食後のコーヒーって、どうしてあんなに美味しいのかしらね。
食事の締めくくりとして立ち位置が不動なのって、コーヒーと、あとはタバコくらいかしら? 私は吸わないからその美味しさはわからないけど、人が食後、美味しそうに吸っているのを見るのは嫌いじゃないのよね。
その日一緒にランチをした高校時代からの女友達は、今でこそ電子タバコに変えたけど、昔はセブンスターをスパスパ吸ってたなぁ……と、電子タバコをお行儀よく吸う彼女をしみじみと眺める。
そんな彼女には、私から言えば完全なる腐れ縁の男がいるの。
彼女とそいつの付き合いは、そうね。かれこれ20年くらいになるかしら。出会いは高校1年の春。3人揃って同じクラスだった私たち。彼女とそいつは、出会って間もなくして付き合い始めた。互いに初めて付き合った相手だった2人は、それはそれは純朴な恋愛を7年間も続けたの。高校、大学時代の恋愛と言えば、お互いにその人のみだった。
誰もが「こいつら結婚までいくんだろうな」と思っていた矢先、彼女が就職先の先輩と、くっつく(おいおい)
そして彼氏も、ほどなくして新しい彼女を作り、なんとすぐに結婚。そして最初に彼を振ったはずの彼女の方が何故か落ち込み、そして彼を引きずり始める(あららららら)。ありがちだけど、これって女の勝手な部分が超絶浮き彫りになる瞬間だと思うのよね。
自分の方が先に幸せになってやろ~ってどっかで思っていたら、彼女にとっては予想外の展開で、相手の方が先に幸せを掴んでしまった。男女に勝敗なんてはいはずなのに、彼女はどこかで、彼に負けた気がしたのかもしれない。それは自然と、彼への執着に変わっていったの。
彼も彼で、新婚ホヤホヤの幸せいっぱいであろうときに、その女友達と再び恋仲に……。
そう、これはもうれっきとした不倫関係。
それは、元カレだろうが元カノだろうが関係ない。付き合っていた当初は純愛そのものだったはずの2人は気が付けば、どろっどろの昼ドラみたいな関係になっていっちゃったの。
「愛してる」だの「離婚する」だの「待ってる」だの「早く別れて?」だの……。
殺人事件とかにならなくて、本当によかったなぁって思っちゃうくらいだったのよ。
そんな2人の間にも、平等に時間は流れる。
時は流れて、7年。
今現在の2人。どうなってると思う?
彼は、いまだに当時結婚した奥さんと夫婦。しかも3歳のお子さんまでいるわよ。そして彼女は、いまだに独身。たまに彼氏を作ったりしながらも、結婚までは辿り着けずにいるの。
で、この2人の今はというと……。
いまだに不倫を続けているんですって。
互いに健全に付き合ったのが7年。不倫関係が7年。同じ7年でも、後者はなんだか、ずしっと思くて闇を感じる。どれだけ最初の7年間が純白なものでも、もはやこの2人に白さはなんにも残っていない。会う度に、結局別れ際には「私と会ってる時だって、結局奥さんともセックスしてたんじゃない。この裏切り者!」というどす黒い怒りが彼女をとりまく。
口に出そうがださまいが、どんどん彼女は不幸になっていく。
それに引き替え男の方は、家庭も築きあげていく。
でもね、私。思うのよね。
この場合、どっちも悪い。不倫を7年も続ける2人は、彼の奥さんと子供から罰を受ければいいのよ。お互いに自分のことしか考えず、一番の被害者である奥さんと子供のことはないがしろ。
年月だけが長くなってしまったこの男女。これはもはや「腐れ縁」以外のなにものでもないわよね。
ここまで縁が腐ってしまったら、やるべきことはただ一つ。
断ち切るしかないんじゃないの?
そこまでしないと、彼も彼女もきっと不幸のまま。そしてきっと、それを一番分かっているのは彼と彼女本人たちだと思うわけ。確かに14年間は、長すぎる。お互いに知りすぎた2人だから、もちろん簡単にスパッと断ち切るなんて無謀かもしれない。でも、本当に新しい未来を知りたいのなら、ここで断ち切らないと一生このまま。
腐れ縁。もう腐ってるのよ。
一刻も早く、断ち切っちゃいなさい。
でもこれは、他人の私が何度言ったところで無駄なのよね。自分自身が心から思えるようにならないと、この行動は起こせない。
でもね。電子タバコを吸い終わった彼女は、私に向かって静かにこう言ったの。
「ねえりか。私この春は、あいつともう会う事、やめる」
おめでとう。これでようやく、次のドアを開く準備段階まできたわね。







