いつも当たり前のように飲んでいるコーヒーの価格について、どのように価格を決定しているのか、ふと思い巡らした経験がある人もいるのではないでしょうか?
コーヒーの価格は品質のほか、世界経済や為替相場によって変動します。またコモディティコーヒーとスペシャルティコーヒーとでは、価格の決められ方が異なります。
本記事では、コモディティコーヒーとスペシャルティコーヒーを比較しつつ、世界で流通しているコーヒーの価格の推移などコーヒーの価格変動の歴史も踏まえて詳しくご紹介します。
目次
価格決定が違うコモディティコーヒーとスペシャルティコーヒー
コモディティコーヒーとスペシャルティコーヒーでは、グレードや味だけではなく、価格の決まり方においても違います。
コモディティコーヒーは先物取引
コモディティ(Commodity)とは商品や日用品という意味で、とくに大規模に取引されている未加工の一次産品や農産物を指して使用される言葉です。コーヒーも農産物ですが、スペシャルティコーヒーの対極にあるコーヒーのことをコモディティコーヒー(Commodity Coffee)と呼びます。
コモディティコーヒーは、商品先物取引で売買されます。商品先物取引とは、取引時点で決定した商品価格で、将来の決まった日に売買することを約束する取引のことです。コモディティコーヒーは、一定基準に照らし合わせて格付けが行われた後に市場で取引されますが、ロブスタ種はロンドンで、アラビカ種はニューヨークの市場でそれぞれ取引がなされています。
スペシャルティコーヒーとは違い、同じ銘柄のコーヒー豆であればまとめて取引されるのがコモディティコーヒーのひとつの特徴です。さらに、コモディティコーヒーは大量に流通しており、主に世界的な需要と供給をもとに価格が決定されるため、それに応じて価格が変動します。
スペシャルティ、プレミアムに続くグレードではあるものの、コモディティコーヒーは全体的にグレードが低いコーヒーであるという訳ではありません。インスタントコーヒーや缶コーヒーなどに加工される場合には、さらに低いグレードのコーヒー豆と混ぜて使用されるのが一般的です。
スペシャルティコーヒーは現物取引
スペシャルティコーヒーは商品先物取引で価格が決まらないため、市場の影響をほぼ受けません。需要と供給によって価格が変動するコモディティコーヒーとは異なり、コーヒーの品質が価格に大きく影響するのがスペシャルティコーヒーです。
銘柄でひと括りにされてしまうコモディティコーヒーですが、スペシャルティコーヒーは農園ごとや生産者ごとに取引が行われており、コーヒーの品質に対して適性な価格が付けられるのが特徴です。
コーヒーの価格が低下すると、コーヒーの品質が低下するといわれています。しかし、たとえコモディティコーヒーの価格相場が低迷・暴落した場合でも、現物取引されるスペシャルティコーヒーの価格には影響がありません。そうすることで、生産者のモチベーションが上がり、コーヒーの品質が守られると同時に、生産者たちの生活が守られています。
将来的にコーヒーが高くなる可能性がある?
これからのコーヒー市場は、特にアラビカ種の価格が高くなる可能性があるといわれています。いったいどのような背景があるのでしょうか?
天候不順が価格に影響
世界最大のコーヒー生産国ブラジルでは、アラビカ種とロブスタ種の栽培に10,000平方マイル以上もの土地が費やされています。したがって、ブラジルのコーヒー収穫量や品質は、世界市場におけるコーヒーの価格に大きな影響をおよぼすのだとか。
農作物であるコーヒーの収穫量や品質は、天候に大きく左右されます。コーヒーが不作になったり、反対に特定の年に豊作が発生したりすると、わたしたちが毎朝飲んでいるコーヒーの価格変動に繋がるのです。
近年、ブラジルが干ばつや霜害に見舞われた結果、世界的にアラビカ種の価格が上昇傾向にあるといわれています。ブラジルで生産されているアラビカ種は、世界全体の収穫量の約半分を占めますが、2020年度に3,000トンあった収穫量は、2021年度においては大幅に減ると予測されているそうです。
過去にもあったコーヒーの価格高騰
ブラジルのアラビカ種の収穫量が減少したために、これまでのコーヒーの価格が倍以上になる可能性があるといいます。カフェでコーヒーを飲むのが楽しみだったのに、コーヒー1杯がこれまでの倍以上の価格になってしまうと、カフェに足を運ぶ機会が減ってしまうなんてこともあり得るでしょう。
とはいえ、世界市場におけるコーヒーの大きな価格変動は、これがはじめてではありません。1994年6月と7月にかけて、「黒い霜」と呼ばれる霜害がブラジルのコーヒー農園を襲い、サンパウロ州とパラナ州のコーヒー収穫量が50~80%も減少した結果、コーヒーの価格が急高騰しました。90年代初頭、コーヒー市場の規制緩和によってコーヒーの価格は最安値を記録し続けていただけに、「黒い霜」の被害によるコーヒー価格への影響はかなり大きなものだったようです。
価格変動を繰り返すコーヒー
ところが、コーヒーの価格上昇は継続的なものではありませんでした。ブラジルの霜害以降、世界のコーヒー生産量は50%以上増加し、1999年までに800万トン近くに達しました。その後、市場は追加供給のため急上昇し、コーヒーの価格は再び下落することになります。
コーヒーの価格低迷は、コーヒーチェーン店の数の爆発的増加に繋がりました。シアトル系コーヒーの代名詞であるスターバックスコーヒーは、世界中に支店を構え、新しいスタイルのコーヒー消費方法を人々の間に浸透させたといえるでしょう。2000年に22億ドルだった同店の収益が、2015年には192億ドルになったことが、それを裏付ける証拠となっています。
過去30年間に、コーヒーの価格変動は何度も繰り返されました。現在、アラビカ種の価格が高騰しつつありますが、価格高騰が継続するかどうかはまだわからない状況で、すぐに変わる可能性もないとは言い切れません。
供給はどうあれ、コーヒーを飲む人の数は増え続けているため、コーヒーの需要は一層高まっていくと考えられます。安らぎのひと時を与えて心を豊かにしてくれるコーヒーですが、今後手が届かないほどの贅沢品になってしまわないことを願いたいですね。
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コーヒーの未来のためにできること
コーヒーの価格は主に需要と供給、品質などで決定されます。コモディティコーヒーとスペシャルティコーヒーでは価格の決まり方に違いがありますが、天候不順によって収穫量や品質に影響があるのは同じです。残念ながら、お気に入りのコーヒーを買い占めるのはコーヒーの未来を守ることには繋がりません。
世界的な異常気象は温暖化が原因のひとつともいわれていますから、おいしいコーヒーがいつでも飲めるようにするためにも、温暖化防止への意識を個々の人が高めていく必要があるでしょう。
参照サイトURL:https://www.worldfirst.com/
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