多くの人は「マサイ族」を連想するであろう赤道直下の国、ケニア。この国を支える農業のうち、紅茶についで大きな比率を閉めるのがコーヒーの生産です。
欧州などでは以前からコーヒー銘柄としては人気で、スペシャルティコーヒーの世界では名を馳せています。ハイクオリティな豆がヨーロッパ各国のオークションで取引されています。近年は日本でもブレンドベースからシングルオリジンまで目にすることが多いでしょう。
今回は、アフリカのコーヒーの中でも個性の光るケニアのコーヒーについて、味や特徴をご紹介します。
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目次
組合管理で、品質安定!ケニアのコーヒー産業
お隣エチオピアからは少し遅れて、1890年代ごろからコーヒーの栽培が開始されたというケニア。ほとんどのコーヒーは、小規模農家が栽培しており、それを各地の共同組合で加工する体制で生産されています。
研究や管理体制が充実していて、高品質の豆が!
生産規模はそれほど大きくないものの、国や共同組合によるコーヒーの栽培や流通に関する研究が盛んで、各共同組合が生産したコーヒーを、別の協会が取り仕切るオークションなどで諸外国に販売をしています。
海外に輸出するコーヒーは、首都ナイロビで行われる前述のオークション(セントラルオークション)と、国のコーヒー局が全面的に取り仕切る外国企業との直取引によって流通しています。コーヒー生産国としての管理が整備されているため、品質や生産量が安定している点が特徴と言えるでしょう。
日中と夜間の寒暖差が大きく、コーヒ豆の栽培に最適!
ケニアでは、年に2回の雨季があるため降雨量は多く、赤道にもほど近いケニア山周辺の高山地帯では日中と夜間の寒暖差が大きいことからコーヒーの栽培に適した気候であると言えます。コーヒは、寒暖差が大きいと、厳しい気候に適応する過程で風味がよくなるといわれています。
収穫はアーリークロップ(3月〜6月)とレイトクロップ(11月〜1月)の2度行われ、レイトクロップの方が評価が高くなる傾向があります。そのため、こちらはメインクロップと呼ばれることも。近年では風味の違いを楽しむために、わざとアーリークロップを表記して出すコーヒーショップも見かけることができます。
ケニアのコーヒーの味と特徴【力強いボディと柑橘の香り】
一般的にケニアのコーヒーは、アフリカらしい強い風味としっかりとしたボディ、甘みが特徴です。
強くローストしても消えない甘さとボディ感はエスプレッソ豆のブレンドベースとしても重宝されるため、ヨーロッパでの人気を裏付けしています。
浅煎りでは、柑橘の香りが人気。中煎り・深煎りでは、甘く酸味がしっかり
浅煎りが人気のサードウェーブシーンでは、ケニアのコーヒーは特徴的な柑橘の香りが高い評価を受けています。山地によってプロファイルの違いはあるものの、柑橘とベリー系の酸味が爽やかで人気も高いです。
中煎り~深煎りでは、甘みは強いものの酸味は残りやすい傾向があります。そのため酸味が苦手な方には好みが分かれるかもしれません。
ケニアの豆のグレードは、生豆の粒の大きさで選ばれる
コーヒー豆のグレードの評価方法は、産地の標高・生豆の粒の大きさ(スクリーニング)・精製方法(度合)など、さまざまな方法があります。ケニアでは、コーヒー豆の品質評価方法は、生豆の粒の大きさで選ぶ「スクリーニング」が一般的です。
最大サイズの豆は希少でE(エレファントの略)、日本でもよく見る高級グレードとしてAA、ABがあり、Cと続きます。一つの果実に一つの種子しかない豆はPB(ピーベリー)と呼ばれ、これも高級グレードに位置付けられます。
ケニアのコーヒーは、水洗式「ウォッシュド」で精製!
また、ケニアのコーヒーの90%は水洗式「ウォッシュド」で精製されており、ナチュラル方式で精製される豆は「ムブニ」呼ばれ、水洗式の豆よりも取引価値がやや低いそうです。
大自然の力強い甘みを楽しむ。ケニアのコーヒー
ケニアのコーヒーは、生産国としての歴史はやや浅いものの、管理された生産量と品質は高い評価を受けています。またアフリカ産のコーヒーらしいしっかりしたボディと酸味を持ち、柑橘をはじめとした果実の爽やかな風味を感じることができるユニークな特性を持っています。
アフリカ諸国のコーヒーは、地域特性は似ているにも関わらず個性が強い豆が多いので、お隣のタンザニアやエチオピアと飲み比べしてみると楽しいかもしれません。
いつものコーヒーに飽きたら、ケニアのコーヒーで大自然の力強い甘みを楽しんでみてはいかがでしょうか。