理由はいくつかありますが、やはり『コーヒー豆』という農産物の特性が要因となっています。
上記の図を順に解説していきます。
目次
【コーヒー農園】
『コーヒーノキを栽培し、コーヒーチェリーを収穫する』←ここまでのプロセスを行うのがコーヒー農園です。
農園は収穫したコーヒーチェリーを【仲買人】が【※精製業者】に販売します。
※精製業者...コーヒーチェリーの皮を剥いたり、欠点豆を取り除く業者
【仲買人】
コーヒー農園からコーヒーチェリーを買い取る業者です。
農園から買い取ったコーヒーチェリーを【輸出業者】に販売します。
【輸出業者】
コーヒー消費国の窓口になります。
主にコーヒーの生豆を※『穀物メジャー』といった【商社】に販売します。
※穀物メジャー...コーヒー豆を始め、大豆やとうもろこし、小麦などを輸入する商社群。一時期、世界の70%の穀物を取り扱っていました。
【商社】
世界各国のコーヒー産地から生豆を買い取りストックし、注文に応じて焙煎業者や生豆問屋に販売します。
【焙煎業者】
商社から買い取った生豆をカフェやメーカーの注文に応じて焙煎し販売します。
以上が主にコーヒーの一般流通に関わる人たち(会社・業者)になります。
また、細かく言うと、ほとんどのコーヒー豆はコーヒーベルトという熱帯地域で生産されており、収穫・精製・ハンドピック(欠点豆の除去)という作業を自国で行っています。
この一連の流れだけでも2社以上の企業が関与しています。
もちろん、自社農園や精製工場などを持っている企業などもありますが、世界に流通しているコーヒー豆のほとんどは数多くの経路を辿り消費者である私たちの元に届くのです。
生豆が『コーヒー』になる最終工程とは?
上記の図で【農園】⇒【仲買人】⇒【輸出業者】⇒【商社】まではなんとなく分かると思いますが、【焙煎業者】というのは聞き慣れない方も多いと思います。
ここでは、焙煎業者について少し触れてみましょう。
私たちの身近にある農産物――例えば大根や人参。これらは収穫・洗浄・検品された後、箱に詰められ出荷されます。
収穫後、店頭に並ぶまでの行程は2、3つです。
ーーしかし、コーヒー豆はどうでしょうか。
コーヒーチェリーから生豆を取り出し、精製・検品・袋詰めした後、焙煎します。
この最終行程の【焙煎】を経てコーヒー豆はようやく「商品」として店頭に並ぶのです。
この【焙煎】という行程は専門の業者が行います。
それら業者のことを『焙煎業者』または『ロースター』と呼びます。
日本国内にも焙煎業者(または、焙煎を行っている店)は大中合わせて数千社あると言われています。
国内の焙煎業者の多くは焙煎だけを行っているわけではなく、カフェの食品や備品を販売・配達するといった業務も行っています。
少し話しが逸れましたが、コーヒーの流通経路の話に戻りましょう。
次項ではコーヒーの新たな流通経路『ダイレクトトレード』について解説していきます。
ダイレクトトレードという流通経路とは?
コーヒーの流通経路に多くの業者が関与しているということは『中間マージン』も多く発生していることになります。
そのしわ寄せは流通経路の後に位置するほど受けやすい傾向にあります。
特に流通の最後尾に位置するカフェといった小売店は原価の数十倍の価格でコーヒー豆を仕入れている例も少なくありません。
ですが、既存の流通経路を辿らず、コーヒー農園と直接取引をする【ダイレクトトレード】を行うカフェが現れます。
サードウェーブの立役者と言われる『ブルーボトルコーヒー』もダイレクトトレードを採用しているカフェの1つです。
ダイレクトトレードのメリットは中間マージンの削減だけではなく、農園と直接繋がることで良質な豆や希望の品種をリクエストしやすくなることなども挙げられます。
また、農園側もリクエストに応えることで苗代や人件費、肥料費などをコーヒー豆の価格に反映させるメリットがあるのです。
......ここまで聞くと悪い点は見えませんが、じつはダイレクトトレードには落とし穴があるのです。
ダイレクトトレードの裏・表
もしも、取引しているカフェが事業縮小もしくは廃業してしまったら、ダイレクトトレードによる利益は減少、もしくは0になるリスクが出てきます。
一方で輸出業者の豆の買取価格は安価ですが、世界各国に数多くの顧客を抱えているので倒産のリスクはほぼありません。
つまり、いつでも収穫した豆を買い取ってくれるという安心があるのです。
また、ダイレクトトレードは買取側にもデメリットがあります。
コーヒーの栽培はその年の気候により品質や収穫量が大きく変化します。
悪天候が続いた年は、『希望の品質を保てるのか?』『必要量の豆を購入できるのか?』という問題が出てきます。
通常の流通経路の場合【商社】がコーヒー豆を大量にストックしているので、その心配はありません。
複雑な流通経路が簡易化されない理由はそこにあったのです。
しかし、現在の流通経路の問題点として【コーヒー農園】が不当に豆を安く買い叩かれているという問題があります。
これは、生産側の途上国、消費側の先進国が生んだ「南北問題」が原因なのですが、この問題の解決に取り組む『フェアトレード』という流通(活動)があります。
次項ではフェアトレードについて解説していきます。
コーヒー農園を救おう!公平な取引『フェアトレード』について
コーヒーの流通においてこの言葉が生まれた背景にはアンフェアなトレードが横行しているからです。
前項で触れたように、コーヒーの生産国と消費国には大きな格差があり、弱い立場である生産国は労力に見合わない価格でコーヒーを買い取られている事例が多く見受けられます。
そんな現状のなかコーヒー農園が利益をあげるには『より多くコーヒー豆を収穫する』ということになります。
収穫量を上げるため木々を伐採し畑を拡張したり、農薬を大量に散布したり、人件費を浮かせるため低賃金で労働者を雇うなど様々な問題が浮上しているのです。
こういった問題に向き合っているのが『フェアトレード』を掲げる団体です。
主な活動内容(農園との契約)として見られるのが『適正な環境で作ったコーヒー豆には対価を支払う』、『あらかじめ買取保障額を設定する』などが挙げられます。
フェアトレードはコーヒーの未来のため必要な流通の在り方ですが、消費者による低価格のコーヒーの需要や既存のブランドコーヒーの信仰などによって、まだまだ一般的な流通とは言えません。
では、フェアトレードコーヒーはどのような未来を辿るのでしょうか。
その答えは消費者である私たちが決めることなのかもしれません。
コーヒー産業、ビジネスで最後に泣くのは誰だ?!
考えたこともなかった。
夜コーヒーが飲みたくなり、自動販売機に向う。130円。
この金額の内、コーヒー農家にはいくら入るのだろうか?おそらく10%未満であろう。
これはシステムだ。
流通の真ん中にいる人間たちが『この国の人間はこのくらいの価格でコーヒーを買う。この国の人間はこのくらいの価格でコーヒー豆を売る』と一生懸命考えたシステムなのだ。
そんなシステムをすぐに壊せるのだろうか? 夜コーヒーが飲みたくなり、自動販売機に向かう。300円。僕は買わない。きっとコーラでも飲むだろう。
もしかしたらこの300円が業者にもコーヒー農園者にも利益をもたらす適正な価格なのかもしれないが、一度植えつけられた相場価格というのはなかなか変えることができない。
確かに途上国のコーヒー農園の現実はとても心苦しく思う。
しかし、僕らはどこまでその現実に関心を寄せられるのだろうか?
心苦しい・可哀想なんて言葉なら何回でも言えるが、「じゃあ、今度から恵まれないコーヒー農園を支援するために数百円高くコーヒー買ってね」と言われても素直に頷くことはできないだろう。
これは主観の話ではない。
事実、フェアトレードコーヒーのシェアは取引市場全体の1%にも満たないのだ。
では、このまま既存の流通が続くのであろうか? それはコーヒー農園の人次第ではないだろうか。
そもそも、仲買人が豆を安く買い叩いてると批判されているが、農園の人がそれに応じているという事実もある。
べつに嫌なら売らなきゃいいわけだし、農園をやめてもいいわけだ(実際に廃業者は多い)。
少し極端な物言いになってしまったが、農園と売り手の間にはある種の妥協点があって、ビジネスとして成り立っているのではないだろうか。
もしも、農園の人が売り渋ったり廃業した場合、コーヒーの輸出量や生産量は下がる。
そうなるとコーヒー豆の価格は高騰する。当然130円じゃ缶コーヒーも買えなくなるかもしれない。
流通の真ん中にいる人間たちがその状況を放っておくはずがない。頭の良い人たちなのだから事前に対策を練るだろう。
その対策によって誰かが貧乏くじを引く。
これはコーヒービジネスだけではなく全てのビジネスにおいても言えることだ。
『途上国』『劣悪な労働環境』『人権問題』この言葉が出てくると、得てして人は安いヒューマニズムに駆られてしまうが、この言葉に惑わされず僕たちはコーヒービジネスに参加している登場人物のことをもっと知るべきだ。
これは主観だがなんとなく悪役はいないような気がする。