ご自宅でおいしいコーヒーを楽しむために、コーヒーの淹れ方や器具の扱い方を基礎から学ぶこのシリーズ。
今回は、コーヒーファンなら誰もが一度は憧れるクラシカルなコーヒー抽出器具、サイフォンのご紹介です。
フラスコ、ロート、アルコールランプといった器具を使った抽出の様子は、まるで理科の実験をしているようで、他の抽出方法にはない不思議なワクワク感がありますよね。
一見難しそうなサイフォンですが、慣れてしまえば意外と簡単で、しかも楽しい抽出器具です。今回はサイフォンの基本の淹れ方をご紹介していきます。
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目次
サイフォンとは?
サイフォンは、19世紀初頭にヨーロッパで生まれたコーヒー抽出器具です。
1840年代にスコットランドの造船技師ロバート・ナピアーが考案したとされる説が広く知られていますが、その一方で1830年代にはドイツで同様の器具を用いた抽出方法が確立されていた、という説もあり、そのルーツについては今も正確にはわかっていません。
日本でサイフォンが広まったのは大正時代で、当時は「コーヒーサイフォン」と呼ばれていましたが、その広がりとともに「サイフォン」の略称で知られるようになりました。
サイフォンのいちばんの特長は、コーヒー豆が持つポテンシャルをしっかりと引き出せること。基本の抽出工程さえきちんとマスターしていれば、ハンドドリップに比べて抽出のブレが少なく、香りや旨味成分の引き立ったコーヒーを淹れることができます。
また、フラスコやアルコールランプといった普段の生活ではあまり目にすることのない独特の器具と、抽出中のユニークなお湯の動きは、まるで理科の実験を見ているようで、他の抽出方法にはない楽しさもその魅力のひとつです。
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サイフォンに使用する器具と材料
サイフォンでコーヒーを淹れる際に必要な器具を紹介いたします。
必要な器具と名称
サイフォンでの抽出に必要な器具は、以下のとおりです。
①サイフォン本体一式
(ロート、フラスコ、スタンド、ろ過器)
②アルコールランプ
③竹べら
④ろ過布(※今回は使い捨てのペーパーフィルターを使用)
サイフォンは器具一式がセットになっているものが便利です。以下の商品はロート、フラスコ、スタンド、ろ過器、アルコールランプ、計量スプーンがセットになっています。
上記の他にドリップスケールもあると、コーヒー豆やお湯の計量が性格に行うことができます。以下の商品は0.1グラムまで計量可能なうえ、タイマー付きで抽出時間も計ることができます。
材料(コーヒーカップ1杯分)
①コーヒー豆:15グラム(中挽き)
②熱湯:160cc(器具を湯煎するためのお湯は分量外)
標準的なコーヒーカップ1杯分に対して、コーヒー豆は15グラムほどが適量。挽き目はペーパードリップよりやや粗めの中挽きにします。
サイフォンでコーヒーを淹れてみよう!
では実際にサイフォンを使ってコーヒーを淹れていきましょう。
手順1:ろ過器を準備する
ろ過器は上下ふたつのパーツがねじ込み式になっているので、一度分離して、あいだにペーパーフィルターを挟んでから再び装着します。
並行してケトルに新鮮な水を汲み、火にかけて沸騰させておきます。1杯分の分量は160ccですが、器具の温めにも使用するので、多めに用意しておきましょう。
手順2:ろ過器をロートにセット
ろ過器に付いているチェーンボールをロート下部の管から引き出し、フックを管の先端部に引っ掛けてしっかりと固定。さらにろ過器がロートの中心に来るように竹べらで位置を調整します。
お湯が沸いたら過器をセットしたロートに少量のお湯を入れてフィルターをリンス。お湯を捨てたら軽くロートに残った水分を軽く拭き取っておきましょう。
手順3:フラスコにお湯を入れて沸かしておく
フラスコがしっかりスタンドに固定されているのを確認したら、フラスコに少量のお湯を入れ、軽く回して温めておきます。
温まったらお湯を捨て、スタンドごとドリップスケールに乗せて、重さを「0」にリセット。160グラム(=160cc)のお湯を注ぎます。
注ぎ終えたらドリップスケールから下ろし、アルコールランプの火にかけて沸かしておきましょう。
なお、フラスコの底が濡れている場合は、火にかける前に乾いた布でよく拭いておくこと。濡れたまま火にかけるとフラスコが割れることがあります。
手順4:コーヒー豆を挽いてロートへ
ドリップスケールでコーヒー粉(※豆の場合は計量後、中挽き程度に挽いておきます)15グラムを計量したら、準備しておいたロートに投入。ロートを軽く左右に揺すってコーヒー粉の表面をある程度平らに均しておきます。
続けてロートの管をフラスコに斜めに差し込み、先端のボールチェーンをお湯に浸して沸き具合を確認します。
ボールチェーンを伝って泡がボコボコと連続して上がってきたら、お湯が十分沸騰している合図。スタンドに手を添え、フラスコを支えながらロートをしっかり垂直に差し込みます。
手順5:お湯が上がってきたら1回目の撹拌
お湯が完全に沸騰するとフラスコ内の気圧が上昇し、お湯が管を通ってロートへと上がっていきます。
お湯がロートへ十分に上がったら1回目の撹拌です。コーヒー粉がお湯によくなじむよう、竹べらで手早く全体を撹拌します。
撹拌後は、アルコールランプをフラスコの中心から少しずらして火力を加減します。
ロートの中で抽出液がグツグツ煮立つことなく、かといってフラスコに落ちていかない程度の火力をキープしてください。
この状態でドリップスタンドのタイマーやストップウォッチを使い、45秒~1分ほど抽出します。
手順6:2回目の撹拌で仕上げ
抽出時間を過ぎたらアルコールランプを消し、すぐに2回目の撹拌を行います。
このときの撹拌のポイントは、ロート内に大きく渦を描くように、手早くソフトに行うということ。
勢いよくグルグル撹拌してしまうと、ロート内にできた抽出液、コーヒー粉、泡の層が混ざってしまい、余計な雑味もいっしょに抽出されてしまいます。
強すぎず早すぎず、適度な力加減で大きく渦を描くように、を心がけてみてください。
ロートの中の抽出液がフラスコにすべて落ちたら出来上がりです。
<POINT>
抽出後、ロート内のコーヒーかすがドーム状に盛り上がり、その表面に細かな泡が浮いていれば、上手に抽出ができたサイン。撹拌が雑だとコーヒーかすがドーム状にならなかったり、ロートの内側に張り付いたりして、雑味の強い味わいになってしまうので、とくに2回目の撹拌は丁寧に行うようにしましょう。 |
やってみると意外に簡単、しかもカッコイイ!
今回はサイフォンの器具と基本の淹れ方をご紹介しました。
サイフォンは見た目の印象こそ難しそうですが、実際やってみると個人の技量に左右される部分は意外に多くありません。むしろハンドドリップのほうが技術的には難しいくらいです。
基本の流れさえきちんとマスターできれば、淹れる度に味がブレることもほぼなく、しかもコーヒーをカッコよく淹れることができる。これこそがサイフォンの魅力なのです。
便利な器具や道具が次々と生み出される今の時代だからこそ、あえてクラシカルなサイフォンを使って、じっくりコーヒーと向き合うのもまた楽しいですよ。
最近ではアルコールランプの代わりにハロゲンランプを熱源にしたビームヒーターや、湯沸かしから抽出までほぼすべての工程を自動でやってくれる電気式サイフォンなども登場しており、サイフォンの魅力をより手軽に、かつ安全に楽しめるようにもなっています。
コーヒーを飲むのも、淹れるのも大好きという方は、ぜひ一度サイフォンを使ってみてください。きっとその魅力と楽しさにハマるはずですよ。
※今回使わせていただいたコーヒー:『珈琲特急便』のブレンドコーヒー