あなたは1日に何杯コーヒーを飲みますか? 普段からコーヒーを1日に何杯も飲んでいるのであれば、周りから「コーヒーが大好きな人」とみなされても文句はいえないでしょう。
もちろん中には、単なるコーヒー好きなだけではなく、毎日コーヒーをたっぷり飲むことが習慣になっている人もいれば、健康のためにコーヒーを飲むように心がけている人もいるはず。
ですが近年、コーヒーの消費量に遺伝子が深く関係していることが明らかになりました。本記事では、コーヒーと遺伝子の興味深い関係についてご紹介します。
目次
味の感じ方と遺伝子の関係について
コーヒーと遺伝子の関係についてご紹介する前に、まず味覚と遺伝子の関係をご説明しておきましょう。
わたしたちの味覚は遺伝子によって左右されている
味覚にはおいしい、まずいを判断するだけではなく、ミネラルの存在やエネルギー源の存在をわたしたちの体に教える役割があります。さまざまな食体験によって味覚は発達するといわれていますが、わたしたちが味をどう感じるかは、遺伝子の影響を強く受けています。
加齢などによって味覚が変化することもありますが、基本的に味覚は先祖代々受け継いだ遺伝子に左右されるほうが大きいと考えられています。ヒトの遺伝子は2万5,000個以上ありますが、味の好みに至るまで遺伝情報として親から子に伝わっていることを考えると、遺伝子の働きに感動を覚えるのではないでしょうか。
苦みに関係する遺伝子とは
一般的に甘味やうま味など、味は大きく5つに分類することができ、「五味」と呼ばれています。五味のひとつに苦みも含まれていますが、苦みといってもその種類はさまざまです。例えば、ククルビタシンやモモルデシンを苦み成分とするゴーヤと、シニグリンを苦みの主成分とするからし菜では同じ野菜でも苦みの種類が異なります。
苦みを感じとりやすいのは、TAS2R19やTAS2R38、TAS2R46などの遺伝子が関係しているといわれています。苦みに種類があるように、苦みの感受性をつかさどる遺伝子もさまざま。それぞれ受け継いだ遺伝子次第で、苦みを感じる程度は違ってきます。
ですから、ゴーヤの苦みが好きな人でもコーヒーの苦みは苦手だという場合や、コーヒーの苦みは好きだけどゴーヤやからし菜の苦みは苦手だということが起こり得ます。
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コーヒー好きも遺伝子に左右されている?
総合科学学術雑誌として、国際的に高く評価されている「ネイチャー」に掲載された論文によると、苦みの知覚の仕組みがコーヒーの消費に大きく影響していることが判明しました。コーヒーの苦みと遺伝子の関係についてご紹介します。
コーヒーの苦みについて
コーヒーの苦みは、主にコーヒー生豆を焙煎するときに生まれます。とはいえ、焙煎時の焦げが、コーヒーの苦みのもとになっているわけではありません。コーヒー生豆を加熱することで化学変化が起こり、苦みが引き出されてコーヒー独特の味を形成します。
コーヒーの苦みは、焙煎による化学変化の産物だといえるでしょう。しかし残念ながら、コーヒーの苦みを構成する成分すべてが明らかになっているわけではありません。焙煎時の化学変化が複雑なため、コーヒーの苦み成分の多くはいまだ不明のまま。
現在知られているコーヒーの苦みの成分としては、カフェインやクロロゲン酸ラクトン類、ビニルカテコールオリゴマーなどの成分が挙げられます。コーヒーの苦みを構成する成分の中でもカフェインは約15%の割合しか占めていないものの、論文では苦み成分としてのカフェインに注目し、コーヒーと遺伝子に関する研究が行われました。
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カフェインの苦みを感じやすいほどコーヒー消費量が多くなる傾向に
カフェインの苦みには、TAS2R46遺伝子が関係しています。この遺伝子の存在によって、カフェインの苦みに対する感受性の高さは変わってきます。ネイチャー誌に掲載された論文によると、カフェインの苦みを感じとる能力が高いほど、コーヒーの消費量が多くなる傾向にあるのだとか。
味覚は遺伝子に左右されているとはいえ、苦みは「毒」と認識されやすく、苦みを嫌う人も少なくありません。そのため、苦みの感受性が高ければ高いほど、苦みを避けるはずだと考えるのが普通です。しかし反対に、カフェインの苦みに対する感受性が高い人ほど、コーヒーをたくさん飲む可能性が高くなるのは興味深いですね。
コーヒー好きは遺伝子で定められた運命
コーヒーを飲む理由は人によって異なります。コーヒーが大好きだからたくさん飲む人もいれば、好みにかかわらず、パフォーマンスアップを狙って大量にコーヒーを飲む人もいます。もしも、「コーヒーをたくさん飲む=コーヒー好き」という式が成り立つのであれば、カフェインの苦みを感じやすい人は、遺伝子によってコーヒー好きになる運命に定められた人だといえるのではないでしょうか。
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