ワインとチーズの相性の良さは広く知られていますが、コーヒーとチーズの組み合わせは想像しにくいのではないでしょうか。世界にはさまざまなアレンジコーヒーが存在しますが、チーズを浸したコーヒー「カフェオスト」もその一つに数え上げられます。

 

本記事では、カフェオストのルーツについて詳しくご紹介します。

 

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先住民族サーミ人が愛してやまないカフェオスト

「カフェオスト」を語るなら、サーミ人抜きには語れません。北欧少数民族サーミ人とは、いったいどのような民族なのでしょうか。

そもそもカフェオストはどんな飲み物?

カフェオストは、豊かな独自の文化を築いてきた北欧少数民族サーミ人が生んだアレンジコーヒーです。「オスト」はスウェーデン語でチーズを意味しており、カフェオストとはチーズ入りコーヒーのこと。熱々のコーヒーにチーズを入れると、溶けてカフェオレのようになると思う方もいらっしゃるでしょう。しかし実際には、あまり溶けないチーズを使用するため、カフェオストはチーズの食感を楽しみながら味わうコーヒーだといわれています。

遊牧生活を送るサーミ人

サーミ人とは、スウェーデン北部をはじめ、フィンランド北部とノルウェー北部、ロシア北西部に居住する北欧の先住民族のことです。サーミ語を話す人々は、色彩豊かなコルトと呼ばれる上着を着て、遊牧生活を営み、トナカイと共に暮らしています。シャーマンの影響力が強い土着信仰を持ち、ヨイクと呼ばれる伝統的な宗教音楽を歌うサーミ人たち。18世紀には、スウェーデンとノルウェーの間で締結された国境条約に基づき、多くのサーミ人たちが定住の道を歩みはじめました。

 

19世紀になると北欧諸国で同化政策が本格的に進行し、対象にされたサーミ人たちは、独自の文化を捨てるよう強要されます。しかし、20世紀に入ったスウェーデンでは劣等民族とみなされ、分離政策が取られることに。さまざまな自由が奪われて迫害を受けますが、第二次世界大戦後になり、ようやくスウェーデン人たちと同じ教育を受け、職業選択の自由や居住地選択の自由が与えらるようになりました。

 

長きに渡り、いわれのない差別を受けたサーミ人たち。もしかするとカフェオストを飲むひと時は、彼らにとって自分たちが築き上げてきた文化に思いを馳せ、弾圧されて傷づいた心を癒す大切な時間になっていたのかもしれません。

カフェオストに欠かせない4つのポイント

ここでは、本場のカフェオストに欠かすことができないポイントについてご紹介します。

コーヒーを煮出して抽出

スウェーデンで好んで飲まれているのはスッキリした後味の浅煎りのコーヒーですが、カフェオストには、酸味とコクのバランスが良い中煎りのコーヒーがベストマッチ。山岳に住むサーミ人たちは雪を溶かして水を用意し、粗挽きにしたコーヒーを煮出して抽出する「焚き火コーヒー」と呼ばれる方法でコーヒーを淹れます。

カハヴィユーストをたっぷりと

カフェオストに欠かせない材料が、スカンジナビア半島北部地方でお馴染みのチーズであるカハヴィユースト(フィンランド語では、レイパユースト)です。スウェーデン語で「コーヒーチーズ」と呼ばれているカハヴィユーストは、牛やヤギ、トナカイのミルクから作られ、よく乾燥させた製品は数年間ほど保存が効くといわれています。

 

北欧では、クラウドベリージャムやサワークリームを添えて食べたり、砂糖をまぶして食べたりなど、デザート感覚で食べられているカハヴィユースト。しかし、サーミ人たちの間では、コーヒーに浸して食べるのが伝統的な食べ方とされています。カフェオストは、カハヴィユーストをたっぷり入れて味わうのがサーミ人流です。

トナカイの燻製肉を加えて

伝統的なカフェオストには、トナカイの燻製肉が欠かせません。「コーヒーに燻製肉を入れるの?! 」と、驚かれる方も多いかもしれませんが、意外とマッチするのだとか。北欧では一般的な家庭料理として、食卓で振る舞われることの多いトナカイの肉。低脂肪高たんぱくのトナカイの肉はヘルシーで、ビタミンB12だけでなく、必須脂肪酸のオメガ3やオメガ6をも含んでいます。

「ククサ」に注いで味わう

ククサとは、スカンジナビア半島北部地方で昔から使用されている木製のカップのことです。遊牧生活を送るサーミの人たちは、このククサと木製ナイフだけは決して手放しません。スウェーデン製のククサは主にハンノキで作られており、幸運のシンボルとして、大切な人に贈る風習があります。使い込むほどに味の出るククサは、子ども時代はミルクを入れ、大人になってからはコーヒーを入れるために使われています。

 

現在でも、熟練の技を持つ木工職人たちが、手作業でひとつずつ手作りしているククサ。クルミオイルなどできちんとお手入れすれば、「一生モノ」のカップとして末永く愛用できるといいます。木製とはいえ丈夫で熱を伝えにくいカップですから、熱々のカフェオストを入れるのにぴったりです。

 

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サーミ人に思いを馳せて

材料を入手するのが難しいカフェオストですが、代替品を用意すればカフェオストに近い味が再現できるかもしれません。

 

日本で購入できる商品で代用するのであれば、カハヴィユーストの代わりに食感が似ているといわれるハルミチーズを、トナカイの燻製肉の代わりに鹿肉のジャーキーを使用してみては? 手づくりのカフェオストを飲みながら、歴史に翻弄されたサーミ人たちに思いを馳せてみるのも良いかもしれませんね。

 

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