「キリマンジャロ」は、日本のコーヒーシーンでも古くから親しまれているコーヒー銘柄の1つ。「キリマン」などと呼ばれることもあるこの豆ですが、実はタンザニアという国の豆だと知っていましたか?華やかで野性味溢れるキリマンジャロはアフリカのコーヒー産地の中でもユニークな風味を持っていることでファンも多い銘柄です。しかし、なぜ山の名前が冠されているでしょうか。
山岳の名前としても非常に有名なキリマンジャロのコーヒーの、味や生産環境(産地)についてご紹介します。
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タンザニアの名峰「キリマンジャロ」のコーヒーとは?
キリマンジャロは、タンザニアとケニアとの国境付近にある山岳です。アフリカ大陸の最高峰でありその標高は5,895mもあります。セブンサミッツ、つまり七大陸最高峰のなかでは登頂が比較的容易とされ、観光資源としても世界的に有名です。
意外にも、この名前で知られるコーヒーは、実はキリマンジャロ地方で栽培されるコーヒーというわけではなく、タンザニア産全域のコーヒーを広義で指しています。
しかもタンザニアのコーヒーをキリマンジャロと呼ぶのは日本人だけで、「キリマンジャロの雪」というアーネスト・ヘミングウェイの作品がきっかけだとされています。当時、タンザニアという国名は日本ではそれほど馴染み深いものではなかったのでしょう。そのため、日本ではキリマンジャロという名前で扱われていることが多いのです。
タンザニアではキリマンジャロの付近以外でもコーヒー栽培が盛んな農園が点在していますが、それらはほとんどがウォッシュド(水洗式)で精製されるという特徴を持ちます。
キリマンジャロ・コーヒーの味と特徴〜華やかな柑橘の香り〜
キリマンジャロは、キリマンジャロ山やオルディアーニ山という山の中腹、1,500〜2,500mでの栽培が盛んで、高品質だとされています。雨季には降雨量が多く、また高峰の特徴である寒暖差が激しさから、コーヒーの栽培に向いている土地と言えます。
コーヒーの栽培は1900年頃からと歴史が古く、 タンザニアという地域が認知されていなかった時代はアフリカのハブであったイエメンに運ばれ、「モカ」ブランドとして世界へ輸出されていたそうです。
キリマンジャロのコーヒー豆は、アフリカらしい華やかな香りが特徴。柑橘類のフレーバーが強く、また花の香りやアーシーさなども含んでいるために「野性味溢れる」なんていう表現がされることも多いです。コクや苦味は比較的抑えめで、シングルオリジン(ストレートコーヒー)として提供されることが多く、ブレンドベースに用いられることは少ないでしょう。
キリマンジャロの豆はタンザニアコーヒー協会が生産や販売の統括をしています。アラビカ種コーヒー豆の品質基準はサイズスクリーニングによるもので、大きいものから順にAA、A、B、Cとランク分けがされています。日本で「キリマンは豆が大きい」と言われることが多いのは、それが高品質豆だと判断されて輸入されているからなのです。
キリマンジャロ・コーヒーまとめ
キリマンジャロ、改めタンザニアのコーヒーは、「柑橘や花などの華やかさ」「野性味」が特徴と言えるでしょう。ヘミングウェイの影響で日本での人気が特に高く、タンザニアはイギリスとの関係性が大きいことから、ブルーマウンテンと並んで「英国王室御用達」の宣伝文句もよく使われていたそうです。
近年では農園などによって区別して風味を楽しむことが人気。そのため現在「キリマンジャロAA」などとと表現されているスペシャルティコーヒーが、農園の名前や地方で区別されて再評価される日がくるかも。
今後は「キリマンジャロ」という呼称は古いものへと変わっていくのかもしれません。