バリスタはコーヒーに関わった人たちの代表
──バリスタという職業についてどうお考えですか?
コーヒーというのは、非常にたくさんの人が関わって作られるものなんです。産地の生産者をはじめ、収穫や収穫後のコーヒーを処理する人、輸入や輸出に関わっている方々、コーヒーを焙煎するロースター、そしてコーヒーを淹れるバリスタ。そうした人々の中で直接お客様と接するのは、バリスタだけなんです。
だからバリスタには、そのコーヒーに関わったすべての人たちの代表として、ストーリーやおいしさなどをお客様に伝える責任があると思うんです。
──とても重要な役割ですね。
コーヒーに関して“Seed to Cup”という言葉があります。種から一杯のカップになるまで、じつに多くの工程を経てコーヒーはできているという意味で、おいしいカップを提供するためには各工程での品質管理の努力は欠かせません。
バリスタはただコーヒーを淹れるだけではなく、そのコーヒーの生産工程に関わった人たちの思いを汲んで、どういうカップに仕上げていくかを工夫する仕事だと思っています。
──しかし、日本ではバリスタがあまり重視されていない感じがします。
そうですね。現在、日本ではバリスタの職業的地位は、残念ながらあまり高くありません。正規雇用され、十分な収入を得ているバリスタはまだまだ少ないと思います。
たとえばシェフやパティシエなら専門学校などで基礎を学び、国家資格を取って……という流れがある。国がちゃんとした仕事として認めて、資格を発行しているわけです。
しかしバリスタは非正規雇用が大半で、若いときに憧れを持って始めても、その後30~40代になっても続けていけるか、というと、収入的に難しいのが今の日本での現実だと思います。
バリスタが本当においしいコーヒーや素晴らしいサービスを提供することでコーヒーのファンが増え、バリスタが淹れるコーヒーに価値を見い出してくれて、バリスタの職業的価値も高まっていく。そんな環境が日本でも確立していったら素晴らしいですね。
オーストラリアのコーヒー事情
──海外のバリスタはどんな状況なんでしょうか?
たとえばオーストラリアでは、バリスタがとても重視されています。アルバイトでも時給20豪ドル(約1,800円)ぐらいもらえるそうです。ホリデーシーズンになると時給が70豪ドルぐらいに跳ね上がるそうですよ。
──それはすごいですね。コーヒーの単価が高いのですか?
価格的にはそれほど変わりません。ただ、オーストラリアという国は、消費者がコーヒーに求めるレベルがすごく高いんです。
大手のコーヒーショップも撤退を余儀なくされるほどで、月並みな味やサービスだと誰も来てくれない。だからお店としても、接客スキルや腕のいいバリスタには十分な給料を支払うというわけです。
人気のお店では1日に1000杯、2000杯もコーヒーが出るそうですよ。日本だと1日100杯も出れば「けっこう忙しいお店だな」といった感じなので、だいぶ事情が違いますよね。
──働きがいのある理想的な環境ですね。
バリスタが職業として確立していて、国家資格もあると聞いています。日本でも最近はスペシャルティコーヒーが身近になり、お客様の舌も肥えてきているように感じます。
よりおいしいコーヒーを飲みたい、もっとコーヒーのことを知りたいという方も増えていますし、少しずつステップアップしてきている状況だと思います。この流れをさらに加速していきたいですね。
コーヒーの魅力を伝えるうえでとても重要なバリスタが、日本ではあまり職業的価値が認められていないことを憂える松原さん。それがきっかけで、バリスタトレーニングラボを開くことを決めたそうです。Vol.2ではバリスタトレーニングラボについてお話しを伺います
アンリミテッド コーヒーバー
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UNLIMITED COFFEE ROASTERS
アンリミテッド コーヒー ロースターズ
焙煎所:〒116-0002 東京都荒川区荒川1-4-6
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*焙煎所では一般営業は行っておりませんのでご注意下さい。
コーヒーの販売はコーヒーバーにて行っています。
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