コーヒー好きな有名人といえば、誰を思い浮かべるでしょうか? モーツァルトやベートーベン、ルーズベルトやデヴィッド・リンチなどの名前をあげることができるかもしれません。しかし、バルザックほどコーヒーを愛し、コーヒーに痛めつけられた人はいないのではないでしょうか。
本記事では、コーヒー狂とも呼べるフランスの文豪バルザックの興味深いコーヒー習慣についてご紹介します。
目次
バルザックの仕事に欠かせないアイテムだったコーヒー
コーヒーを仕事の相棒にしている人も多いでしょう。集中力を高めたり、眠気を追い払ったりするのに役立つコーヒー。51歳でこの世を去った19世紀の文豪オノレ・ド・バルザックも、仕事をする前にはたっぷりとコーヒーを飲んだといわれています。
バルザックは1日50杯ものコーヒーを飲んでいた?
フランス・パリで印刷業と出版業の事業に失敗し、多額の借金を背負った若き日のバルザックは、借金返済のために馬車馬のごとく働かなければなりませんでした。幸いにも作家としての才能が花開き、1829年に「ふくろう党」を、そして同じ年に「結婚の生理学」を続けて発表し、バルザックは流行作家としての人生を歩みはじめます。
典型的な夜型人間だったバルザックは、コーヒーを飲んだ後18時か20時頃には一度就寝し、真夜中1時頃に起きてコーヒーをがぶ飲みしてから執筆作業に取りかかりました。「少なくとも」なのか「多くとも」なのかは定かではありませんが、バルザックは1日50杯ほどものコーヒーを飲みました。バルザック自身、「わたしは執筆をすることが好きだ、だが毎日50杯ものコーヒーを飲むことも大好きなのだ」と述べています。
コーヒーの味にもこだわったバルザック
忙しい生活を送っていたにもかかわらず、バルザックはたくさんコーヒーを飲むだけではなく、おいしいコーヒー豆を求めてパリの街をさまよい歩きました。グルメでもあったバルザックは友人たちを誘ってパリの街へと繰り出し、コーヒー豆を買うためだけに半日から1日を費やしたといわれています。彼はモカやブルボンのコーヒー豆をそれぞれ別の食料品店で購入していました。ほかにも、マルティニックやグアドループ、カイエンヌなどのコーヒー豆を好んで購入していたという記録が残っています。
胃痛に悩まされながらも、濃いコーヒーを好んで飲んだバルザック。バルザックはできるだけ濃いコーヒーを飲むために、水を極端に減らしてコーヒーを淹れたといわれています。ときには、カフェインの効果を最大限得るために、粉にしたコーヒーをそのまま口に含むこともあったのだとか。そのおかげもあってか、バルザックは短い生涯にもかかわらず85作品をこの世に送り出しました。
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1日50杯もコーヒーを飲むことは可能?
ところで、そんなに濃いコーヒーを1日50杯も飲むなんてはたして可能なのでしょうか? コーヒー1杯が200mlだとすると、バルザックは1日に10リットルものコーヒーを飲んでいたことになります。コーヒー200mlには約120mg以上のカフェインが含まれていますから、10リットルものコーヒーを飲むバルザックは1日におよそ6g以上のカフェインを摂取していたことに。カフェインの経口摂取による致死量は3gほどですから、バルザックはたった1日で致死量の2倍以上ものカフェインを摂取していたことになります。
では、バルザックは1日何杯コーヒーを飲むかについて嘘をついていたかというと、決してそうではありません。実は、19世紀当時に使用されていたコーヒーカップは現在のコーヒーカップよりも小さく、バルザックが使用していたのはデミタスカップほどの大きさだったようです。
一般的にデミタスカップの容量は45ml~90mlほど。容量が50mlのデミタスカップでコーヒーを飲んだ場合、1杯当たりのカフェイン含有量は約30mgですから、バルザックは1日に1.5gほどのカフェインを摂取していたことになります。現在の健康な成人の1日のカフェイン摂取量の目安が400mgということを考えると、バルザックのカフェイン摂取量は途方もない量だといえますが、1日50杯コーヒーを飲んでいたのはどうやら本当のことのようです。
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コーヒーを片手に読書に勤しんでみよう
不規則な生活に加え、日常的に多量のカフェインを摂取していたバルザック。「コーヒーがわたしを痛めつける」と認めながらも、生涯コーヒーを飲むことをやめることはありませんでした。晩年には、体調不良によりドクターストップがかかったにもかかわらず、水で薄めたコーヒーを飲んでいたようですから、相当なコーヒー中毒者であったことがわかるでしょう。
もしかすると、毎日のコーヒーが欠かせないというほどコーヒーが大好きな人であれば、バルザックの気持ちが少しは理解できるのではないでしょうか。ときには、コーヒー好きだったフランスの文豪バルザックに思いを馳せながら、読書に勤しんてみるのも良いかもしれませんね。