスカラと水の比率によってもカフェインの量は変わってきますが、抽出時間を長くしたカスカラティーのカフェイン含有量は1リットル当たり111.4mgという結果に。
同じ条件のコーヒー1リットル当たりのカフェイン含有量が約400~800mgだったことから、カスカラティーのカフェイン含有量の少なさがよくわかります。
フルーティーなカスカラティー
カスカラは主にお茶として消費されており、コーヒーの風味というよりは紅茶に似た風味が特徴です。とはいえ、ほうじ茶や煎茶はツバキ科ツバキ属のチャノキ(茶の木)からできますが、カスカラはコーヒーノキ属であるためお茶に分類されることはありません。
果肉から作られるカスカラは、フルーツが原料となっているハーブティーのカテゴリーに入ると考えられます。カスカラティーはローズヒップ、ハイビスカス、チェリー、レッドカラント、マンゴーのような甘くフルーティーな風味があって飲みやすいと人気です。
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カスカラティーの作り方
粉末やシロップになったカスカラは飲み物や食品に混ぜて消費されますが、カスカラそのものの風味を楽しみたいならカスカラティーがおすすめです。ここではカスカラティーのレシピをいくつかご紹介します。
「Square Mile Coffee Roasters」おすすめのレシピ
マグカップにカスカラをスプーン大さじ山盛り1~2杯(約5~7グラム)入れます。そこに、沸騰したばかりのお湯230mlを注いで3分ほど蒸らします。カスカラだけでも甘い風味がありますが、お好みでハチミツやシナモン、ナツメグなどを加えてもおいしいでしょう。
コーヒーの生産地として有名なイエメンやエチオピアでは、何世紀も以前からカスカラティーが飲まれてきました。ジンジャー、ナツメグ、シナモンなどのスパイスと一緒に漬けた香りのよいカスカラティーはアラビア語でキシル(Qishr)と呼ばれ、イエメンではコーヒーよりも安価なためよく飲まれているそうです。
夏に嬉しいカスカラアイスティー
カスカラティーは低カフェインなので、アイスティーにしてたくさん飲んでも安心です。カリフォルニア発のコーヒーロースター「Verve Coffee Roasters」のウェブサイトに載せられていたレシピでは、300mlの冷水に対して大さじ6杯のカスカラを使用するとのこと。
水とカスカラを入れたボトルを冷蔵庫に仕舞い、12~16時間かけてじっくり抽出します。フレンチプレスやティーフィルターを使えば、濾す作業が省けるのでおすすめです。
ホットカスカラティーの作り方
カスカラと水の比率は1:10、もしくは1:20か1:25までお好みに合わせて選べます。1:20の比率でホットカスカラティーを作る場合には、お湯100ml当たり5グラムのカスカラを用意します。
約15グラムのカスカラをティーポットに入れてお湯を300ml注ぎ、軽くかき混ぜます。蓋をしてから4分間蒸らした後、ティーカップに注ぎましょう。もし抽出が弱く味が薄いと感じたらカスカラを追加するか、お湯の温度や蒸らし時間を変えてみるのもいいですね。
カスカラシロップの作り方
カスカラと水と砂糖があれば、甘くて風味の良いカスカラシロップが簡単に作れます。鍋に1.5カップの水を入れて沸騰させ、カスカラ1/2カップを加えて軽くかき混ぜてから弱火にします。そのまま4分間煮込んだら濾して、カスカラを取り除きます。液体を鍋に戻し、カップ1杯の砂糖を加えて沸騰させ、とろみがつくまで煮込みます。
火を止めてシロップが十分に冷めてから容器に入れ、冷蔵庫で保存しましょう。完成したカスカラシロップはパンケーキやワッフルにかけたり、カフェラテやアイスコーヒーに加えたりなどさまざまな用途にお楽しみいただけます。
カスカラにはどんな効能があるの?
栄養価が高く、海外ではスーパーフードと呼ばれているカスカラ。コナコーヒーで有名なハワイのKonaRed社では、ビタミンや抗酸化物質が豊富なカスカラを使ったジュースなどの健康食品を製造しています。ここでは、カスカラの効能についてご紹介します。
むくみ防止
運動不足や寝不足、ストレスや栄養の偏り、過度なダイエットや冷えなどはむくみの原因です。むくみを解消するには生活習慣を変えるのが一番ですが、塩分の体外排出を促すカリウムを積極的に摂取することも役立ちます。
その点、カリウムを含むカスカラは、むくみ防止に効果があるといえるでしょう。カスカラティー350mlには401mgのカリウムが含まれていて、1日の摂取推奨値の約11%を補うことが可能です。
アンチエイジングや病気予防にも
体の酸化は老化を引き起こしますが、抗酸化物質を補うことでアンチエイジングが可能です。本来わたしたちの体内には、アスコルビン酸やメラトニンと呼ばれる抗酸化物質が備わっています。
ところが、加齢と共にそれらの抗酸化作用はどんどん低下するため、普段の食事から抗酸化作用のある栄養素を摂取することが大切です。
抗酸化物質を豊富に含む食品のひとつにブルーベリーが挙げられますが、なんとカスカラにはブルーベリーの約8倍の抗酸化物質が含まれているのだとか。
とくに、ポリフェノールの一種で強い抗酸化作用を持つフラボノイドが豊富に含まれており、アンチエイジングに加えて、抗炎症、抗ウィルスの効果が期待あるとされています。
カスカラに含まれるフラボノイドは、ダークチョコレートに含まれているものと同じです。しかし、カスカラはチョコレートのように脂肪やコレステロール、砂糖やナトリウムをほとんど含まず、低カロリーで毎日お茶にして飲むのに適しています。
美肌効果も期待できる
腸内環境は肌のコンディションと密接にかかわっています。腸内の悪玉菌が作り出す有害物質が体外にうまく排出されないと、やがて腸壁から吸収されることに。そうして血液に溶けた有害物質は全身に運ばれ、肌荒れを引き起こします。
カスカラには有害物質を排出するのに必要な食物繊維が多く含まれており、腸内環境を整えて美肌へと導く効果があるといわれています。
日本でもカスカラは購入できる?
海外のコーヒーロースターで販売されていることが多いカスカラですが、人気ゆえに入手困難なアイテムです。ここでは、日本で購入可能なカスカラをご紹介します。
ボリビア産の「カスカラティー コーヒーチェリーティー コパカバーナ農園」
ポリフェノールたっぷりのカスカラティーは、ホットでもアイスでもおいしく、季節を問わず飲むことができます。ボリビア・コパカバーナ農園産のカスカラティーは甘酸っぱさが特徴で、砂糖やハチミツを加えたり、ソーダを加えたりするとまた違った味わいが楽しめます。
「カスカラ・サグラダ」に注意しよう
カスカラを買うときには、間違って「カスカラ・サグラダ」を購入しないように気をつけましょう。
カスカラ・サグラダとは、北米やコスタリカ、エルサルバドルなどに生育する樹木の樹皮を乾燥させたもの。クロウメモドキ、カリフォルニアクロウメモドキ、サグラダ樹皮などと別称で呼ばれることもあり、香料として用いられるほか、薬や栄養補助食品にも利用されています。
お茶として飲まれることもありますが、カスカラ・サグラダは下剤の作用があるので、コーヒーチェリーから作られるカスカラと間違わないよう注意が必要です。
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