創業65年。スペシャルティコーヒー専門の焙煎所兼カフェを営んでいる『焙煎香房シマノ』。元々は、代表取締役の島野敬介さんのお父様が創業し、コーヒー豆の卸事業をしていました。約20年程前から「一般の人にも農園や土地の個性などによってコーヒーの味が変わることを知ってもらいたい。」との想いから、コーヒー豆の小売りを始めたという。
島野さんは、自身のことを「コーヒーマニア」と言うほど、コーヒーへの熱い情熱を持っています。そんな島野さんにコーヒーへのこだわりや、福祉への考え方をお伺いしたところ、とても素敵なお話が聞けたので、皆さんにも是非読んでいただきたいです。
焙煎香房シマノのインタビューは2記事に渡って紹介します。
今回の記事では、島野さんのコーヒーへのこだわりや、最近オープンしたばかりの福祉カフェについてお伝えしていきます。
伝えたいコーヒーへのこわだり
焙煎香房シマノは基本的に、スペシャルティコーヒーに特化して豆の販売を行っています。
常時扱っている生豆は30~40種類にも及ぶという。
—— コーヒーへのこだわりを教えてください。
こだわりとしては、コーヒーの『甘み』を感じて欲しい。
僕は、農園さんが環境や、乾燥方法、品種などを考慮しながら試行錯誤し、作り上げた生豆の状態が100点満点の豆だと思っている。それを焙煎して、カップにしたときに如何に減点をさせずに、コーヒーのカップにできるかと思っていて、よく、「自分の腕で120点のコーヒーに安定させる」みたいな人もいるけれど、僕は逆だと思ってるんです。
100点の生豆を、100点のまま焙煎して、お客様へ100点のままバトンを渡したい。
減点なく淹れて貰ったら、100点のまま飲めるので、これが究極の理想なんですよ。
だから、お客様に淹れ方まで指導してくださいって言われたら、指導もしています。
カフェを併設したのも、ドリップしているところを見せれるようにという理由もあります。
就労継続支援B型カフェのオープン
焙煎香房シマノは、焙煎所の店舗を改装し、新たにカフェ・B 型作業所を併設した施設をオープンしました。
—— 就労継続支援B型カフェをオープンした理由について教えてください。
元々は、飲食関係の知人が、『食』を繋げて、障がい者の人たちが笑顔になるような活動をしたいっていう事で、NPOを立ち上げようとしていたんです。そこに、僕もお手伝いさせてもらえないかって言って、十数年前からボランティアというかたちで、障がい者の人が働くカフェの立ち上げのお手伝いや、障がい者の人たちが働く訓練をするところに、僕はコーヒーのプロとして指導をしていました。
例えばなんですけど、車椅子の方とか、盲導犬や補助犬とか連れている方って、「この店入っていいかな?」って躊躇するんですよね。
僕ら飲食店側は、自分が作っているものを分け隔てなく皆に楽しんでもらいたいっていう気持ちがあるので、障がいを持つ方が、「車椅子で入っていいかな?」「犬連れて入っていいかな?」って思うのを、お店側が意思表示をしてあげることで、躊躇せず入りやすくなるなら手を挙げるべきじゃないかみたいな話をしてて、そういう活動をしていく中で、障がいのある人が楽しく過ごせたら良いなと思っていました。
そんな時あるきっかけがあって、今まで通りの活動が難しくなったんです。
そうなったら、もうここをその形にしてしまえば、今までやってきた事も続けてできるし、来てくれる人達もここでハッピーになれば、皆が幸せになれる。と思ったんです。
そしたら、NPOで一緒に活動してきた人たちや、僕の家族や、今までの人間関係で助けてくれる人が出てきてくれて、「何かできそうだな」って思って、就労継続支援B型カフェという形に変えられたんです。
—— めちゃくちゃ素敵なお話ですね。
飲食業をしていると、お客様の「美味しかったよ」っていう言葉とか、笑顔がすごいモチベーションになるんです。
何故、NPOで障がい者の方々を応援していたかって言うと、障がいがあるから仕事ができないって、内職仕事や袋詰めの仕事をしているよりも、直接「美味しかったよ、また来るね」って言ってもらえる仕事の楽しさを感じてもらいたかったんですよ。
だから、B型作業所のカフェだから、味はこんなものでいいだろって妥協するんじゃなくて、とびきり美味しいものを作って、「ここB型作業所のカフェだったんだ」って後から気付くくらいのハイレベルな飲食店になれば、自然とお客様が来てくれるし、「美味しい」って本気で言ってくれるから、その楽しさを障がいを持ってる人たちにも感じてもらいたくて応援していたんです。
今一番の夢は、うちのカフェに利用者として働きに来てくれた方に焙煎を教えて、いつか家族を巻き込んで、生計が成り立つところまで応援できたらいいなって。1人では無理かもしれないけど、家族を巻き込めば可能性があるから。
——その方の人生に寄り添うようなかたちですね。
そうですね。
改装が終わって、ちょっとずつ始めています。
メニューも完全には出来上がっていなくて、ちょっとずつ新しいものができれば。
今もワッフルをみんなで試作していて、色んな事に少しづつチャレンジしているかんじ。
——オープンから間もないですが、順調に進んでいますか?
そうですね。自分が想像していたぐらいの感じにはなっています。
何より利用者の方たちに充実感を感じて仕事をして欲しい。笑顔で「明日も来ます」って言って帰ってくれるのが、僕はすごく嬉しいので。
スペシャルティコーヒーに対する考え方
——扱っているコーヒー豆はスペシャルティコーヒーだけですか?
基本的にはそうです。皆さん当たり前のようにコーヒーを飲んでいるんですけど、「品種」っていうのを知らない人が多いし、乾燥方法とか農園さんの作り方やテロワール(土地の特性)とかで味が変わってくるっていうことを知ってもらえたら良いなと思って、自分が持ってる情報は全て出そうと思って、やっているんです。
——こだわりはありますか?
あまりこだわっていなくて、そのときそのときで常にアンテナを張って探している状態です。ずっと買い続けてる豆もあれば、今年のは出来がいまいちだなと思ったら買わない時もある。
正直、スペシャルティコーヒーって高いってイメージあるじゃないですか?
でも、飲んでもらわないと意味が無いと思っていて、せっかく農園さんが頑張って作ってくれたコーヒー豆を高い値段で付加価値つけて売っても、飲んでもらえなくて眠っているのはもったいない。だから、「こんな美味しいコーヒーをいっぱい作っている農園さんが居るんですよ」っていうのを知ってもらいたいので、価格はそんなに高く出していません。
——正直、安いと思いました。どんな豆を扱っているんですか?
うちはあまり賞を獲っているような豆を扱っていないんですよ。
僕の基準は、”値段に味が見合うか”を大切にしている。
賞や認定承認を獲ると、豆の値段が上る。でも僕は、賞や認定承認を受けているから美味しいというのをあまり考えていなかった。
美味しいコーヒーを作るためにこだわって、手間暇かけて作ってる農園さんを沢山見てきたし、農園さんがどういう作り方をしてるかで美味しさが決まる。僕は、実際に情報として聞いたり、農園さんへ足を運んでその姿を見てきたので、賞や認定承認は無いけど、実はものすごくちゃんと作っていて、美味しいよって農園さんをリスペクトしてて、そうゆう豆を選んでいます。
まとめ
コーヒーに関しての考え方もさることながら、福祉に対しての考えにとても感銘を受けました。カフェのオープンも「結局は、美味しいものを楽しんで欲しい。単純なんです。」という島野さんに、シンプルな理由の中に深い意味があると思いました。
実際にカフェにお邪魔し、取材中にはひっきりなしにお客様が来店されていました。働いている方々の暖かい雰囲気に、島野さんが言う、「みんながハッピーになれる場所」というのが既に実現出来ているように感じました。
カフェでは、毎日違うコーヒーを出していて、私たちが頂いたのは「ニカラグア スウィートベリー ワイニー」でした。この豆のお話も詳しく聞いてきたので、次の記事ではコーヒーについてのよりマニアックなお話をお伝えしたいと思います。
焙煎香房シマノのInstagramでは、コーヒー豆やカフェの情報が載っていますので、チェックしてみてください。
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