コーヒー生産

コーヒー豆の元となるコーヒーチェリーを実らすのは『コーヒーノキ』という植物です。

日本でコーヒーノキの栽培を見たことのある人はほとんどいないかと思います。コーヒーノキはコーヒーベルトと呼ばれる地域でしか育たず、日本はコーヒーベルトに含まれていません。

 

このコーヒーベルトとはどこの地域を指すのでしょうか。

地域によってコーヒー豆の味はかわってくるのでしょうか。ここではコーヒーベルトやコーヒーの産地などを紹介します。

コーヒーの栽培で欠かせない条件とは?生産可能なコーヒーベルト内の地域

上の図の赤い線で区切られているところが『コーヒーベルト』と呼ばれるエリアです。

主にこのエリアは熱帯、亜熱帯地域と呼ばれておりコーヒーの生育に適した気候です。

 

具体的にコーヒーノキに最適な気候状況とは平均気温15℃~25℃、年間の降雨量は1500~2000mm、標高1000~2000m(※品種によっては1000m以下の熱帯低地を好む品種もあります)、湿り気はあるが霜が降りず水はけの良い土壌とされています。

この条件を満たした①~⑳の地域とその産地のコーヒー豆の特徴を解説していきます。

①〜⑧ ブラジル・カリブ海の地域【生産ランキング】

①ブラジル【生産量第1位】

世界のコーヒー豆生産量の30%を占めるコーヒー大国ブラジル。

ブラジルのコーヒー豆はNo.2~8と等級が分かれており、数字が小さいほど欠点豆が少なく上質な豆とされています。

味は全体的に酸味が少なくまろやかなテイストです。基本的にブラジル産の豆の名前は『ブラジル』と表記されていますが、なかには『サントス』と表記されている商品もあります。

 

これはコーヒー豆の貿易が多いブラジルのサントス港から輸出されたものを指します。苦味・酸味・コクのバランスが取れており、癖がなく安価なのでブレンド豆としてよく使われています。

 

②コロンビア【生産量第3位】

日本国内でもよく飲まれている『エメラルドマウンテン』の生産地がコロンビアです。エメラルドマウンテンはコロンビアのコーヒー豆の生産量わずか3%ほどの高級豆なのですが、他の品種(スプレモ、ナリーニョ、エキセルソ等)も甘味がありつつ、繊細な苦味やコクといった味わいを感じさせます。

 

酸味が強くない品種が多いのでブレンド豆にもよく用いられます。また、エスプレッソ用の豆にもおすすめです。

 

③コスタリカ【生産量第16位】

コスタリカのコーヒー豆の輸出は主要な財源の1つに数えられ、国を挙げてコーヒー豆の栽培に力を注いでいます。

その取り組みは徹底されており、有名なものでは※アラビカ種以外の品種の生産を禁止というものまであります。

そのため、コスタリカ産の豆は非常に上質とされ、生産された豆の約50%がスペシャリティコーヒーとして流通しています。

味は濃厚なコク、苦味を感じさせ酸味も強く香り高いと評されます。

 

また、豆は6つに等級分けされており、栽培された標高が高いほど高級豆とされています。最高級とされるのがSHQ(Strecity Hard Bean)と表記されている豆で標高は1200~1600m、続いてGHQ(Good Nard Bean)は標高1000~1200m、HB(Hard Bean)は標高800~1000m、MHB(Medium Hard Bean)は標高900m以上、HGA(High Grown Athlantic)は標高600
~880m、MGA(Low Grown Athlantic)は標高150~600mとランク付けられています。

 

※アラビカ種...世界で流通しているコーヒーの品種はアラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種に分かれており、そのなかでもアラビカ種が味や品質に優れていると言われています。

ロブスタ種は独特の苦味や香りがありストレートで飲まれることはほとんどなく、主にインスタントコーヒーや缶コーヒーの豆として使用されています。リベリカ種は栽培が難しく、偏りのある味なのでほとんど生産されていません。

 

④エルサルバドル【生産量20位以下】

火山地帯が多いことで知られるエルサルバドルの土壌はミネラルが豊富でコーヒー豆の栽培に適しているとされています。また、多くのコーヒー農園が※シェードツリー(木陰栽培)といわれる伝統的な栽培方法を採用しています。

 

豆の特徴は甘味があり、まろやかな味わいでやや酸味がある上品なコーヒーと評されます。また、ナッツやミルクチョコレートといったフレーバーを感じさせることでも知られています。

 

※シェードツリー農法...原生林に近い状態で栽培を行い、森林に近いシェード(木陰)を保ち、有機栽培かつ、収穫もすべて手摘みで行う栽培方法。

 

⑤グアテマラ【生産量第9位】

降雨量や日照時間、山岳地帯、火山灰土壌とコーヒー豆の生育に適した土壌を持つグアテマラ。エルサルバドルと同じようにシェードツリー農法を採用している農園が多く品質の高い豆を多く生産しています。

 

グアテマラ産のコーヒーは柔らかなコクと酸味、甘いフレーバーを特徴としており、ブレンドコーヒーのベースとしても使われることがあります。

 

豆の等級は6段階に分かれており、最高級とされる豆はSHB(Striethy Hard Bean)と表記され、標高1370m以上の高地で栽培されていることを示しています。

続いてHB(Hard Bean)は標高1220~1370m、SH(Semi Hard Bean)は標高1070~1220m、EPW(Extra Prime Washed)は標高910~1220m、PW(Prime Washed)は標高760~910m、GW(Good Washd)は標高600m以上で栽培された豆を指しています。

 

⑥メキシコ【生産量第11位】

メキシコのコーヒー農園は温帯の南部に集中しており3段階に等級分けされている場合があります。

最上級の豆はSHG(Striethy High Grown)と表記され、標高1700m以上の高地で栽培されていることを示しています。

続いてHigh Grown(HG)は標高1000~1600m、Standardは標高700~1000mの地域で栽培された豆を指しています。

 

また、農園の名前で表記されていることもあり、なかでも『メルセデス農園』は良質なコーヒー豆を作ることで知られています。

メキシコ産のコーヒーの味は口当たりがよく、苦味・酸味・コクのバランスが優れていると言われています。香りはビターチョコレートに例えられ、飽きのこない優秀なコーヒーです。

 

⑦ホンジュラス【生産量第6位】

ホンジュラスは国土面積の順位世界100位以下と小さな国ですが、コーヒーの生産が盛に行われています。

理由としては温暖で豊かな土壌、山岳地帯が多いということが挙げられます。

 

豆の特徴として深煎りにすると酸味が無くなり、深い苦味を醸しだします。

風味は非常にフルーティーとされ、ドライフルーツなどに例えられています。香り高くブレンドコーヒーによく用いられます。

 

豆は3段階でランク分けされており、最上級の豆はSHG(Striethy High Grown)と表記され、標高1500~2000mの高地で栽培されていることを示しています。続いてHG(High Grown)は標高1000~1500m、Standardは標高700~1000mの地域で栽培された豆を指しています。

 

⑧ジャマイカ【生産量20位以下】

ジャマイカのコーヒーと言えば『ブルーマウンテン』があまりにも有名です。

 

このブルーマウンテンというのはジャマイカにある山の名称です。

山岳地帯のジャマイカのなかでも1番標高の高い(2256m)ブルーマウンテンは亜熱帯海洋性気候というコーヒーの栽培に適した環境となっています。ジャマイカ産のコーヒーは味に深みがあり、やや酸味を感じさせ強い甘味があることが特徴です。

⑨~⑬ アフリカ・中東の地域 【生産ランキング】

⑨コートジボワール【生産量15位】

かつてコートジボワールは世界第3位のコーヒー豆の生産地でしたが、2003年の『第1次コートジボワール内戦』によって情勢は悪化。

主要だったコーヒー産業も一時停滞してしまい、現在のランクにまで下がってしまいました。

もともとコートジボワールはコーヒーの栽培に適しているとは言えず、高品質のアラビカ種の栽培より、比較的栽培が簡単なロブスタ種の栽培に注力を注いでいます。

 

味は苦味が強く、スパイシーなのでストレートには向いていません。コートジボワール産の豆はブレンドやインスタントコーヒーなどに用いられることがほとんどです。

 

⑩タンザニア【生産量第19位】

国名よりも『※キリマンジャロ』という名称のほうがコーヒーを連想しやすいかと思います。

キリマンジャロはタンザニアにそびえる山の一つで、豆の栽培は標高1500~2500m付近で行われています。

 

タンザニア産のコーヒーは強い酸味を持っており、ほのかに甘味も含みます。飲み口はあっさりとしており、甘い香りが特徴です。ローストレベルはミディアムロースト~ハイローストが適しているとされ、ストレートでの飲用に向いています。

 

※キリマンジャロ...豆の銘柄は『タンザニアAA』と表記されている場合もあります。

 

⑪ケニア【生産量20位以下】

ケニアがコーヒーの生産を始めたのは19世紀末と歴史は浅く生産量はそこまで多くありません。

ですが、コーヒーの栽培や流通などの研究に力を入れ、ヨーロッパ諸国では『タンザニア産のコーヒー=高級品』と評価されるまでになりました。

 

タンザニア産のコーヒーは酸味が強く、やや苦味を感じさせます。

飲み口はとても爽やかで柑橘系のフルーツに例えられるほどです。また、深煎りにするほど甘味が増すという特徴を持っています。

 

⑫エチオピア【生産量第5位】

エチオピアはコーヒーの起源『カルディ伝説』の舞台になった国です。古くからコーヒーの生産が盛んに行われており、そのコーヒーの香りは世界最高峰と評されています。

 

味は豊かな酸味を持ち、苦味や甘味は控えめです。ですので、エスプレッソよりもストレートで飲むとその風味をより強く感じられます。ローストレベルは本来の香りを損なわないミディアムロースト~ハイローストがおすすめです。

 

⑬イエメン【生産量20位以下】

イエメンはエチオピアに次いで古くからコーヒー豆の栽培を行っている国です。『モカ』という豆の銘柄を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

モカというのはかつてイエメンにあった『モカ港』が由来となっており、そのなかでも厳選された豆を『モカ・マタリ』と表記されています。

その香りは花のような香りと評され、上品な酸味を含んでいます。独特のコクと風味があり一部のコーヒー通から絶大な支持を受けています。

⑭~⑱ アジア・オセニアの地域【生産ランキング】

⑭インド【生産量第7位】

あまりコーヒーのイメージがないインドですが、じつは年間約30万トン以上もコーヒーを生産しているコーヒー大国です。インドは非常に温暖な気候で日照量がとても多いことでも知られています。

 

強すぎる日光はコーヒーの生育の妨げになってしまうので、多くの農園はシェードツリー農法を採用しています。また、生産されるコーヒー豆はアラビカ種とロブスタ種が半々なので、一口にインド産と言ってもその味は大きく異なります。

 

アラビカ種の味はすっきりとした口当たりで、控えめな酸味、癖のない風味と飲む人を選びません。ですので、個性の強い豆とのブレンドとして用いられることがあります。

 

⑮中国【生産量第13位】

世界上位の生産量、スペシャリティコーヒーとして作られた豆は高い評価を得ている中国産のコーヒー。

ですが、中国でコーヒー豆の栽培・生産が本格化されたのは20世紀末と最近の出来事なのです。

 

これは国家の政策や急激な経済成長などが理由とされています。中国でコーヒーの栽培に適した地域は少なく、ほとんどのコーヒー豆は雲南省 思芽区という地域で作られています。

ですので銘柄の名前も『中国 雲南』と名付けられています。味はすっきりとしており、アーモンドに似たフレーバーを持っています。酸味・苦味は控えめなのでとても飲みやすいコーヒーです。

 

⑯ベトナム【生産量第2位】

ネスレ社の支援によってコーヒーの生産量が飛躍的に伸びたベトナム。そのほとんどの豆はロブスタ種であり、主にインスタントコーヒーや缶コーヒーに用いられています。つまり、ベトナム産の豆は単体で売られていることがほとんどないのです。現地でもストレートで飲む人は少なく『※ベトナム式コーヒー』という特殊な飲み方がされています。

 

※ベトナム式コーヒー...焙煎中に砂糖やバター、カカオなどを加え、さらに抽出後コンデスミルクを加えるというベトナムならではの甘いコーヒー。

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⑰インドネシア【生産量第4位】

インドネシアは一年を通して一定の湿度を保ち、火山による肥沃な土壌がコーヒーの生育に適しているとされています。

 

生産される豆の90%はロブスタ種なのですが、アラビカ種である『マンデリン』、『カロシ』『トラジャ』といった豆も少量ですが生産されています。

なかでもマンデリンは世界的に好評を得ているコーヒー豆で、口当たりが柔らかく控えめな酸味、濃厚なコクと苦味を持っています。

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⑱オーストラリア【生産量20位以下】

オーストラリアはコーヒー豆の生産よりもカフェの文化が発達しており、そのレベルの高さはあのスターバックスコーヒーが撤退するほどです。

 

コーヒー豆の生産は小規模ですが、クオリティは高く『オーストラリア マリーバ』という銘柄のスペシャリティコーヒーを流通させています。

フルーティーなフレーバで上品な酸味を持ち、軽い口当たりと評されています。

 

⑲・⑳...ハワイ・日本のコーヒーってどんなコーヒー?

⑲ハワイ【生産量20位以下】

アメリカでコーヒーの栽培を商業ベースで行っているのは温暖なハワイ諸島だけです。オアフ島、カウアイ島、マウイ島、ハワイ島でコーヒーの栽培は行われていますが、特に有名なのはハワイ島コナ地区で作られているコナコーヒーです。

 

コナ地区は火山灰による肥沃な土壌や降水量、気温、日照量がコーヒーの生育に適しています。コナコーヒーは柑橘系の香りと強い酸味が特徴のコーヒーで『キリマンジャロ』『ブルーマウンテン』と並ぶ世界3大のコーヒーと評されています。

 

⑳日本【圏外】

日本はコーヒーベルトから大きく外れる位置にありますが、比較的温暖な小笠原諸島や沖縄でごく少量のコーヒー豆が生産されています。台風による被害などを懸念して、どちらの地域も200kgほどしか生産されていません。

 

この貴重なコーヒーは数量限定ですが、東京のカフェ『アパショナート』で飲むことができます。なかなか飲む機会の少ないコーヒーなので気になる方は是非、一度飲んでみてください。

 

コーヒーのパッケージから情報を読み取ろう

コーヒーのパッケージには豆の生産国を表記することが義務付けられています。

上の図は一例ですが、左は(豆)という表記から焙煎されただけの豆ということが分かります(挽豆ではない)。

また、原材料はブラジル、コロンビア、その他の地域のコーヒー豆を使っていることが読み取れます。

そして、右の表記は豆ではなく、インスタントコーヒーということが分かります。原材料はブラジルのコーヒーのみということになります。

 

今回、紹介した産地で気になったところがあれば、裏面のパッケージを参考にコーヒーを買ってみましょう。

いろいろな産地の味に興味をもつとコーヒーショップに行くことが楽しくなります。ぜひ、自分好みの産地を見つけてください。

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