コーヒー専門店に一歩足を踏み入れると、豊かなコーヒーの香りに包まれると同時に、コポコポと音を立てるレトロなサイフォン式コーヒーメーカーに目が留まるかもしれません。優雅なデザインが特徴のサイフォン式コーヒーメーカーは、コーヒーの抽出方法がドリップ式とは大きく異なります。
本記事では、サイフォン式コーヒーメーカーの歴史と仕組み、さらにコーヒーの特徴をご紹介します。
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目次
サイフォン式コーヒーメーカーが誕生した背景
サイフォン式コーヒーメーカーはどのようにして生まれたのでしょうか、その歴史をご紹介します。
あくなき追求の果てに生まれたコーヒーメーカー
コーヒーが初めてヨーロッパに伝わったのは、17世紀初めのこと。当時のコーヒーの飲み方としては、煮出したコーヒーの上澄みを飲むトルコ式が一般的でした。その後、「もっとおいしいコーヒーを飲みたい」という願いから、フランスで浸漬式が考案されます。浸漬式はいわゆるティーバッグのようなもので、コーヒーの粉を入れたリンネルの袋をお湯の中に浸してコーヒーを作りました。
浸漬式でコーヒーを作ると、コーヒー豆の滓がカップ底に残るトルコ式に比べてかなりなめらかな口当たりになるものの、コーヒーの苦さが強調されすぎてしまうという欠点がありました。そこで考案されたのが、ドリップ式のポットやサイフォン式コーヒーメーカーでした。
180年ほどの歴史を持つサイフォン式コーヒーメーカー
1830年代前半、ベルリン出身のLoeff氏がサイフォン式コーヒーメーカーの特許を申請しました。その後、サイフォン式コーヒーメーカーはヨーロッパを中心に広まり、フランスやイギリスなどで次々と改良されたサイフォン式コーヒーメーカーが発表されていきます。
1840年、フランス・リヨン出身のマダム・バシュー(本名:Marie Fanny Amelne Massot)が、「ダブル・グラス・バルーン」のコーヒーメーカーの特許を申請しました。現在のサイフォン式コーヒーメーカーの原型であるマダム・バシュー作のコーヒーメーカーは、商業的に成功を収めてヨーロッパで人気を博します。
また時を同じくして、イギリス人造船技師のロバート・ネイピアも独自に改良したサイフォン式コーヒーメーカーを発表します。1856年にはネイピア氏の作ったコーヒーメーカーが、世界中のエンジニアの発展と進歩を応援する団体「The Institution of Mechanical Engineers」から賞を贈られます。こうして世界的に広く知られるようになったサイフォン式コーヒーメーカーは、1925年頃に大々的に日本に輸入されるようになり、日本の喫茶文化を形作る一翼を担うことになりました。
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サイフォン式コーヒーメーカーの仕組みと魅力
見ているだけで楽しいサイフォン式コーヒーメーカーですが、一体どのような仕組みになっているのでしょうか。コーヒーが抽出される仕組みとサイフォン式コーヒーメーカーの魅力についてご紹介します。
蒸気圧を利用してコーヒーを抽出
サイフォン式コーヒーメーカーの名称は、管(ギリシャ語でサイフォンという)を使って液体を高い地点を通らせながら目的地まで導くメカニズムの「サイフォンの原理」に由来しています。蒸気圧を利用してコーヒーを抽出するサイフォン式ですが、その仕組みはとても興味深いものです。
まず、コーヒーメーカーを加熱するとフラスコ内部の水が沸騰し、蒸気圧が発生します。蒸気圧の力により沸騰したお湯は上部に移動し、そこでコーヒーの粉と混ざり合います。その後加熱をやめると蒸気がなくなるため、下部のフラスコ内が真空状態に。そうして真空状態による吸引が起こりますが、フィルターを通ってろ過されるためコーヒーのみがフラスコ側に移動します。
まろやかで香り高いコーヒーと華麗な演出が魅力
サイフォン式コーヒーメーカーを使うと、コーヒーの出来上がりの温度が90℃以上になることも。高温になるサイフォン式は、ドリップ式で淹れるよりも香り高いコーヒーを楽しむことができるのが特徴です。また、蒸気圧を利用してコーヒーを浸漬するサイフォン式は、コーヒーオイルが抽出されやすくなります。そのため、高温の状態から飲みやすい適温になるとまろやかな口当たりになり、コーヒー本来の豊かな風味を味わえます。
しかしながら、サイフォン式のコーヒーメーカーの魅力はコーヒーの味だけに止まりません。コーヒーを淹れることそのものが華麗な演出になるのも、サイフォン式の魅力です。サイフォン式コーヒーメーカーが流行する前のヨーロッパでは、キッチンでコーヒーを淹れてからダイニングルームで提供されるものでした。それがサイフォン式の登場により、コーヒーを淹れる場所がキッチンからダイニングルームへと移動し、目の前で素晴らしいパフォーマンスを楽しみながら味わうものへと変化しました。
抽出方法の違うコーヒーを味わう楽しみを
コーヒーを淹れる方法はいくつかありますが、同じコーヒー豆でも抽出方法により味わいが違ってきます。ドリップ式で淹れたコーヒーの味とサイフォン式で淹れたコーヒーの味を比べれば、きっと新たな発見があるはずです。なによりも、コーヒーを抽出する過程までもがパフォーマンスとして楽しめるのがサイフォン式の良いところ。ぜひコーヒー専門店を訪れた機会には、サイフォン式コーヒーメーカーで淹れたコーヒーを楽しんでみたいですね。